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欠月歩行  作者: 山田 信 (ヤマダ シノ)
第1章 新月編
2/8

1-1 「美月覚醒」(リライト前)

目を覚ますとそこは見知らぬ異世界だった。

なんてことは起こることもなく、私、山神美月(やまがみ みづき)はありふれた朝を迎えた。仮にそうなってしまったとしても、そんな非日常は願い下げだ。

他愛もないことを考えながら朝支度に取り掛かる。

今日はいつもより起きる時間が遅かったからか、体がやけにだるい。

現在の時刻は8時前。いつもより1時間も余計に寝ていたことになる。

道理でね、と自問自答に結論を出すと洗面台に溜めた水に顔を突っ込む。

なぜ高校2年生の私がこんなにも優雅なモーニングを過ごしているかといえば、高校生活の目玉であり、唯一の良心的イベント、「夏休み」の真っ只中であるからだ。

私の記憶が正しければ、今日は

平成24年8月10日。

夏休みに入って第3週といったところか。

鏡張りの棚を開けると歯ブラシと歯磨き粉に手をかける。

いつものように右手で歯ブラシを持つ。

そのとき妙な違和感を右手に感じた。触覚が麻痺しているかのように、歯ブラシの質量をうまく感じ取れないのだ。

寝違えただろうか?

なんとなく左手に持ちかえ、気にすることなく黙々と磨き始める。

一通り洗面台での用事を済ませると居間の椅子に腰掛け、テレビリモコンの一番大きなボタンをプッシュ。

まさに夏休みの暇を弄ぶ高校生といった感じの平和な絵面である。今日は何して過ごそうかと今日1日の予定を思案しながらテレビの方に目を向ける。

丁度8時になったようで、情報番組のオープニングが軽快なBGMと共に始まり、メインMCと思われる男性がはっきりとこう告げた。


「おはようございます。

今日も始まりました、しろくまニュース。

早速ですが、

本日、平成26年9月16日は競馬の日ということで____________」


平成26年9月16日。


頭で考え出す前に不気味な汗が身体中から吹き出ていた。

9月16日?

いや、それよりも。

平成26年だって?

そんな馬鹿な。

遅れて回り出した頭が猛スピードで現状の整理を始める。

記憶力は自慢できるほど良くないが、1ヶ月以上も日付を間違えるほどひどいものではないし、年を忘れるなんてもってのほかだ。

だが、確かにテレビのスピーカーからはこう流れた。2014年の9月16日だと。

それが本当だとしたら自分はここ2年間何をしていたというのだ。

「これは確かめてみないと。」

だらだら流れる冷や汗を手の甲で拭うと、椅子に掛けてあった制服に袖を通した。




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