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第15話 大地の竜④

竜と龍

私のイメージとしては、前者が地面を、後者が空を駆ける感じがします。

本当に個人的な意見ですが、皆さんはどうですか?

「いないんだが!?」


 俺は叫んだ、大地の上で。


『あぁ、うん』


「無関心!?」


 場所は隣町へ続く道の中間地点。

 道は人が通るため一応の舗装はされているものの、必要最低限なので砂利道と変わらない。馬車なんかで通ったら尻が痛そうだ。

 周りには木やら草やらが生えていて、自然溢れる素晴らしい場所だ。


 そんなナチュラリズムに目覚めそうなここは、ドラゴンの目撃情報のあった場所のはずだったのだが…‥。


『私が戦う訳じゃないからな』


「予想以上に納得できる理由だな!」


 あまりにも関心のないゼキエーレに悪態をつきつつ、砂利道を歩きながら周囲を確認する。

 しかし、ドラゴンらしき影は見当たらない。


 ギルド聞いた目撃情報が間違っているとは思えないし、普通に考えてここにドラゴンがいるのにも納得がいく。

 なのに、何でいないんだ。移動したとしても、俺は隣町目指して歩いていたんだぞ。

 途中で遭わなかったという事は、隣町から真っ直ぐこちらへ来ているわけではないのか。


 魔物が何かを考えて行動しているのか知らないから変な事は言えないが、やはりドラゴンも獣の一種なのだろう。

 おそらくは腹が減ったとかで道草食ってるんだろ。

 この辺りには野生動物はいなさそうだからなぁ。

 ついでに人間も居ないけど。


「どうすっかなぁ」


『探知系のスキルは取れないのか?』


「んー、分からん。分からんが取れたとしても、ドラゴンが見つからないって理由だけで取りたくはないよ」


『それもそうか』


 会話終了。

 万策尽きた!


 って、早いわ!!

 もっと何かあるだろうがよ!


『ひとりノリツッコミ、楽しいか?』


「寂しい……」


 俺が独り、そう呟くと背後から声わ掛けられ

 た。


「何がですか、ソウマ様」


 振り返れば、そこには町にいるはずのエリナが立っているではありませんか。

 最初、自分の目が信じられなかった俺は、ゴシゴシと目を擦り再び見る。

 が、景色は変わらないし、エリナもそこにいる。


「あれ、なんで?」


 力無く、腑抜けた声で聞いてしまった。

 しかし、エリナは優しく柔らかい声で答えてくれる。


「ギルドで新たな情報が発表されたので、ご報告にと」


「その為だけに、わざわざここまで来たのか?」


 エリナなさも当然のように言っているが、実際かなりの重労働だぞ。

 なんたって、報告したら帰るしかないからな。

 言って帰ってくるだけでも遠い道のりなのに、それを報告する為だけって……。


「ありがとうな」


 俺はエリナの頭を撫でながらそう言った。

 ケモ耳を見たら、ありがとうの気持ちは撫でれば伝わるかな、なんて偏見で行った行動なのだが……間違えてる?


「へぇ?!あの、と、突然何を」


 赤面し、声を荒げるエリナに向かって俺は続ける。


「こんな所まで伝えに来てくれるなんて、嬉しいよ。エリナ、ありがとうな」


 改めて考えると、ここまで完璧超人な上に美少女ってさ、恐ろしくハイスペックじゃね!?

 そんな娘を侍女にしてる俺って、何?


「そっ、そんな、勿体無いお言葉です……うぅ」


「あ、悪い。そんなに恥ずかしがるとは思わなかったんだ。でも、俺がどれだけ感謝しているかは伝わったか?」


「はい!それはもう、十分すぎるほどに」


 エリナから笑顔がこぼれ落ちた。

 口元がすこしだけつり上り、目を細めて俺はも向けられた笑顔。


 側から見たらそれは、もしかしたらただの微笑に見えるのかもしれない。

 クスリと笑っただけの、笑顔には見えないかもしない。

 だけど、俺にはそれが百点満点の笑顔に見えた。


 エリナが見せた、笑顔だったよ。


 まぁ、喜んでるのは耳と尻尾を見れば分かるんだけどね。

 耳はピクピクしてるし、尻尾は嬉しそうに揺れてるしで、本当にハッキリと分かる。

 こういう時、人間じゃないくて獣人?は分かりやすい。良い意味で。


 本当に可愛いな。

 頭を撫でているだけなのに、気持ちがとても和む。

 ペットを飼うというのは、こんな気持ちなのかな。


『甘い空間作ってる所悪いが、ドラゴンはもういいのか?』


 浮かれ気分な俺にゼキエーレの言葉が突き刺さる。


「あ……ドラゴン忘れてた」


「わ、私もです……すいません。ソウマ様のお言葉が嬉し過ぎて、頭から離れていました」


 ゼキエーレの言葉に思わず口から出てしまった言葉は、エリナを落ち込ませてしまったらしい。

 耳がペタリと頭に伏せ、さっきまで揺れに揺れまくっていた尻尾は下を向いている。


「あー……それで、新しい情報ってのは?」


「は、はい。例のドラゴンですが、私が聞いた時点で既に町へと接近されていたそうです。相当近くまで来ていたらしく、多くの冒険者が慌ただしく町の外へと駆け出していくのを見ました」


 表情を一転させ侍女モードとなったエリナが説明してくれる。

 相変わらずのクールな顔も美しいね。


 なんて、呑気なことを言ってはいられないようだな。

 町に接近されていたとなると、今更戻っても戦闘に参加はさせてもらえないかもしれない。

 しかし、俺がこの辺りまで来る間にはドラゴンらしき姿は見えなかったんだがなぁ。

 見落としたかな?


 俺はドラゴンの様子をエリナに聞いた。

 見た目から動き方なんかも全て。

 だが、エリナは俺の質問に何1つ答えられなかった。


「え、ドラゴン見てないのか?」


「すいません。ドラゴンを見るよりも先にこちら側は走って来たので」


「こちら側って、どういうことだ」


 その言い方だとまるで……


「ソウマ様の居るこの場所とは正反対の場所にドラゴンが現れましたので」


 おかしいぞ。

 俺はドラゴンに襲われた町へと続く道を進んで来た。

 加えて、ドラゴンの目撃情報もある。

 にも関わらず、正反対の場所に出現とは何がどうなっているんだ!


「チッ、仕方ない。急いで戻るぞ。ついて来い」


 依頼を受けていないから急いで戻る必要も、ドラゴンと命を賭けて戦う必要もない。

 だからと言って、戦わない理由にはならない。


「はい。かしこまりまし――ひっ」


 俺は踵を返し、急ぎ足で町へと戻ろうとしたが、後を付いて来ようとしたエリナの悲鳴を聞き再び視線を戻す。


「ん、どうした? って――は!?」


 エリナの視線の先を追ってみる。


 ズゥン ズゥン


 ここからでも聞こえる、足で地面を踏みしめる音が。

 4本脚のトカゲに似た見た目をしているが、羽はないし図体は圧倒的に大きい。

 体毛のようなものはなく、岩を着るようにして身に纏っている。

 全体的に茶色い。とにかく、茶色い。


 まさに、岩が動いている。

 そんな印象を受けるほど、巨体のドラゴン。


「なんで、ここにいるんだよ」


 今からお前に会いに行くところだった、と付け加える。

 こう言うと、何だかロマンチックな話になりそうだが、冗談を言う場面じゃない。


「そ、ソウマ、様……」


 俺の名前を呼びながらも、ドラゴンから目を離せずにいるエリナ。

 足は震え、耳は伏せ、完全に怯えている。

 エリナも女の子だし、あんなデカ物を見て怖がるのも仕方がない。


 そう言う俺も、かなりビビっている。

 ドラゴンと言われるくらいだから覚悟はしていたが、ここまで巨大で威圧感のある物だとは……舐めていたわけではないが、実際に対峙すると考えが変わる。


 ――相手にしてはいけない


 本能のような何かがそう訴えてくる気がした。


 ――こんな奴には勝てない


 うるさい、黙れ。

 戦うんだよ、俺は。


『いやいや、逃げた方がいいって』


 エリナとクレア、2人と話で決めたんだ。

 男が決めたことを簡単に曲げちゃいけないって、どっかの親父が言ってた。


『逃げようぜー?』


 だからそういう訳にはいかない……って、さっきから俺に雑念送りまくってたのお前かよ!


 いくらドラゴンとの距離がまだあるとはいえ、俺の決意に水を差すような事を延々と言われるのは腹が立つ。

 俺はゼキエーレを責め立てるように非難したが、ゼキエーレは真面目トーンでこう言った。


『いや、本当にアレは危険だ。さっさと侍女連れて逃げ帰るんだ』


「は? 今更逃げられるのかよ。確かに距離はあるけど、ここで逃げたら町に来ないか?」


『町には手練れの冒険者がいる。それに、あのギルドマスターは手練れだ。問題はない。多少の被害は出るだろうが、この世界じゃ日常茶飯事。気にするようなことでもないさ』


 あのドラゴンを見てから、ゼキエーレは逃げろしか言わなくなってしまった。

 どれだけ恐ろしい相手なのか、ゼキエーレは続けて説明してくれる。


『アイツには大地の竜という2つ名がある。名前も持っていて、<モンタイト=イゾア>と言って、竜種で3匹しか存在しない上に、最強の名でもあるイゾアの名を持つドラゴンだ』


「イゾア? イゾアってなんだよ」


『イゾアって言うのは……っと、話をしている場合じゃなさそうだぞ。ヤツめ、かなり怒り狂ってるな』


 ゼキエーレの言葉通り、あのドラゴン――モンタイト=イゾアはやたらに地面を足で引っ掻き回して歩いている。

 そのせいで、折角の美しい大地が穴凹だらけになってしまった。

 許せん。絶対に討伐してくれる。


「エリナ! 町へ走ってこのことを伝えてくれ。俺はアレとやる」


「……無茶です。あんなの、勝てるわけありません」


「勝てるさ。あの時話しただろ? しっかりと準備したって」


「でも……」


「いいから走るんだ! 町の人たちはドラゴンに挟まれていることを知らないんだから!!」


「ッ……はい!」


 渋っていたエリナだったが、俺は無理やり走らせた。

 町の人が危険だと言えば走らざるを得ないと思ったから使った言葉だったのだが、結構汚い方法だったと今は反省している。

 ダシに使ったのは申し訳ないと思うが、謝るのはアレに勝ってからでもいいだろう。


 剣を握り、盾を構える。

 つくづく異空間倉庫ってのは便利だ。

 サッと出してサッと仕舞える。


「さぁ、やろうか!」


 そう俺が意気込んだ瞬間、ドラゴンの姿が消えた。


「え――」


 そして気が付くと、俺の真後ろで荒い鼻息がしていた。

 訳も分からず振り返ろうとすれば、突然の衝撃。

 横から何かがぶつかったと思えば、俺は遠くへと突き飛ばされていた。


 ガツンッ


 頭から地面へ落ちる。

 全身を襲う激しい痛みに加え、頭を打ったことで生じた脳震盪で力が入らず立ち上がれない。

 痛いしダルイし、何より苦しい。息ができずに辛い。


「が…ア……」


 これが竜種最強の名を持つドラゴンか。


 勝てる気がしない。


「でも、やるしかないんだ」


 身体強化・弱、ドーピング・小


「戦えるのは、この一瞬だけだから!」


 最強への挑戦、始まる。

土竜って漢字がかっこよくて、しかも地竜って蚯蚓(ミミズ)のことを言ったりするらしいじゃないですか。

使ってみたいなぁ、と思いました。

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