第23話 故友
故友が出て来ます。
今は亡き友……あっ(察し)
それと、今回は短いです。申し訳ない。
「いやぁ、本当に驚いたぞ」
「それはもう聞いた。だから、背中を叩くな。痛いんだよ」
「お? それは悪かったな。あっはっは」
「こいつ……」
任された場所の瓦礫を撤去し終えた俺は、ガワンに今日泊まるテントへと案内してもらっている。
まだ昼下がりなのだが、もう俺は仕事を終わらせたという事で休んでも良いと言われたのだ。
「どうやったのか気になるが、聞いても教えてはくれないよな」
「当たり前だろ。企業秘密だ」
「きぎょう……なんだって?」
「あ、いや。なんでもない」
そう言えばここは異世界だった。
今まで俺の常識が通じてたから忘れかけてた。
日本語が通じてる訳でも、地球と同じという訳でもないんだよな。
ここは異世界であって、ここならではのルールがある。
しっかりとしなければ……やっぱり、慣れないけど。
「おい、着いたぞ……どうした?」
「ん、あぁ悪い。ボーっとしてた」
「それはいいんだが、ここがソウマに寝泊まりしてもらうテントだ。即席の1人用だが、雨風は凌げるはずだ」
ガワンがそう言ってテントの入り口を開く。
外観はどこでもあるテントだったが、中は過ごしやすそうな空間が広がっていた。
これなら、しばらく寝泊まりするくらいどうってことないだろう。
「分かった、ありがとう。それじゃあ、借りるぞ。金はいくら払えばいい?」
「金なんていらん。そんな気を遣わないでくれ」
俺はガワンの好意に甘えることにし、お礼を言いながらテントに入る。
「あ、ソウマ」
「ん?」
「何かあったらすぐそこの鍛冶場を訊ねてくれ。夜はそこにいるからな」
「鍛冶場……? ってことは、ガワンて鍛冶師?」
「そうだが、言ってなかったか?」
「言われてねぇよ!」
「あっはっは、悪かったな。ほれ、これが俺の鍛えた剣だ」
ガワンはどこからともなく取り出した剣を見せつけそう言った。
剣は細身で、刀身が白く光っている。
柄にはしっかりと、「ガワン」の文字が刻まれている。
「本当に鍛冶師だったんだ」
「そういう事だ。じゃあな」
ガワンが去った後、俺は鍛冶師について考えていた。
あれが本物の鍛冶師ってやつか。
改めて見ると、かなり傷だらけで痛々しい体なんだったよな。
ふむ、でもそれならあの屈強な体にも納得がいく。
そうか、全然気にしてなかったが、鍛冶師ってあんな人間なんだな。
そう言えば、鍛冶師とはちょっと違うかもしれないけど、あの2人はどうしてるかなぁ。
竜殺しの剣と鋼鉄の鎧を売ってくれた、もっと言えば作ったあの2人……確か知り合いとか言ってたっけか。
町へ戻ったら、また顔でも出しに行くかね。
そんなことを考えながらテントに横になると、大して労働もしていないのに眠気が襲ってきた。
俺はその眠気に抗うことなく、目を閉じて夢の世界へと旅立つのだった。
◆
夢を見た。
どんな夢かと言うと、とっても懐かしい奴が出て来た夢だ。
内容はこうだ。
『やぁ、元気にしていたか?』
「ゼキ……エーレ?」
『あぁ、そうさ。私だよ。ゼキエーレだ。なんだその顔は、まるで幽霊でも見たような面構えだな』
ふふふっ、と旧友が笑う。
あの時の夢と同じように、俺はただただ驚くばかりだった。
「な、なんでお前が……あ、そっか。これは夢、だもんな」
そして、夢だと悟って落ち込んだ。
けれど、ゼキエーレがそれを否定する。
これは夢であって、夢じゃないと。
これも一種の、現実なんだと。
『お前は確かに夢を見ている。だが、私と話せているのは、その夢に私が介入しているからだ。だから、これは夢であって夢じゃない』
なんだか難しい話のように聞こえる。
結局の所、どういう事なんだってばよ。
『つまり、こうしてお前と話をしている私は、確かにここに存在してるってことさ』
「……消えた、はずだろ? 俺を護るため、力を使い果たして」
『そうだな。でも、だからと言って私が完全に消え去る訳じゃない。私は腐っても神だ。復活くらい、お茶の子さいさいさ』
「そうだよな……ハハッ、お前は神様だった。俺は転生させてくれた神だった」
『おいおい、忘れてたのか? 失礼な奴だな』
「あはは、ごめんごめん」
そして、ありがとう。
こうしてお前と言葉を交わせるだけで、救われた気がしたよ。
もう会えないと思った。
けど、ありがたい……謝れた、ありがとうはまだ言えないけど、今はこれだけで十分だ。
「ごめんよ」
『……あぁ、受け取った。だから――』
ありがとうゼキエーレ。
お前が生きてくれている、それだけで俺は救われたんだよ。
『――だから、泣くな』
ありがとう。
◆
目が覚めると、もう朝だった。
半日近くを寝て過ごすと言う、日本で暮らしていた時には考えられない所業だ。
体を起こし、濡れた顔を拭く。
寝ながらなんて、精神年齢20代後半のすることじゃないな。
「……よし!」
久しぶりに、スッキリとした気持ちで朝を迎えた気がする。
モヤモヤとした何かが取り除かれたというか、心から出ていったような、宗教の話っぽく聞こえるな。
でも、実際救われた感覚はある。
「さて、今日も一日頑張っていきますか……ん?」
伸びをしなが意気込むと同時に、外が騒がしいのに気が付いた。
テントから出ると、復興活動をしていた人たちが慌ただしく走り回っているのが見える。
しかも、全員表情が暗い。
何があったのかとその内の1人を捕まえて聞いてみた。
「ちょっといいですかね?」
「なんだ! って、おや? 君は……」
「なんだか騒がしいですが、どうかしましたか?」
「……また人殺しだよ。1人、殺されたんだ」
なんだと!?
クソッ、俺が寝てる間に人殺しかよ。
「誰が? と言っても、俺には分かりませんよね」
俺がそう言うと、相手は顔を逸らした。
見ると、その顔は苦しみと悲しみをごちゃ混ぜにしたような、とても見てられない顔だった。
「どうかしましたか?」
「殺されたのは……君の依頼主である、ガワンだ」
「……え?」




