第11話 初めての成功報酬
お金がもらえる。やったね!
「も、戻った」
「あ、お帰りなさいませソウマさ、ん!? どうしたんですか、その真っ赤な体!」
ゴブリンの巣穴から無事に脱出し、ギルドへと帰ってきた。
アメリは声で俺と分かったようだが、顔を上げてビックリといった顔をしている。
それもそうだろう。全身を赤く染め切った男が受付の前に立っているのだから。
そう言えば、帰る途中には一切襲われなかった。
不思議に思ってゼキエーレに聞いてみると、ホブゴブリンの臭いが染みついた俺を警戒していると言う。
臭いが染みついているという辺りでかなりショックを受けた。
「魔物の血を浴びてしまって――」
「それなら裏にシャワー室がありますから、早く体を流してください!」
「わ、分かった。分かったから引っ張るな。受付を飛び越えるのはちょっとマズイって」
この後、アメリに引っ張られ脱衣所まで移動。
服を脱げと強要され、断れる雰囲気でもなかったので大人しく服を脱いだ。
ただ、最後の抵抗として下は脱がなかった。
これ以上は限界です。
「……」
「どうかしたか? って、うわっ! 腹筋が割れすぎてヤバイ!」
「ハッ、いえ、見てません。見てませんよ。私は男の人の体をこんな近くで見たことなくて興味深いなぁ、なんて思ってませんから!!」
聞いてませんから!
アメリが自滅しつつも、俺はシャワー室へと入り体中にこびりついた血や臭いを落とした。
もちろん、シャワーを浴びる前に下は脱いだ。脱いでから浴びた。
俺が浴び終わったのを見計らい、アメリが布を持ってきてくれた。
どうやら、これで体を拭けと言うことらしい。
気が利いて、美人で、仕事の出来る女性か……きっと色々な人の憧れとなっているんだろうなぁ。
「右腕が全体的に火傷しているけど……痛くない。一体どういう?」
シャワーを浴びながらそう思った。
ホブゴブリンとの戦闘において、俺は右腕の広範囲を火傷した。
仕方のないことだったと理解しているので気に止めてなかったのだが、シャワーを浴びても痛くも痒くもないので不思議に思ったのだ。
ゼキエーレ先輩に聞いても、分からない、の一点張り。何も教えてくれない。
神様でも分からないことあるんだな……。
「さて、シャワーも浴び終わった。依頼の話をしようか」
「はい。今回ソウマさんが受けた依頼は<ゴブリン5匹の討伐>です。それでは、ギルドカードの提示をお願いします」
着替え終わり、再び受付でアメリ仕事の話をする。
この世界ではお湯でシャワーではなく水だったが、ちゃんとシャワーがシャワーしていたのに感動した。
そんな気持ちを抱えつつ、懐からギルドカードを取り出すフリをして異空間倉庫から出して手渡した。
アメリは俺が冒険者になった時と同様に、良く分からない機械へとカードを通した。
そのままカードを返してくれるのかと思いきや、アメリが目を見開き機会を見つめたまま硬直して動かない。
どうかしたのか、と聞いても反応を示さず、完全に固まってしまっている。
「これ、え、でも、これって……私、目が悪くはないかったと思ったのだけれど。ゴブリン討伐数36? それに、ホブゴブリン討伐数1!? 依頼はゴブリン討伐だったのに、なんで……?」
アメリがフリーズから解放されたと思ったら、今度はブツブツとそんなことを言い始めた。
それも気になるが、ギルドカードって討伐した魔物の名前と数が自動的にメモされるんだな。
メッチャ便利ですやん。身分証明書にもなりそうだし、有能だな。
「あぁ、それか。ゴブリンの巣穴を見つけたから入ったら、そのホブゴブリンがいたんだ。……でも、俺倒してないよなぁ」
「え? 倒してない?」
「気にしないでくれ。考え事をしてるだけだ」
「は、はぁ……」
この時、俺はホブゴブリンとの戦いを思い出していた。
一方的に殺されるはずだったあの戦い。スキルで己を強化しても、もしかしたら勝てなかったかもしれない。
しかも、あの突然吹き始めた風で俺は気絶してしまったはずだ。止めを刺す前に。
なぁ、ゼキエーレ。聞き忘れてたけど、あの時何があったんだ?
『何もなかったさ。あれはきっと、あの場の魔力が異常反応を起こして暴走しただけだろう』
本当か?
黒い魔法陣のようなものが見えた気がしたんだが。
ゼキエーレ、嘘はついてないよな。俺はお前を信じるぞ。
『……本当だ』
そっか。なら、信じる。
意識を心の中からゆっくりと現実へ戻していく。
ボーっとしてしまったので心配したが、アメリはまだお悩み中らしい。
「なぁ、アメリ。報酬をもらいたいんだが」
「そんなははずは……へ? あ、はい! すいませんでした。取り乱してしまって。依頼の完了を確認しましたので、成功報酬1000テルです」
テル? テルとは、この世界のお金の単位だろうか。
Heyゼキエーレ!
『私をどっかの人工知能と同じ扱いをするな。それで起動するのはリンゴ産の薄い板の中の住人だけだ……はぁ、分かったよく聞け』
ゼキエーレ先生によって説明されたことをまとめた。
詳しく教えてもらったが、かなり長かった。
その間俺が棒立ちしているのかと思うと、我ながら気持ち悪い。
―――――――――――
お金の単位:テル
1テル … 鉄貨(屑鉄貨)1枚
10 … 銅貨1枚
100 … 大銅貨1枚
1000 … 銀貨1枚
10000 … 金貨1枚
1000000 … 大金貨1枚
10000000 … 白金貨1枚
―――――――――――
つまり、ゴブリン5匹倒して1000テル、銀貨1枚分だ。
この世界の物価やら何やらを知らない俺からすれば高い低いが言えないが、銀貨たった1枚と言われると不釣り合いな気はする。
そう思いながら俺はアメリから銀貨1枚を受け取った。
たった1枚だ。軽く、片手ですっぽりと覆えてしまう。
金の重みを全然感じない。まるで100円玉だな。
『ちなみに、生活費として入れておいた金額は大金貨1枚だ』
大金貨……だと……!?
それはつまり、100万テルが異空間倉庫には入っているというのか!
『お前がどれだけ生活費に金をかけているか分からなかったから。取り敢えず、食う、寝る、着るに困らない程度は入れておいた。使うも使わないもお前次第だ』
勝った。
俺の異世界生活、完全勝利。
パーフェクトだ、ゼキエーレ。
『あ、ありがとう?』
なんてコントを心の中でやっていると、アメリが声を掛けて来た。
「ソウマさん? ソウマさん!」
「おっと、悪い。ボーっとしていた」
「それはいいですが、これ、受け取ってください」
「これは……金貨? なんだこれ」
手渡されたのはギルドカードと、もうひとつが金貨1枚だった。
俺が疑問を口にすると、アメリは苦笑いでこう答えた。
「やっぱり聞いてなかったんですね。それはホブゴブリンの討伐報酬です」
「討伐報酬だと? 依頼は受けていなかったはずだが」
「最近、ゴブリン達の動きが活発でして……ここだけの話、魔王を名乗る魔族が現れたらしく、その配下としてホブゴブリンが暴れまわっているらしいですよ」
何となしにアメリの話に耳を傾けていたが、聞き逃せないワードが出て来たな。
――魔王。
異世界ファンタジーのド王道であり、ファンタジーというジャンルの物語ではラスボルを担いやすい。
いわゆる、人類の敵、である。
薄々思っていたが、この世界にもいるんだな、魔王。
しかし、そうか。魔王が現れたのか。
放っておくも良し、倒しに行くも良し、だが……。
「情報ありがとう。そういう事なら、ありがたく受けて取っておこう」
「いえいえ、仕事ですので……その、余計なお世話かもしれませんが、次回からはできるだけ討伐した魔物を持って帰ってくることをオススメします」
「……と言うと?」
「討伐した魔物は冒険者ギルドにて買い取りをしております。なので、依頼の成功報酬に加えて買取額を上乗せすることができます。つまり、2倍お得ってことですね!」
力強くアメリがそう言う。
いや、失念していた。
確かに、魔物を討伐したのだから持って帰るのはファンタジー世界の常識だ。
ホブゴブリンの登場や、謎の爆風、そして美少女2人というイベントの大盤振る舞いだったので、完全に頭から離れていた。
次は、絶対に持って帰ってこよう。
俺には異空間倉庫という能力があるんだ。
解体なんてせずに、そのまま持って帰ってこようか。
「他には何かございませんか?」
「……家を探しているんだが、家はどこで借りれる? または、買えるんだ?」
「家、ですか? 不動産なら、ギルドを出て左に進んでいただいて、パン屋を右に曲がってすぐです。そこまで距離は離れていませんので、道に迷うことはないと思います」
「分かった。今から行ってくる。またすぐに顔を出すかもしれない。じゃあな」
「はい。依頼、ご苦労様でした。ごゆっくりお体をお休めください」
俺は踵を返し、ギルドを出ていく。
成功報酬と討伐報酬をポケットに入れながら異空間倉庫へとしまう。
外に出ると、待っていてくれたエリナとクレアが駆け寄ってきた。
「お帰りです」
「お帰りなさいませ」
ケモ耳美少女と普通の美少女に「お帰り」と言ってもらえるなんて、素晴らし過ぎる。
俺は今、初めて神様に感謝したかもしれない。
『初めてかよ!』
悪かったって。
『それはいいが……お前、ギルドの娘の前だと態度が大きくなるな。何だ、落とすのか?』
バッ、バッカ野郎! そんなつもりはないやい!
適当なこと言ってんじゃねぇよ、この、バーカバーカ。
『子供かよ……』
後書きって書くことなくないですかね?(突然の暴露)
もし小説書いてる人が居たら、何書いてるのか聞きたいなぁ|д゜)チラッ




