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第17話 大地の龍⑥

またまた視点変更ありです。

あと、謎の人物や謎の力がてんこ盛り! 混乱したらスイマセンm(__)m


後々判明するので、今は気にせずどうぞ。

「ブチ殺してやるよ、トカゲ野郎」


 剣を握りしめ、自分でも分かるくらいに目を細めてモンタイトを睨みつけた。

 壁越しではあるものの、あの醜いアホ面が良く拝める。


 竜砲はとっくに撃ち終わり、既にモンタイトは再チャージに入っている。

 そして、壁はもう薄れていて、すぐにでも消えてしまいそうだ。


 視界が黒い、いや、暗い。

 ん? あ、俺の体から何か出てるのか。

 黒いオーラか。これは……何でもいいか。


 モンタイトと俺との間にあった壁が消えた。

 と同時に、モンタイトのチャージも終わった。


「……行くぞ」


 不思議と力が湧い来る。

 理由は考えるだけ無駄だとしても、俺がやるべきことは単純にして明快。


 この竜殺しを、あのデカいトカゲに叩き込むだけだ。


 そう思っていると壁の色がなくなり薄れ……消える。


 俺とお前との戦いが始まったぞ。

 さぁ、撃ってこい。竜砲を、撃ってこい!


 願ってみるものだと、この時ばかりは思った。

 俺の思いに応えるかのように、モンタイトは竜砲を撃ってきた。


 それを合図にして俺は駆け出した。真っ直ぐ、ヤツの顔面目掛けて。


 傍から見れば哀れな貧弱冒険者が竜種最強の名を持つドラゴン目掛けて特攻しているようにしか見えないんだろうな。


 でもな、モンタイト……なりふり構ってない人間ってのは、地獄の閻魔大王よりも恐ろしいんだぞ。


 俺を殺さんと向かってくる竜砲へと、左手の平を向け腕を突き出した。

 そして、そのまま方向を変えずに全力ダッシュ。


 剣は右手に、左手は前へ。


 このまま行けば十中八九、きっと必ず絶対に、俺の左腕は竜砲の力によって吹き飛ばされるだろう。

 いや、跡形もなく木っ端微塵に消し飛ばされるが正解か。


 冒険者という職業で生きていくうえで、片腕欠損はかなりの痛手。

 もはや冒険者引退も視野に入るレベル。


 それでも、構わないと思った。


 諦めではなく、現在行えるこれが最前の手。

 左腕を犠牲にすることで、あのトカゲを殺せるのなら本望。


「やりたい事をやれ、だったよなゼキエーレ!」


 今にも竜砲が左手に当たろうとした時、俺はそう叫んだ。

 ゼキエーレとの約束を、決意に変えるために。


 すると、先程まで体全体を覆っていた黒いオーラが左腕へと集まって行った。

 黒いオーラが集まり、凝縮され、最終的にはガントレットになってしまった。


 驚いた、と言った瞬間に竜砲が左腕に直撃。

 眩い閃光に激しい衝撃、吹き飛ばされそうなところを何とか踏ん張る。


 けれど、痛みはない。

 腕が一気に蒸発してしまって痛みを感じる隙もなかったのか、と思った。


 しかし、衝撃が収まり腕を見てみると腕はそこにあった。

 がっちり俺の肩から左腕は生えていたのだ。


 その代り、俺の腕にガントレットのようにして集まっていた黒いオーラは全て消えていた。

 おそらく、ダメージを全て肩代わりしてくれたのだろう。


 だが、モンタイトの攻撃は終わっていなかった。


 キュィィィィィィン


「チャージしている……いや、これは違う!」


 気付いた時には遅かった。


 二発目の竜砲。

 モンタイトは竜砲を、連続発射できることを忘れていた。


 俺は咄嗟に左腕を突き出した。

 しかし、オーラは集まってこない。


 今度こそ腕が吹き飛ぶ、そう覚悟を決めたのだが……また裏切ってくれたな。


 黒いオーラは腕へと集まらず、盾となり俺の前へと立ち塞がった。

 それはゼキエーレが使った壁と似ていて、俺を護ろうとする意思が具現化したような見た目をしていた。


 どうしてこうなったのかは分からない。


 けれどこれのおかげで俺は今、こうして走っていられる。


 竜砲を掻き分け、モンタイトへと突っ走る。


 モンタイトは目と鼻の先だ。


 俺は剣を振りかざした。


 そして――



 ◆



「またオーラが強くなった。彼に何が……?」


「君は本当に研究熱心だねぇ。もっと楽しめないのかい? この戦いを」


「確かに、この戦いの行く末には興味があります。ですが、私が今一番気になっているのは青年の正体であり、それ以外について考える余地を持ち合わせていません」


「はぁ……ま、いいけどね。私が君の代わりに楽しむことにするよ」


 男はそう言うと、再びソウマの方へと視線を戻した。


「さぁ、動くぞ」


 男の言葉通り、ソウマがモンタイトへと駆け出した。

 右手には剣を持ち、左手は魔法を使うためなのか前へと突き出している。


 モンタイトも竜砲の発射準備を終え、今まさにソウマへと撃たんとしていた。

 エネルギーは溜め終えており、後はモンタイトの気分次第。

 あの竜砲を真正面から食らえば、次こそはソウマも死んでしまうだろう。


 しかし、ソウマは死を恐れていないかのようにモンタイトへと真っ直ぐ突っ込んで行く。

 その様はまさに猪突猛進、怒り狂ったイノシシが突っ走るそれだ。


 いや、もっと禍々しく、醜いものだったか。


 そんなことを思っていた男だったが、閃光が瞬くと目を塞いだ。

 隣にいた魔女も同時に目を閉じた。


 何度目かの眩い閃光が光り終わると、男はゆっくりと目を開く。

 そして、その光景を見てより一層目を見開いた。


 真正面からあの技を食らって立っているソウマの姿を見て、

「何故だ何故だ。あの攻撃を食らってなお、君はまだ走っていられる! 立っていられる、戦っていられる!!」

 と言いながら称賛の拍手を送った。


 当人のソウマはそのことに気付くことはないだろう。

 例え彼が正気だったとしても、男のいる場所はそこではないのだから。


 ソウマは称賛に気付くことも、今戦っているドラゴンが男の差し金とも知らずに走る。


 さらに、次の竜砲が間髪入れずに発射された。


 再チャージはなかった。しかし、竜砲は放たれた。

 それは、最初の攻撃を軽めにし、次の攻撃に全力を注ぐと言うモンタイトの策略によるものだった。


 一度竜砲を防がれたモンタイトは、既に対策を講じていたのだ。


 しかし、それでもソウマは止まらない。


 モンタイト=イゾアが全力で竜砲を放ったところで、今のソウマにはキズ1つ付けることができていないのだ。


 その様子を熱心に見ていた魔女は、ソウマの変化に気が付き声を荒げた。


「な、なんてことですか! あの邪気のオーラ、強いとは思っていましたが……そんなことがあっていというのですか!?」


「そうしたんだい? 何が分かった」


「彼は……隊長のお気に入りのソウマという青年は……おそらく、ルシファーの眷属として覚醒しつつあります」


「ほう? その根拠は」


「オーラを伝って感じるのです。あの、禍々しきオーラが私に訴えてきている。こいつは我、ルシファーの物だと」


 魔女はそう言いながら震えていた。

 小刻みに肩を震わせ、恐怖を全身で表現していた。


 男はルシファーの名を聞いてから笑っていない。

 あの憎たらしいニヤケ面をやめ、真剣な眼差しでソウマを見つめている。


「もしそれが本当だったのなら、彼は一体何者なんだ」


 ソウマが丁度剣を振りかざしている時に、男はため息をつくかの如くそう呟いた。


 男は感じ取ったのだ。

 ソウマという人間でもない、魔族でもない者が邪気と言う力を手に入れ、あまつさえバックにルシファーが居るという混沌とした現状が何を意味するかを。


 そして、その重すぎる運命を背負ったソウマがこの先どんな人生を送って行くのか、とてつもなく興味をそそられていた。


「さぁ、見せてくれ。君の深淵の輝きを」


 男は笑みを浮かべ、そう言った。



 ◆



「食らえぇぇぇ!!」


 モンタイトが開けていて無防備な口中へと剣を振り下ろす。


 剣はモンタイトの上顎に当たり肉を裂くと、続け様に舌を真っ二つにした。

 そのまま下顎へと到達し、これも難なく切断。

 竜殺しの名に恥じぬ切れ味を見せつけてくれた。


 口を一刀両断されたことによりモンタイトは絶叫した。

 暴れまわり、砂埃を舞わせて、痛みに悶え苦しんでいる。


 だが、そのせいで喉から腹にかけてが隙だらけになった。


「ブサイクな顔が上がってるぜ、トカゲ野郎ッ!」


 今度はしっかりと両手で剣を持ち、のど元に突き刺す。

 そして剣を思いっきり下へと引き切る。


 ドバドバと血が溢れ、地面が真っ赤に染まっているがお構いなしだ。

 モンタイトのせいで地面が凸凹だらけで花なんかも全て抉られている。

 今更大地の事を考えても遅いってことだ。


 顎とは違い、腹は柔らかく刃が通りやすい。

 表皮は流石に引きずっているからなのか硬かったが、内側の肉は何もないかのように切れやすかった。


 ここまでされたモンタイトは、もう息が出来ていない様子だ。

 呼吸をしようにも、こひゅこひゅ、と俺の突き刺した喉の穴から空気が漏れている。


 しかし、これでも死んでいない。

 流石は、イゾアの名を持つ竜ということか。


 殺す、死なないなら何度だってブチ殺してやる。


「俺が()る!」


 剣を振りかざし、力を込める。

 黒いオーラを剣へと集まっていくと、それは一振りの剣へと変貌した。


邪悪なる巨剣(イービルブレード)


 グチャリ


 剣を振り下ろすと、真っ黒巨剣がモンタイトを圧し潰し肉塊へと変えた。

 肉の塊から真っ赤な血が滴り落ちるのが見える。


 自分の体を見てもキレイなままだ。

 返り血らしい返り血は浴びていない。


 こんな惨状なのにも関わず、返り血が一滴も飛んで来ていないのか。


 再度、モンタイト=イゾアであった肉塊を見た。


 それは物言わぬ肉塊であり、生き物ではなくただの肉の塊。


 死んだ、モンタイトは死んだんだ。


「ふぅ……」


 剣を手離し、地面へと仰向けで倒れた。


「やったんだ。殺したんだ、俺が」


 自然と笑みが零れ、そして、眠った。



 ◆



 ザッ ザッ ザッ


「む?」


 ドラゴンが町を襲ったという報を聞き、ここまで遥々やってきたのだが、何かある。


 大きな大きな肉塊と、その傍らで眠る男。

 何ともシュールな図である。


 しかも、その男から禍々しきオーラ、邪気が溢れ出ているではないか。


 粛清対象かもしれないが、相手が眠っている以上は手出しできん。

 寝ている相手への攻撃は信条に反するからな。


 剣の鞘に手を置き、ゆっくりと近付いてみる。


「この肉塊、ドラゴンか?」


 原型を殆ど留めていないソレからドラゴンの波動を感じた。

 しかも、これは並みのドラゴンではない。


 私でも一度や二度しか感じ取ったことのない、イゾア級の力を持つドラゴンだ。


 となると、このドラゴンを殺したこの男は一体……?


「……気になる。依頼を受注したあの町へ戻ろう。彼がどこから来たかは分からないが、そこへ連れて行き身元を調べるとしよう」


 邪気を纏うこの汚らわしい体に触れるのはとても、かなり、最高に嫌な気分だが我慢しよう。


 男を担ぎ、男の持っていた剣も回収する。


「ふっ、竜殺しの剣とは、また懐かしいものを」


 この剣ならば、実力を伴う人間が持てばドラゴンも容易く屠れるというものか。


 ますますこの男の事が知りたくなった。

 さっさと帰ろう。


 私は急ぎ足で町を目指した。

今回は「一人称」→「三人称」→「一人称」でした。

分かりにくかったらごめんなさい。

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