第24話 十字聖教会
今回は急展開!
我ながら驚きました。
「殺されたのは……君の依頼主である、ガワンだ」
「……え?」
ガワンが、殺された?
そんな、何でガワンが殺されて――は?
「あいつ、自分の鍛冶場で殺されて……剣も誰かに盗まれてた。畜生が! あの剣はガワンが丹精込めて作ってたってのによ!!」
ガワンが……ガワン、が……
「君も気を付けてろよって、おい! どこへ行くんだ!? おい!!」
ふらりふらりと、俺は遠のく声に耳を貸さずに歩いた。
どこへ向かうでもなく、ただ足が進む方向へと歩いた。
ただ、当てもなく彷徨っていたはいたが、目的がないわけではない。
ガワンが殺された現場から遠くへ、遠くへと歩いて行きたかっただけなのだ。
しばらく歩き気が付けば教会のような場所にたどり着いていた。
ナントカっていう神を信仰する教会には、地球と同様に十字架が立って……ん?
あれ、なんかおかしいな。
あの十字架、まるで後から無理やり付けられたように刺さっているぞ。
「おや、こんな所にお1人ですか?」
突然、正面から声を掛けられた。
視線を向けると、そこには胸に十字のマークがある黒い服で全身を包み、背中に2本の剣を背負った男が立っていた。
「えっと、まぁ」
「ふむ、何かお悩みのようですね。良ければ私がご相談に乗りますが」
「その前に……貴方は一体?」
「おっと、これは失礼しました。私の名前はラッセント。一応、司祭をやっております」
司祭って、かなりランクの高い位置に居なかったっけ。
ここに居るってことは、聖ピューレ教会の司祭なのかな?
まぁ、何でもいいか。
今はこの胸の黒い部分を吐き出せればそれで。
「俺はソウマと言います。実は、ついさっき友人?とまでは行きませんが、知り合いが殺されたと聞きまして」
「殺された? それは物騒な話ですね」
「えぇ、ここ最近多いみたいで……それで、その前には死んだと思っていた友と再会して、イイ事の後には悪い事があるだな。なんて、複雑な気持ちになってしまい、変に苦しいんです」
「それは、お辛かったでしょう。あまり意味はないかもしれませんが、私がそのご友人が安らかに眠れるよう祈らせていただきます」
ラッセントそう言うとお、俺に背を向けるように振り向き跪いた。
教会を見つめ、手を前で組み、祈りを捧げている。
俺はその光景をただ見ている、だけのつもりだった。
しかし、ラッセントが跪いたことである物が見えてしまい、どうしても確認しなかればならなくなったのだ。
「ラッセントさん……貴方の目の前にある剣は何ですか?」
「……はて、何とは?」
ラッセントの前に突き刺さっている剣、それに俺は見覚えがある。
「その剣、ガワンの作ったのと同じ剣なんですよ。それをどこで?」
「……そう言われましても、最初からここにありましたよ?」
「ちょっと、見せてもらってもいいですか?」
「えぇ……どうぞ」
俺はラッセントの横を通り、剣を手にしてよく確認した。
剣先は白く輝き、全体的に細身な剣。
そして、柄にはガワンの文字が刻まれている。
間違いない。
これは、ガワンの剣だ。
でも、どうしてここにあるんだ?
確か、ガワンの剣は盗まれたって……。
その時、背後から物凄い殺気と迫りくる何かを感じ取った。
俺はすぐさま剣を抜きガードする。
しかし、あまりの力に俺は後ろへと吹き飛ばされてしまった。
「我の役目の、邪魔をするのか冒険者」
「ら、ラッセントさん……?」
攻撃してきたのはラッセントだった。
背中に背負っていた2本の剣、いや、あれは刀だ。
刀を両手に持ち、十字に構えながら俺を睨みつけていた。
「我は神への信仰を表す。そのために、ここまでやってきた。しかし、冒険者。貴様によってそれを邪魔されるとはな!」
何のことだろう。
俺が一体、何を邪魔したっていうんだ。
それを聞こうとしたが、ラッセントは問答無用で斬りかかってきた。
俺は自分の剣で攻撃をいなしながら、ガワンの剣をアイテムボックスへと収納した。
「血を、血を捧げねばならない……血を!」
「血って何のことだよ!」
「神の乾きを潤すには血が足りない。血でしか神の乾きは潤せない!!」
そう叫びならラッセントは再び攻撃を仕掛けて来た。
狂ったことを言っているにも関わらず、ラッセントの攻撃はどれも巧みなものばかりだ。
剣で防ごうにも、多少なりとも掠ってしまう。
右かと思ったら今度は左、間髪入れずに上下からの斬撃。
その上、ボディが空いたら蹴りを入れてくる。
かなり強い相手だ。
対人戦は初めてだが、ラッセントはおそらく別格。
「まさか、ラッセントさんが殺人鬼なのか?」
「殺人鬼とは失礼な。我は神の代行者。異教徒を殺し、その血で神の乾きを潤すのだ」
「異教徒って……お前は聖ピューレ教会の司祭じゃ」
「聖ピューレ!! なんと忌々しい名だ! あれは我ら十字聖教会から外れた異端の宗教だ!」
「つまり、自分たちとは違うという理由で殺したと? たった、それだけ?」
「それだけだと!? 知ったよな口を聞くな!!」
狂ってる。
宗教が違うだけで殺すなんて、そんなの狂ってる。
たったそれだけの理由で、ガワンは殺されたのか?
ガワンだけじゃなく、この町の人々はその理由だけで殺されたっているのか?
ドラゴンに町を破壊され、傷心している彼らに剣を向けたって言うのかよ!!
許されねぇ……許されねぇよ。
「改めて問う。我の役目を邪魔するのか、冒険者」
あぁ、邪魔くらいするさ、違うな、邪魔をするんだ。
「お前の所業、断じて見過ごすわけには行かねぇ! お前の身勝手で死んでいった人たちの代わりに、俺がお前をぶち殺す!」
この男が存在する限り、俺の身の回りの親しい人が危険に晒されると言うのなら。
この身を以て討ち滅ぼそう。
「そうか……君はもう少し、賢い男だと思っていたよ」
俯きながらそう言うと、ラッセントは持っていた刀で十字を作った。
手の甲を外に向け左の刀を地面に突き立て、腕と刀の間に右の刀を入れる。
見事な十字架だ。
「神の血となれ肉となれ、創造主の糧となるがいい!!」
「俺がやる! やらなきゃダメだ!!」
お互いに剣を構え、ほど同時に地面を蹴り突っ込む。
剣と刀がぶつかり合い、火花が散った。
ここに、十字聖教徒と通りすがりの冒険者の戦いが始まった。




