第0話 魂を受け継ぐらしい
0話はとても短いですし、あらすじ通りの展開です。
正直読まなくても大丈夫です。
夢を見た。
どんな夢かいうと、誰とも知らない人にひたすら話しかけられる夢。
内容は……こんな感じだったかな。
『聞こえるかい、私の息子よ』
それは男の声のように聞こえた。
『私の声が聞こえていたなら、お願い事を聞いてほしい』
懇願するように話している。
そんな相手に答えようとするが、声がでなかった。
『息子よ。お前の命は後5年も経たずに終わってしまう』
この夢を見ている時、俺は20歳。大学には行っておらず、かなりのブラック会社で働いていた。6時30分に出勤し、23時過ぎに帰宅、休憩は……あったかな? その後は直ぐに寝ないと睡眠不足で仕事にならない。え? 残業手当?? ないけど、当たり前でしょ。
そんな人生を送っていた。だからかもしれない。あと5年も経たずに死ぬって言われたのは。
過労死、ってやつなんだろうさ。偶に聞く話であるけど、まさか自分がなるとは思わなかった。
『だが、もし私の願いを聞いてくれるなら、その命、80年は持たせよう』
そんな俺にとって、この申し出はとてもありがたいものだった。
もう直ぐ死ぬ、けどお願い聞いてくれたら延命させてあげる。なんて、余程の事でもない限り誰でも受けるだろう。
『願いとは、私が今いる世界で私の代わりに生きてほしい。何をしろとは言わないが、できるだけ楽しく、幸せを心がけて生き抜いてほしい』
お願いと言う割にはアバウトで、良く分からない内容だった。しかし、何だか不思議なニュアンスを含んでいたようにも感じる。
『つまり、私の魂を受け継ぎ、生まれ直してほしい。お前の立場から言えば、異世界へ』
異世界、か。なんだかラノベチックになってきた気がする。よく見るストーリーで、異世界転生。悪くない。
『多くの人と交われ、美しい景色を見ろ、世界を巡れ、命まで賭ける必要はない。楽しめばいいんだ』
やけに楽しめを押してくる。本当にそれだけが目的なのだと、直接的に言っているんだな。
『恋をしろ、他人を愛せ、友をつくり、居場所を持て。自由に生きるんだ。私にはできなかった、自由な人生を謳歌してくれ』
人生を謳歌、できるならやってみたい。
『私の名はゼキエーレ。さぁ、新しい人生を始めよう――』
そこまで言うと、声は遠のいて行き聞こえなくなった。すると、目が覚め、楽しくもない一日が始まったのだ。
あれは一体なんだったのだろうか。あまりに突拍子もなく、信頼性に欠ける話。どうにも胡散臭い上に、夢は夢だ。白昼夢というのもあるが、あれはちょっと違うと思う。
でも、もし本当に異世界に転生できるとしたら、俺は迷わず行くだろう。今の人生が楽しいとは絶対言わないし、異世界が楽しくないとも絶対言わない。
今のままでは過労死してしまうと言うならば、いいだろう、願いを聞いてやろじゃないか。




