プロローグ(リライト前)
なんで。
途切れ途切れの意識のまま、必死に左手で右腕の付け根を握る。さっきまで「あったはず」の右腕の。
なんの役にも立たない鮮血と意識をしつこく抉る激痛は、傷口を抑えたところで止まるはずもなく、それどころかますます勢いを増してとめどなく溢れ出す。
なんでだ。
自分のものとは思えないほどの多量の赤黒い液体を撒き散らしながら、答えのない疑問を自分にぶつける。
どうしてこうなった。
どうして。
「どうして______」
プツン。
身体を動かしていた不可視の糸が切れた音がした。
左肩から勢いよく倒れこむ。
それだけに留まらず、視界が暗闇へとフェードアウトする。
ゆっくり、ゆるりゆるりとけれど確実に世界が狭まっていく。
しかし、完全な真っ暗になることはなく、さっきまでとは全く違う光景を私に見せた。
血を流して地面に突っ伏している少女。
私だ。
いつもは鏡でしか見ることのない自分の四肢、
いや、「三肢」を見下ろす。
しかしこの状況がいつまでも続くはずもない。
思った通り、さっきまで感じていた意識消失の衝撃がもう一度駆け抜ける。
今度こそ死ぬ。
己の最期を悟り、必死に意識を繋いで自分の身体を記憶に焼き付けるように見つめる。
さよなら。私。
声にならない声を自分にかけ、惜しむように目を閉じた。
じゃあな。オレ。
え。
咄嗟に開いた目の見つめる先に映ったのは、
この声は___
立ったまま不敵な笑みを浮かべる少女。
間違いない___
私だ。