第20話 クレアのお留守番
今回の視点はクレアちゃんです!(ドンドンパフパフ)
「おはようございます、クレア」
「あ、おはようです」
皆さん、初めまして……です。
私はクレアと言います。
ソウマ様に拾っていただいた侍女見習いです。
私が侍女になって今日で、えーと、5日くらいが経ちました。
ソウマ様がギルドで療養してから3日です。
あの時のエリナさんはとっても恐ろしかったです。
私も怒ってましたが、エリナさんのお怒りは本物でした。
そんなエリナさんは今日はご機嫌です。
何かあったかな?
「クレア、では行ってきます」
「はい、です。行ってらっしゃいです」
朝早くにエリナさんが出かけました。
確か、キッチンに使う器具を買いに行くと言っていました。
でも、私が見てもかなり充実しているのです。だいにんぐきっちんは。
私はエリナさんの出掛けた後、食器や鍋などが豊富に並んだ場所を見ながらそう思いました。
「そうです! お掃除しましょう」
今日はソウマ様が帰ってくる日というのをすっかり忘れていました。
別に汚くはないですが、やっぱりキレイな家だと帰ってきて嬉しいです。
だから、お掃除がんばります!
まずは本棚です。
いつの間にかエリナさんが買ってきた棚です。
まだ入っている本は少ないですが、この先きっと増えていきます。
エリナさんは読書がお好きなようですし、難しい本ばかり読んでいます。
次にテーブルです。
これもエリナさんが買ってきたものです。
テーブルクロスまで買ってきていて、高級感が出ています。
このテーブルにティーセットが乗ると、とても様になります。
その次はきっちん周りです。
食器も料理器具も全てエリナさんが買いました。
私もお買い物にお付き合いさせてもらいましたが、安いのにキレイな食器ばかりで驚きました。
穴場的なお店だったのか、人は少なかったです。
でも、そこの店主さんとエリナさんはお知り合いのようでした。
仲良くお話ししてました。
次は……って、エリナさん買い過ぎです!?
この家にある物の大体9割くらいはエリナさんが買ってきた物のようです。
最初からあった物が少なかったのもありますが、お金の残りが気になります……。
「でも、それで過ごしやすくなっているです。ありがたいです」
今度しっかりお礼を言いましょう。
感謝を言葉で示すのは人付き合いにおいて1番大切だと、教えてくれた方が居ました。
今はどこで何をしているのかは分かりませんけど。
「早くエリナさん帰って来ないかな~。あ、あとソウマ様も~……」
結構お掃除がんばりました。
時間も経ちましたし、少し休憩しましょう。
そう思い、お茶を入れるためにきっちんへと歩いて行くときでした。
ゴトッ
何かが頭上で動く音がしました。
そして、次の瞬間、私の頭に強い衝撃が走りました。
「はぅ、イタイです!? な、なんですかもう……ん?」
頭を擦りながら落ちて来たものを拾い上げてみました。
見ると、それは本のようでした。
タイトルは『私とご主人様』……?
中を開いて見てみると、メイドさんが雇い主の男性とあんな事やこんな事をはわわ!
「えっちです!」
ななな、なんでこんな本があるです!?
本棚の前を差し掛かった時に落ちて来たので、多分本棚の上にあったはずです。
でも、エリナさんも私もあんな高い所に手は届きません。
それに、こんな本私は知らないですし、エリナさんは……ちょっと分からないですけど、違うと思うです。
つまり、これはソウマ様の私物!
「やっぱり男性はえっちです! えっち反対ですぅ!!」
……
…
でも、ちょっとだけ気になります。
チラッ
「~~っ///」
パタン
わ、私には早かったです……うぅ。
この本は封印しましょう、です。
私は本を握りしめ、そう固く誓いました。
しかし、神様は残酷です。
「ただいま戻りましたー」
エリナさんが帰って来てしまったのです!
これは非常に緊急事態です。
この本を元の場所に戻すには背が足りませんし、このままエリナさんに渡したら今度こそソウマ様が殺されてしまいます。
どうしましょう、どうしましょう。
ソウマ様、絶体絶命の危機です!!
「あれ、クレア。掃除をしてくれたのですね……って、どうかしました?」
「い、いえ、何でもないです」
あたふたしていた私をエリナさんが不思議そうな目で見てきます。
本は咄嗟に体の後ろに隠しましたが、非常にマズイ状況です。
「それならいいんですけど。あ、この本……」
「ひゃう!?」
「ど、どうしました!」
「な、なんでも、ないです」
本と言う言葉へ過敏に反応してしまいました。
意識し過ぎてはダメです。
もっと気楽に、気楽に。
私がドジったらソウマ様の命がなくなります。
人の命がかかってるのです!
「そうですか? この本を棚へ並べてほしかったんですけど」
「ま、任せてください。でも、ちょっとお花摘みに行かせてほしいです」
「あ、気が付かなくてすいません!」
「いえいえ、大丈夫です~」
体の向きはエリナさんに向けたまま、本が見えないようにその場を離れます。
変な動きをしているので、エリナさんに心配の眼差しを送られましたが、これも致し方ない犠牲です。
これでソウマ様の命が助かるなら、クレアは頑張れます!
ソウマ様、見ていてください。
私、侍女として精一杯頑張ってますよ!」
そう心の中で叫びながら、お手洗いに近付いて行きます。
ガチャリッ
そこで家の扉が急に開きました。
「あ……ソウマ様!」
開けたのはソウマ様でした!
ソウマ様は若干申し訳なさそうな表情で私を見た後、ゆっくりと近付いて来て頭を撫でてくれました。
この優しい撫で方、好きですぅ~。
私がナデナデの悦に浸っていると、後ろからエリナさんの声がしました。
ハッとなって私は本を隠しましたが、ソウマ様には見られてしまいました。
「ソウマ様、帰ってこられたのです」
「あ、あぁ……うん」
「……」
「その……あの」
エリナさん、朝はご機嫌だったのに急に冷たい空気を発しています。
どうしてでしょう?
あんなにも嬉しそうなのに、なんであんな態度をとるのでしょうか。
ソウマ様に会えて嬉しい、声が聞けて嬉しい、会話が出来てとっても嬉しい、と言っています。
いえ、実際には言ってません。でも、言ってます。
「ごめん、エリナ!」
「……何がです?」
「いや、何か君を怒らせるようなことを俺がしたみたいで」
「何か? ソウマ様はご自覚がないのですか?」
「うぐっ……」
ソウマ様が腐った魚を食べた時のような顔をしました。
図星のようです。
残念です。
このような男性の事を、どんかんって言うと聞きました。
エリナさんにです。
「エリナ」
「何です――ひゃ!?」
「本当にごめんな」
ソウマ様はエリナさんを抱きしめ、そう囁きました。
顔はもちろんですが、声もかっこいいです。
イケメンでいけぼ? で、まったく最高の男性だ。
という、エリナさんの評価はばっちし当たってましたね。
抱き締められたエリナさっは顔を真っ赤にして喜んでいます。
ちょっと羨ましいです。
次は私もやってもらいなぁ、です。
「も、もう気にしてませんから! だから、離してください」
「そうか? 頭も撫でるぞ?」
「い、いりません!!」
「そこまでハッキリと!?」
エリナさん、素直じゃないですね。
そんなところが可愛いですし、私の好きな所のひとつでもあります。
どうやらソウマ様とエリナさんは仲直りしましたし、皆で笑ってこれから過ごせそうです。
さて、私も笑って過ごせるようにこの本をこっそり返しましょう。
今ならソウマ様を許せます。
「ソウマ様、ソウマ様」
静かにそう呼びます。
エリナさんはまだ顔を赤くして恥じらっているので、聞こえてません。
「ん、なんだ? クレアもしてほしかったか?」
「そ、それもあります。ですが、今はコレです」
「これって……」
私が本を手渡すと、ソウマ様は表紙を凝視した後に中身を確認しました。
そして、顔を真っ赤にして本を勢いよく閉じました。
その音でエリナさんがこちら側へ戻って来てしまいました!
あ、ソウマ様死んじゃったな。
そう思ったのですが、何やら様子がおかしいです。
エリナさんが小刻みに震えています。
「く、クレア? こんな本をいつ買ったんだ?」
声を裏返しながらソウマ様が聞いてきます。
あれ、という事はソウマ様のじゃないのですか?
じゃあ、もしかして……
「クレア……」
「ひえっ、え、エリナさん?」
「ちょっとこっちに来なさい」
「え、や、あの~」
「来 な さ い」
エリナさんの有無を言わせない威圧を頭を縦に振ってしまいました。
私が黙ってエリナさんの隣に行くと、エリナさんはどこからか取り出したハンマーを構えました。
そして、それを振りかぶって振り下ろしました。
殺される……ソウマ様が。
「ギャァァァアアアア」
ソウマ様の絶叫、そして、血みどろの玄関先。
これは、誰が見ても言い逃れできません。
確実な殺人現場です。
その犯人は無言で俯いたまま、私の方を向くとこう言いました。
「クレア、どこまで見ました?」
「え、えと……メイドさんと男性が、あれするところまで、です」
「……なら、問題はありません。本を返してくれますか?」
「はいです……」
ごめんなさいです、ソウマ様。
今のエリナさんには絶対に逆らっちゃいけないのです。
そう理解できてはいたのですが、少し気になったことがありました。
「エリナさんはそういう事を期待していたのです?」
思い切って聞いてしまいました。
ですが、私の記憶はここから先がありません。
あの後何があったかは分からずじまいです。
でも、私が目覚めた後にもっと悲惨な状態のソウマ様を発見したので、きっと恐ろしいことがあったのだと思います。
人の秘密を見つけても、そっとしておくのが1番安全です。
エリナちゃん、意外な趣味だぜ……。
いや、多分あれだ。きっとタイトルを見てメイドの参考書だと思ったんだな(迷推理)
こういうヒロイン視点の話はどうでしょうか?
感想お待ちしております。




