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復活の栄坂  作者: しか
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野球部の危機

「今年もダメか…」

「もう栄高の時代は終わったんだな」

スタンドからはため息や落胆の声が聞こえてくる。

俺たち栄坂学園高校野球部の試合、4回が終わったところで19対0、相手は特に強豪というわけではない。それなのにこの点差だ。


「さあ、最後の攻撃だ、声出していくぞ!」


キャプテンが声を出しているが俺は全くモチベーションが上がらない。


〜4番 キャッチャー 横山くん〜


だが先輩たちももう最後だからと一生懸命声を出しているので俺も最後まで笑顔で頑張ろうと思った。


「ホームラン打ってきますね」

「おう、頼んだぞ!」


点差が点差なので俺が一本打ったところで大して変わらないのだが、やはり最後だからと諦めているのか、キャプテンも笑顔で送り出してくれた。俺は打席に入り、深呼吸をした。


「よっしゃいくぞ!!!」


この夏最後の打席が始まった…。








「この夏の栄坂学園高校は村岡工業高校との一回戦、先発三年生の安野くんが初回から打ち込まれ4回までに19失点、一方の打線も五回に4番二年生の横山くんがソロホームランを放つもその後の反撃虚しく、5回コールド19対1で敗れました。なお今年で栄坂高校は徐々に人数を減らしてきた野球特待生制度を完全廃止し、野球部の監督、コーチなどの指導者も全て解雇する方針です。」


「え…」


俺はたまたまテレビをつけていたらながれてきた夕方のニュースをみて言葉を失った。するといきなり電話がかかってきた。


「もしもし横山です」

「おい修也、夕方のニュース見たか?」

「佐竹か、あぁ見た。よりによって俺らの代か…」

「俺、野球辞めるわ」

「はぁ!?何言ってんだよ!」

「だって勝てない野球部にいたってしょうがないだろ?俺は勝って甲子園に出るために栄坂に入ったのに、監督もいないんじゃ話にならない!お前も少し考えたらどうだ?」

「…だからと言って俺は…」

「まあそうだろうな、お前はやめないだろうよ。一応次のキャプテンになるだろうお前には言っておくことにしたんだ。俺の分まで頑張ってくれと言うつもりはないが応援はしてるよ、じゃあな」


電話を切ると俺は放心状態だった。

こうして俺と小学校からのバッテリーだった佐竹を皮切りに多くの野球部員が野球部を辞め、結局二年生7人一年生1人だけになってしまった。これでは試合もできない。








俺は次の日学校に着くとすぐに学長先生に直訴しに行った。


「失礼します。野球部キャプテンの横山です。学長先生、野球特待生制度廃止を見直してくれませんか」


今いる学長先生は二代目で、50代前半のオバちゃんだ。なんでもこの人が学長になった時からだんだんと野球部に力をいれなくなったらしい。先生はため息まじりに言った。


「そう言われてもねぇ、もう決まってしまったことですし、簡単には戻せません」

「じゃあ同窓会には言ってあるんですか?」

「えぇ、そもそも特待生廃止を推したのは同窓会の会長ですよ。結果が出ない野球部より、勉強する子達にお金を使ってくれと言うことでしたので」

「そんな…」


そういえば今年から同窓会長が野球部出身から特進生出身に代わったのか、まあ代えたのは学長だろうけど。


「じゃあ結果が出たらまた戻してくれるのですか?」

「それはもちろんです。我が校の名前が全国に広がるのですから、甲子園に出たら考えましょう」

「そのためには監督が必要なので、監督を戻してもらえませんか?」

「それは出来ません、もう監督は他の高校へ行ってしまわれましたので」

「そうですか…失礼しました」








はぁ、前の学長先生のままだったらよかったのに…

ないものねだりをしていても仕方がないので、俺は朝練しにグラウンドへ向かう。みんな素振りをしていた


「みんな悪い、残念ながら学長先生の説得は無理だった」

「あの頑固ババアに説得は無理だよ、仕方ないさ」

「あぁそうだな、だが一つ口約束だが言わせてきた、甲子園に出れば考えてくれるらしい」

「でも俺たちの代にはいい一年生が入ってこないし監督も無しだろ?意味ないんじゃないか?」

「いや、秋の大会で勝って春のセンバツの切符をとればギリギリ間に合う」

「でも8人しかいないぜ?」

「それは…」


考えてなかったとは言えない。すると、1年の深山が言った。


「僕の学年の特進生に怪物がいますよ。元日本代表です!」

「「ええ!?」」


みんな驚いてしまった。


「よし、じゃあ明日深山と俺で勧誘に行くか」

「わかりました!」


こうして俺たちは野球部存続のための一歩を踏み出した。

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