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灰の魔法使い  作者: 遥夕
3/3

1話 差し込む光と這い寄る影

活動報告にも記載したとうり、不定期に日曜更新になります!すみませんでした…。


ここは、クロッカスより東。リースの森への道に私たちはいた。


「さて、どうしようか」

灰と化した、と言われても一体何を調査すればいいのか。リンデルさんは具体的には言ってくれなかった。

あれから2日、できる限りの書物を見直し、リースの森の調査報告書にも目を通した。しかし、その件があってから1度も調査されてない事もあり、目新しい情報は無かった。だから見るもの全てが新鮮だ。


目先のその森は一見普通の青い森に見える。が、違うのだ。森の奥へと進めば進むほど"白い木"は増えてゆく。風が吹けども木漏れ日は揺れず、鳥のさえずりも聞こえやしない。ただ、自分たちの足音だけが響いている。


「これは…少し気味が悪いね」

そう。その通りだ、雰囲気もだが、私の魔法と似すぎて気味が悪い。

ただ……崩れていないのが気になる。"灰"というものならばそう、崩れ去ってしまうものなのだろう。


「さなえ」

そうではないとすれば灰ではないのか。


「ねぇ、さなえ」

或いは……?


「さなえってば」


「あ……ごめん、考え事してて」

「うそ、途中からわざとだったでしょ?」

あれ、バレてました?


「だから、ごめんって」

クスッと笑うと、困ったような顔をして笑ってくれた。


「あ、いやそれでさ」


気づくともう大分奥まで来ていて、そう。木々の隙間から少し見えていた。



「あの木だけ、まだ生きてる」



10mはあろうかという1本の青い木だ。なぜここに来るまで気づかなかったのか逆に不思議で、少し周りが開けている。この森は…こんなに狭かっただろうか?


その木の根本には…石版……?


「っ……!!」


その周りに、


影がいた。


形を為さぬその"カゲ"は光さえ遮る、言わば絶対的な闇。妖精や他種族、そういう域を超えた、そこにあってはならない心を持たない存在。黒く、ゆらゆらと揺れ、地面から静かに燃えるように形を作りながら現れて。

ゆっくりと近づくその"敵"を


ーー屠る


杖を素早く引き抜き叫ぶのだ。


魔術を使う時には見せない瞳。その奇蹟、魔法だけを扱うときのみ解放する黒百合の(エインズエリアス)。美しく光る紫色の目から放出される魔力(マナ)の量は並のものと比ではない。


悠斗は攻撃を出来る魔術を修めていない。だから私が、



やらねば。


「グレイリス……!」


カゲの敵意は明らかだ。しかし私の静かな殺意も、同じだった。

伸びる影を塵にして、残るのは木々の間からこぼれた光。私の魔法で対応できる敵で良かった。そうホッとしたと同時に、揺れるその光が何故だか、とても暖かく感じた。


「さなえっ…怪我は?」

汗を浮かべ、ひどく心配した顔でゆうとが言う。

自分も怖かったろうに……


私はゆっくりと振り返り言うのだ、

「大丈夫、なんともない」

と。


これが…この先、戦いが続く限り終わらないのだと、杖を振り続けなければならないのだと、ただ漠然とした不安と焦燥感のなかで、暖かな光がもう1つ見えた。


自然と微笑めばその先に、石版があった。

目線で追うと悠斗が読み上げる。


「あぁ、うん。これはバイエルンの言葉か、んーと……この力がいつか、終結に繋がるとここに願う、あれ、裏にもなにか」


思わず覗き込む、そこには

「これは……もしかしてリスケル!?」

ついこの前まで自分が紙に向かってしかめっ面をしながらかいていたものと似ていたからすぐにわかった。


「リースの森にあるだなんて……私はてっきり自らで復活させるものだと思ってた」

手で軽くなぞるように触れる。びっしりとかかれた術式が白く光り、私たちを包んだ。と、思えば粒となり散って辺りを照らし、それが紡いだ大きな光が悠斗に向かい弾けた。


ゆうと…?


「ゆうと!その……大丈夫?」


変わりは、見た目の変わりは無かった。だが、ゆうとに向かって光が弾ける、それが意味することは……


静かに息をゆっくりと吸い込んで

「リスケル」



……何も起こらない。



「はぁ〜びっくりした、まさかね」


へへっと笑ってみせるいたずらなその顔は、少し、少しだけ悲しそうに見えた。けど、




ーー安心した



少しだけね。





「それにしても、こんな木とか、石版があるなんて知らなかったな」

沈黙を破ったのはケロッとした悠斗の声だった。


確かに。リースの森の書物に石版があるなど書いてあっただろうか?

記憶にはない、見つけられていなかっただけか……それとも、私たちが偶然見つけたのだろうか。


「もしかして、さなえのグレイリスと、こう……共鳴というか、したのかもね」


「共鳴?」


「同じフレイリストだろ?同じ部類の魔術同士、なにか響きあったのかなって。さなえはなにか感じたものとかは無かった?」


感じたもの……

「魔術じゃなくて"魔法"ね。私は特に……何も無かったよ」


「そっか、とりあえずはお手上げだなぁ。どうする?調べてから戻る?」


悩んだ末、気づけば空は茜色に染まっていた。


「いや、これ以上日が沈んでも困るし、今回のことをまとめて報告しよう」


「了解」



❀✿❀



「はぁ〜」

本がぎっしり入った本棚が並ぶ、一言でいうならば書斎。そこに緑色の目をした赤髪の少年が難しい顔をしながら机に向かっていた。


「んー!上手く言葉に出来ないなぁ」


よく見れば本棚のあちらこちらに、なにかの剥製や魔術に使うであろう触媒が見える。


「……会ったら分かるかな」



にやり、と笑って言った。



「フレイリストを……生まれ持つ子に」


少年の後ろの窓から差し込む夕方の日が

この書斎をより一層、怪しく彩っていた。




















1話分の小説の長さってどれくらいだ…と模索しながら書いております。今回は区切りが良かったのでここでしめました。もう少し勉強しますm(_ _)m

あと、黒百合の瞳がエインズエリアスです。瞳がエインズエリアスという名であるわけではありません!どうやってやるんだこれ!

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