第18話 女三人寄れば姦しい、それ以上なら…
戦いが終わったので日常回を書きました。
やっぱり私、戦闘よりも日常の方が書きやすい!
ファンタジー小説を書くのに致命的過ぎて泣いた。
夢を見た。
どんな夢かと言うと、誰かは分からない女性に町まで担がれ、ギルドで対処してもらい、そして、色んな人が心配そうに俺を見る夢。
内容はこんな感じだった。
夢の中で女性がこう言うんだ。
「彼は何ものだ。ドラゴンと単騎で渡り合うなど、歴史上の英雄クラスでないと聞いたことがない」
それに応えるのはアメリで、かなり狼狽えた様子のままこう言った。
「単騎でって、本当に1人で戦ったんですか!? それも、ドラゴンと!!?」
相変わらずのオーバーリアクションだったな。
そう言えば、夢にはギルマスとアードールも出てきたっけ。
アードールは、
「あの罰当たり野郎、本当に罰が当たっちまうとは……チクショウめ」
って言ってた。
ギルマスは落ち着いていたけど、
「死に急ぐなよソウマ。お前はまだまだこれからだ」
って言ってたな。
ぼんやりとした気分で聞いていたんだけど、最後になんだったかな。
あ、そうそう、エリナとクレアが何故かギルドに居たんだった。
それで、俺が倒れているのを見て慌てて取りすがってさ。
エリナは必死な形相で俺を運んだ女性に何か聞いてたし、クレアはそのまま泣きじゃくってた。
嬉しいよりも、恥かしい気分だったなぁ。
まぁ、夢だからしょうがないか。
そう、夢だから……夢だから、うん。
◆
「……そう、夢だからさ。隣に美少女2人が寝ててもおかしくないんだよね」
朝になり、最初に目に飛び込むのは美少女2人分の寝顔とは、デジャブを感じる。
もちろん、エリナとクレアだが、何故俺の寝ているベットに?
というか、ここはどこだ。
ベットの感触といい、部屋の内装といい、どれもこれも我が家でないな。
隣に寝ている侍女2人のことを考えると答えは出ている。
だが、俺はそれを認めるわけにはいかないんだ。
「……だよな、ゼキエーレ」
返事は返ってこなかった。
分かってはいたけど、結構くるなこれ。
心が痛いや。
涙は出なかった。
でも、涙を流さなかったわけじゃない。
「む、起きていたのか」
不意にドアが開くと、そこから見知らぬ女性が入って来た。
正確に言えば、見たことはある女性か。
夢に出て来た人とそっくりだ。
金髪のポニーテールに、整った顔立ち。
それでいて凛々しい目元に引き締まった身体。
形容するなら、まさに罪を裁く天使……違う、それじゃあ足りないな。
大天使くらいじゃないと収まりきらないだろ。
この、溢れんばかりの神々しいオーラ。
そんな女性は俺の顔を見てからそんなことを言い、ベットの横に立った。
そして、俺に質問してくる。
「貴様は何者だ」
「……はい?」
「貴様は何者だと聞いている!」
「何者も何も、俺は俺だけど」
俺の答えに女性は激昂した。
「そんな事は百も承知だ! 名前を言え、名前を!!」
あ、あーなるほどね。
名前を聞きたかったのか、気づかなかったよ。
俺は女性を落ち着かせるように、静かに自分の名を言った。
「ソウマだ。ただのソウマだよ」
「ふむ、ソウマ……聞いた事のない名だ」
「だろうね。そういう君は、何者なんだい?」
俺の言葉で女性はハッとなっていた。
私としたことが、なんて言いながら姿勢を正す。
そして、キリッとした真剣な表情で自己紹介を始めた。
「私はリエル。ドラゴンの報を受け、この町に来た者だ」
ドラゴン討伐のためにわざわざ他の町から来たというのか。
つまり、この女性ーーリエルは冒険者ということになる。
こんな細腕で冒険者?
うーん、信じたくないなぁ。
しかし、ドラゴン討伐のためにやって来たとなると、相当の腕前なのだろう。
ベットに座ったの俺にリエルは話を続けた。
「私のことはリエルで構わない。その代わりソウマ、でいいか?」
「あ、別にいいですよ」
美人に名前で呼ばれると緊張するな。
つい敬語になってしまった。
え? アメリにも呼ばれてるだろって?
アメリはなんて言うか、ほら、そう言う枠じゃないじゃん。
分かるよな、な!
「よし、ではソウマ。もう少しだけ貴方のことを聞かせてはもらえないだろうか」
「貴方……?」
「な、なんだ」
「いや、突然呼び方が変わったから驚いただけだよ。あはは」
「し、仕方がないだろ!」
リエルが叫んだ
見れば、ほんのり頬が赤く染まっている。
「男性の名を聞くことなど、初めてだったのだから……」
そう言うと、顔を背けてしまった。
これは何だ、新種のツンデレか?
頬を赤く染め恥じらうは乙女の所業。
あんな凛々しい顔で恥ずかしがられると、何だな無性にドキドキするな。
「おっほん! 失礼します」
「うお!? あ、アメリ、居たのか」
「居てはマズかったですか?」
「そう言うわけじゃないが……」
アメリの鋭すぎる視線が痛い。
何かしたか、俺。
こんなにも怒らせるようなことしてないよな?
「貴女はアメリと言うのか」
「えぇ、そうですよ。リ・エ・ルさん?」
「?」
アメリの挑発的な態度に全く物怖じしないリエル。
あれはただ気付いていないだけかもしれないけど。
しかし、アメリの攻撃?は止まらない。
「お楽しみのところ申し訳ありませんでしたアメリさん。ただ、ソウマさんの容態を確かめるのはギルド職員としてのしごとですので」
気のせいだろうか。
「アメリさん」の部分と「仕事」の部分に変な力がこもっていたような。
「そうか。それはご苦労なことだ。ギルドの仕事は大変と聞く。適度に休憩を挟み、体を壊さないようにな」
な、なんて大人な対応なんだー!
これには堪らずアメリの怒りも収まって……
「ありがとうございます。では、リエルさんもお休みになられてはいかがてしょう? この部屋から出て行って!」
……ないんかーい!
その後、チグハグな口喧嘩は続き、部屋には重苦し空気が流れていた。
当事者の1人であるリエルは、口喧嘩だとは思っていない様子だったのがチグハグの原因だ。
アメリの剥き出しな敵対心に驚きつつ、口出しできない俺であった……。
◆
「それで、なんでお前が噛み付いてんだよこの馬鹿が」
「す、すいません!」
険しい顔のギルドマスターと、平謝りする美人ギルド職員の図。
隣には何が起こっているのか理解していないリエルがいる。
口喧嘩を鎮静化したのはギルマスであるガフだった。
「お前なぁ……いくらコイツのことが気に入ったからって、話してる女に突っかかるのはナシだろ?」
「……はい、おっしゃる通りです」
「それに、彼女はギルドに所属する冒険者。それに対してお前はなんだ」
「……ギルド職員です」
「だったら相応の態度ってもんがあるだろ?」
ギルマスがしっかりと職員を叱っている光景は、なんだか新鮮だ。
職員ってのは何でもそつなくこなすイメージがあったからな。
ガフが叱り終わると、アメリは体の向きをリエルに向け謝罪をした。
「申し訳ありませんでした。リエル様にとんだご無礼をはたらいてしまいました。どうか、お許しください」
「無礼? 貴女私に? 一体いつ、私に無礼をはたらいたと言うんだ」
「……へ?」
腰を直角に曲げた見事な平謝りをしていたアメリは、リエルの言葉に思わず間の抜けた声を出す。
薄々気付いてはいたけど、やっぱりリエルって他人からの気持ちに鈍感なのかもな。
それか、そう言う環境に居なかったとか?
男に名前を聞くことすら初めてと言っていたし。
「なぁ、リエル」
「なんだソウマ。まさか、貴方には分かるのか」
「分かる分からないはどっちでもいいじゃないか。誠心誠意謝ってくれてる相手に対しての対応ってのがあるだろ?」
「む、確かにそうだ。これは失礼したな、アメリ」
リエルはそう言うと、静かに頭を下げた。
そんなことをされたアメリはパニック状態。
謝っていたと思ってたら、いつの間にか謝られていたって感じだ。
「え、えぇ!?」
「アメリ、貴女の気持ちに気付くことができず、その上謝罪に対して不適切な対応を取ってしまった。ここに、謝罪を」
「い、いえ……大丈夫です。本当にスイマセンデシタ」
アメリ、気をしっかりと持つんだ。
君は間違ってない。
間違ってないんだけど、リエルが特殊すぎるだけだから。
心の中でエールを送りつつ、平謝りし合う美女2人からそっと目を逸らした。
目を逸らした先はもちろんガフ。
この状況で唯一の常識人だろう。
頼れるのはお前しかいなんだ!
「そんなんでこっちを見るな。俺だってかなり来てるんだ」
「おぉ、苦労人だな」
「それは、お前もな」
「え?」
ガフが憐むような目で俺を見て来た。
そして、その後に俺の隣へと視線を移した。
何だと思い追ってみると、そこには見事に膨れ上がった頬があってだな。
「クレア! お、起きてたのか」
「はい、です。私、起きてました。それに……ん」
「ん? んってなんだ……あ、え、エリ、ナ」
指をさされたので何かと思えば、背後に殺気を大量に孕んだ恐ろしい獣が!
ピンチ、SAN値ピンチ、危険が危ない、命キケーン!
尻尾をゆっくりと揺らし、耳はピクピクと震えている。
表情はなく、恐ろしく冷たい空気を発していた。
「ソウマ様」
「は、はい」
「心配しましたよ?」
「め、面目有りません!」
心配したような目に見えないんですがそれは。
完全にハイライト消えてますやん。
ヤンデレ並みに堕ちてますやん!
「私も、クレアも、心配したんですよ?」
「いや、えっと、その……」
「それなのに、目が覚めたらお美しい女性と楽しく談話ですか」
「うっ……」
「私達のことは放っておいて、誰とも知らない美女とお話しするような人なんですか。あーそうですか」
エリナはわざとらしく口調を変え、俺を責め立てる。
美女のお怒りも怖かったが、美少女の怒りはもっと怖い。
何より、その怒りが自分に向いていると実感すると冷や汗すら出てくる。
「クレア、例の物を」
「はい、です」
「え、何? 例の物ってなにそれ。ねぇ、怖いんだけど。聞いてます? その大きなペンチみたいなもの何!?」
「さようなら」
ギィイィィヤァァァァァアアァァ!!!
本当はドラゴンの話を書くつもりだったんです。
でも、書いてて楽しかったからこうなりました。
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