第12話 家の確保
衣・食・住の中で一番大切だと思う物は—―
「家を探している!」
どうも、俺だ。
俺は今、アメリに場所を教えてもらった不動産屋へと来ていた。
机を挟んで不動産の職員と俺が向かい合って座っている。
俺の斜め後ろ、左右に分かれて右にエリナ、左にクレアが立っている……いや、立たせているのではない、立ったのだ。自らの意思で。
今回、狙っているのはエリナとクレア、そして俺のプレイベートをしっかりと尊重できる空間がある家だ。
やはり俺も男であり、身近に美少女がいるとイロイロと大変なのである。
プライベート、大事。
「ど、どんな物件でしょうか?」
「小部屋は最低3つ! いや、2つでも構わん。キッチンが付いている一戸建てが好ましい!」
「よ、予算はどのようにお考えでしょうか」
「安い物から順に見たい!」
「はいぃ! しょ、少々お待ちくださいッ」
「うむ!」
変な妄想をしてしまい気合が入った。
男女がひとつ屋根の下、しかも俺1人に対し美少女2人だ。
これはプチハーレムではないか!
こんなものを意識しては、邪な考えが浮かぶのも仕方がないというものだ。
俗に言う、ムフフなこと、を想像してしまう。
「ソウマ様、ど、どうしたんですか?」
「へ、変です。いつものソウマ様じゃないです。心配です」
そんなことを知らない侍女2人組が俺の心配をしてきた。
いつもと違う口調のせいで、変に思われてしまったかのかもしれない。
俺は一言「大丈夫」とだけ言い、逃げるようにして資料を探しに行った職員を待った。
まぁ、そんな無愛想に答えた俺にエリナとクレアが不満を持つのも当然のことで。
ちらりと後ろを振り返れば、不機嫌なエリナとぷっくり頬を膨らませたクレアが立っていた。
しばらくして、両手いっぱいに資料を抱えた職員が戻ってきた。
資料を机へ置くと、そのうちの一冊をパラパラとめくりそこに載っている物件を指差し、説明を始めた。
「お待たせしました。こちらが、お客様の条件に合った物件の1つ目になります」
「これは……ふむ、立地はいまいちだが値段が安いな」
「そうなんです。不便さを我慢すればとってもお得な――」
その後もたくさんの物件を紹介してもらい、しかも、それぞれの特徴や欠点を事細かに説明してもらった。
中でも、特に気になったのが2つほど。
1つは、ギルドに近く2階建ての物件。間取りは2LDK。
ギルドの周りは冒険者が良く通るため、露店や武器屋、その他の店で賑わっている。
町に入って真っ直ぐ道を進めばギルドがあるので、依頼から帰ってギルドを経由し、家に帰ることができる。
ただ、この物件は良い所多いので値が張る。
具体的に言えば、買いなら800万テル、借りるなら月8万テル。つまり、買うなら大金貨8枚、借りるなら月に金貨8枚を支払わねばならない。
その上、かなり古い家らしく所々ボロが来ているらしい。
もう1つは、町の出入り口の近くの物件。間取りは3LDK。
ギルドからは遠くなるが、町から出たり入ったりはスムーズにできるようになる。
他に目立った良い所はないが、この家は割と最近に建てられているため新しい。
また、設備も整っていて暮らしに便利と言った感じだ。
しかも、この物件はそこまで値が張らない。
買いなら500万テル、借りるなら月5万テル。この場合、買うなら大金貨5枚、借りるなら月に金貨5枚を払う。
エリナとクレアの意見も聞いてみようと思ったが、
「ソウマ様とご一緒できるならどこでも構いません」
と言ってまったく何の参考にもならなかった。
仕方がないのでゼキエーレの聞いてみると、
『どうせこれから人が増えるんだ。もっと広く、大きな家を考えとけ。例えばそうだな……城とか!』
なんて、アホなことを抜かす始末。
誰の意見も参考にならない。
というか、俺の所持金は101万1000テルである。
家を買うなんて言える程持っていないのだ。
借りるにしても、食べ物、衣服、家具や武器防具までありとあらゆる場面でお金は必要になってくる。
あまり家賃の高い物件を選んでしまっては、この先大変になる可能性も……。
ホブゴブリンを倒した(?)ことで追加報酬の1万テルを手に入れたが、依頼の成功報酬はたったの1000テル。
これで暮らしていけと言うのは、無理があり過ぎる。
だがしかし!
こんな所で節約生活なんてしてられない。
何故なら、俺は神様の代わりに人生を楽しむと決めたのだ。
お金のことで振り回されていては、楽しむとか言ってられなくなる。
使う時はバババッと使って、溜める時はとことん溜める。
これからの俺のお金の使い方、これをモットーにして生きて行こう。
「決めた。ここを貸家として契約しようか」
「こちらの物件ですね。では、契約書の記入と身分を証明できるものの提示をお願いします」
こうして、不動産にて家を借りる契約を始めた。
名前やら年齢やらを書き、身分証明書にはギルドカードを渡した。
まだFランク冒険者なので一瞬怪しがれたが、契約の手数料込みで10万テルを払うと職員は驚き、次に安心と言った表情で俺を見た。
経済的に余裕のないのがFランク冒険者だ。心配されるのもしょうがない。
「契約の更新は2年後です。それまでは、月のはじめに家賃を払っていただければ問題はありません」
「2年後に、またここで。という訳だな」
「その通りです。では、これからよろしくお願いします」
「あぁ、よろしく」
もう外は日が落ちきって、辺りは真っ暗だ。
そんな中で、不動産の職員と熱い握手を交わした。
契約相手と握手をするのは、誠意をもって相手を尊重するということ。
信頼……とまでは行かずとも、信用はしてくれている。
その後店を出て、最初に思ったことはこれだ。
「眠い」
速攻でマイホームのある場所を目指し、着いた瞬間に唯一のベットにダイブして眠りました。
――食です。
美味しい物食べたい。




