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第14話 大地の竜②

大地の竜と聞いて、皆さんは何を想像しますか?


「「ご馳走様でした」」


「お粗末様でした」


 エリナの手料理、物凄く美味しかった。

 俺とクレアのリクエスト通り、卵焼きと目玉焼き、それにパンが出た。

 これからもこんなに美味しい食事ができると思うと、幸せだなぁ。


 食器を片付け終わったエリナが、神妙な面持ちでこう言って来た。


「お店の人から聞いた話ですが、隣町がドラゴンに襲われたそうです」


「あぁ、それは俺も聞いた。地を這う竜だってな」


「はい。私が聞いた話では、既にギルドで緊急クエストを出しているらしいですよ。条件はBランク以上の冒険者、だそうです」


 圧倒的に足りないじゃないですか、ヤダー。

 俺のランクはFであって、Bとか遠すぎだ。


 だが、緊急の依頼を受けられないのと、情報収集をしないのとでは、まったく話が異なる。

 戦いは数、という意見もあるが、現代の戦争では情報こそ命であると俺は思う。


 と、言う訳でやって来ました冒険者ギルド。


「昨日ぶりだな」


「あ、ソウマさん!」


 ギルドに入り、さっそくアメリと挨拶を交わす。

 俺の姿を見てから、1秒も経たずに返事をするアメリには、俺以上の冒険者のセンスを感じてしまう。

 まぁ、俺にはセンスのかけらも無いけどさ。


「今日はどういったご用件で?」


「噂のドラゴンについて聞ければと思って来たんだが……忙しそうだな」


 ドラゴンの情報を交換し合う冒険者たちや、忙しなく書類やら何やらを抱えてギルド内を走り回るギルド職員を見てそう呟く。

 受付もアメリ以外の職員は誰1人としておらず、殆どの職員がドラゴンに振り回されるが如く働いている。


「ソウマさんも、ドラゴン討伐に参加なさるんですか……?」


 そんな状況に苦笑いしていると、アメリが落ち込んだ様子できいてきた。


「いや、無理だな」


「え、無理?」


「あぁ。俺のランクはF、依頼の受注条件はBランク冒険者。不可能だろ」


「……」


 受けられるなら受けていた可能性は高いが、受けることが不可能なのだから仕方がない。


 そう俺が伝えるとアメリは一言、やっぱり知らないのですね、と答えた。


「知らない?」


「そうです。しかし、知らなくて当然ですよ。今朝決まったことなので」


「何がだ?」


「ソウマさんのランクをCまで上げることをです」


 なんだって?

 俺のランクが上がる?

 それも、3つも!?


「ど、どういうことだ。そんな簡単にランクは上がるものなのか?」


「いえ、これは現在のギルドではあり得ないことです。ランクなどを上げるには単純な力だけでは不十分ですので」


「なら、尚更なんでだ」


「それは……」


「それについては俺が答えてやろう」


 アメリが答えにくそうに口籠もったのとほぼ同時、後ろから野太い声が飛んで来た。

 振り向けば、腕を組んで険しい顔をした筋肉質の男が立っていた。


「誰だ」


「俺はガフ。ギルド(ここ)のマスターだ」


 ここ……?

 ってことは、ギルドマスター!

 ギルド内でのダントツの権力を持っているだけでなく、意外と強いで有名なあのギルドマスターか!!


 小説なんかでよく見かける人物に興奮しつつも、表には出さないように話を続ける。

 俺の表情筋は有能なのだ。


「ギルドマスターが俺に何の用だ?」


「ははっ、随分と威勢がいいじゃねぇか。なるほど、アードールが気にいる訳だぜ」


 アードールを知っている?

 それも、かなり親しそうな物言いだな。


「用件はさっきも言った通り、ランクがアップの理由を説明してやるよ」


「……納得できる説明ができるんだろうな」


「ん?勘違いしてるようだから言っておくが、俺がお前を納得させるんじゃない。お前が俺の説明で納得するんだ。あくまでお前はギルドに所属する冒険者。だったら最低限、ギルマスには協力的でいろ」


 そう言うガフからは押し潰されそうなくらいの威圧が湧き出ていた。

 言葉の1つ1つに重みがあり、話を聞いてるだけなのに頭の中を揺らされた気になってしまう。


 しかし、ガフはそんな俺にも容赦はしなかった。


「お前の討伐したホブゴブリンがなぁ、通常首都は違ったんだよ。単体ではDランク相当のホブゴブリンが、今回だけはCに格上げされた。なぜだか分かるか?」


「さぁね。俺はホブゴブリンを初めて見たんだ。比較なんてできない」


「初めて戦う相手に単騎で勝ったのか!そいつはスゲェ!」


 ガフがそう言いながら大声で笑った。


「ならしゃーねぇか。理由は簡単、亜種だったからさ」


 亜種、つまり通常種とは異なる性質、体質を持って産まれた変異種。

 亜種と呼ばれる個体が繁殖するケースは稀であり、変種としては成立していないが種としても成り立たない中間の存在、だったか。


「だが、亜種なんて簡単に決められるもんなのか?死体も持って来てないのに」


「死体なんていらないさ。うちには良く見えるヤツがいるからな」


 良く見えるって、それがどうしたんだ。

 というか何が見えるんだ。

 それだけでは理由にはならないだろ。


「そんな顔をするな。説明してやっから」


「むっ」


 顔に出ていたか。

 有能な表情筋が動揺を見せてしまったようだ。

 気をつけなければ。


「さっきの説明だが、うちのギルドには時間を……あー、なんと言ったらいいんだか。一言で言えば、未来と過去が見えるヤツがいるだ。今は休養中でギルドにはいないがな」


「未来と過去が見える……だと?」


「具体的には、時間を映像として可視化する能力、とでも言うべきか。見えるのは本人だけだが」


 未来視という能力は聞いたことある。

 それに、人の過去や物の過去を見ることのできる能力も聞いたことある。

 どちらも小説で読んだだけだけど。


 けど、あっていいのか?

 未来視と過去視の両方を兼ね備えた人間がいても。

 時間を見ることができるなんて、許されるのか?


 俺は混乱していた。

 ゼキエーレから貰い受けた力は大概チートだと思っていたのだ。

 がしかし、ギルドマスターであるガフの話を聞いて、この世界には自分以上のチート能力を持った奴がいること知った。

 怖くなったのだ。

 この世界で自分が生きていけるのかと。


 こんな最序盤で自分よりも強大なチートが現れるなんて、これがラノベだったらパワーバランス崩壊と最強のインフレ間違いなしだぜ。


「つまり、その力で俺の過去でも見たか?」


「いや、違うな」


 ガフはきっぱりとそう言い切った。


「じゃあ、何を見たんだよ」


 俺の過去を見て、ホブゴブリンの特徴を確認したんじゃないのか?

 それ以外で、亜種と断定する方法なんて思いつかないぞ。


「過去じゃねぇ、未来を見たんだよ。お前の未来を見て、魔物の詳細を知った」


 は?


「は?って顔してるな。まぁ、マテマテ。まだ説明しきってない」


 長くなるから付いて来い、続けてそう言うと俺の前をガフが歩く。

 その後に俺は言われた通り付いて行くと、ギルド内の小部屋へ案内された。

 ついでと言ってはあれだが、アメリも同行している。

 というか、俺の座らされたソファの横にいる。

 なんで?


「よし、じゃあ続けるぞ。お前の未来を見た続きだ」


 ガフはアイツと言っていた人が見たという俺の未来について説明してくれた。

 ただ、未来には不確定要素が多いため見た未来が必ず来るとは限らない、という補足を加えて。


「お前の未来、それは強敵との戦いだ。何者かは分からないが、人間ではないらしい」


「それで?」


「そいつがこう言うそうだ。『ホブゴブリンの亜種を倒していい気になるなよ』ってな」


 かなり敵対的な言い方だ。

 強敵との戦いと言っていたし、おそらくは俺を敵視する何者が襲って来るのだろう。

 いや、もしかしたら俺から戦いを挑むかもしれない。


「それだけで判断したのか?」


「いや、一応調べたさ。しかし、お前のこれからの未来でホブゴブリンと戦う事はないらしい。つまり、今回討伐したホブゴブリンが亜種という事で結論付けた」


「無理やりだな。その、強敵さんの勘違いの可能性は?」


「アイツは優秀だからな。真偽もみわけられる」


「時間を見る目を持つ上、真偽を見分ける目も持つだ?」


 本当にチートだな、と心の中で続けて叫んだ。


「優秀なのさ」


「なんでそんな奴がギルドに……いや、何でもない」


「聞いてくれなくて助かる。事情が事情だからな」


 優秀で済まされる人材じゃないからな。

 国が囲って当たり前だろう。

 しかし、それがギルドという一団体にいる。

 味方ならば最高だが、敵なら最悪だ。

 国からしてみれば脅威でしかない。


「説明も終わった事だし、早速行ってもらうかな」


「え?何に?」


「ドラゴン討伐」


 正直に言おう。

 行きたくないです。


 それより気になるのは、隣で自慢げに座るアメリなのだが……みんなはどう思う?

私は土竜(モグラ)です。

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