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ラウラの猛攻


「負けましたよ、タクヤ」


「おう、ありがとな」


 ステラって、腹黒いんだな………。


 さっきの試合は明らかにステラの勝利だ。それに審判の宣言がもう少し遅ければ、彼女が降伏しようとしても関係なしにステラの勝利となっていた事だろう。ヒヤヒヤしたが、これで予定通りに副将の戦いとなる。


 ここでラウラが負ければ――――――次は、俺の出番だ。


 フードをかぶったまま、相手のチームの席を睨みつける。エリックたちのチームの方では、意識を失って担架で運ばれるあの魔術師の傍らで、エリックが副将として出場する男を怒鳴りつけているようだった。


 確かあいつは、最初にエリックが馬鹿にしてきた時も一緒にいたな。試合開始前にも一緒にいた大男だ。あいつがラウラの対戦相手という事なんだろう。


「次はお姉ちゃんの出番だねっ」


「頼んだぜ、お姉ちゃん」


「えへへっ、タクヤのために頑張って負けてくるねっ!」


 普通なら勝ってほしいところだが、ここで勝利してしまうと俺の出番がなくなり、エリックの野郎を半殺しにできなくなってしまう。そのため、ラウラにはステラと同じくわざと負けてもらう予定である。


 もちろん、いきなり降伏してわざと負けるのではなく、相手を半殺しにしてプライドを粉々にしてからだ。


 楽しそうに笑いながらウインクしたラウラは、席から立ち上がって俺の肩に手を伸ばして来たかと思うと、そのまま両手を絡み付かせて抱き付いてきた。薄れていた彼女の甘い匂いが一気に濃くなり、ふわふわするラウラの赤毛が俺の頬に触れる。


「頑張れよ、お姉ちゃん」


「うんっ。タクヤのためだもん」


 俺も彼女を抱き締めつつ、静かにラウラの頭を撫でた。


 相手の座席の方からは、大剣を手にした大男が歩き始めていた。ラウラの対戦相手である。得物はあの大剣だけのようで、それ以外に武器を持っている様子はない。魔術を使ってくるようなタイプというよりも純粋に剣術だけで挑んできそうな相手だが、見た目で判断すれば相手の選手たちの二の舞である。


 格下でも、侮ってはならない。


 ラウラの柔らかい手が、静かに俺の頭を撫でた。そしてもう一度微笑んでから踵を返し、腰のホルスターに収まる2丁のキャリコM950へと伸ばす。


 彼女のSMGに装填してあるのも、もちろん9mmのゴム弾である。それに背中に背負っているアンチマテリアルライフル用にも、12.7mmのゴム弾を用意している。だが、こちらで撃たれたらさすがに骨折するんじゃないだろうか。しかも銃剣も取り付けたままである。


 キャリコM950の木製のグリップを彼女の白い手が掴んだ瞬間――――――闘技場の広場の中だけが、凍り付いたような気がした。


 その殺気を感じ取ったのは俺だけだったのだろうか。彼女の場合は相手を焼き尽くすのではない。炎を操るサラマンダーのキメラでありながら、全てを氷つかせてしまうのである。


 かつてラトーニウス騎士団で『絶対零度』と呼ばれた最強の騎士の娘と、最強の転生者の娘として生まれたラウラは、両親から最も獰猛な部分を受け継いでいるのだ。


 俺はラウラが誤って相手を凍死させることがありませんようにと祈りながら、広場へと歩いていくラウラを見守った。








 先ほどの戦いはステラがわざと敗北したとはいえ、実質的に勝利していたのは彼女の方である。前回の大会で優勝しているチームの選手が立て続けに3回も実質的な敗北を喫しているとなれば、まさにこの試合は番狂わせとしか言いようがない。


 エリックのチームが圧倒するだろうと予測していた観客たちも、既にその可能性は低くなっていると判断したのか、つまらない試合を見る態度からまるで猛者同士の決勝戦を見るかのように熱狂し始めていた。


 だが、その観客たちの熱気の中でも、ラウラだけは冷たいままだった。冷気にも似た殺気を纏い、いつも腹違いの弟に甘えている時とは全く違う鋭い目つきになりながら、目の前に立つ大男を睨みつけている。


 周囲が熱狂していても、ラウラまで熱狂してはならない。


 熱は彼女にとって天敵だ。熱くなれば冷静になれなくなる。冷静にならなければ、正確に狙撃は出来ない。それに索敵しても敵を見逃してしまう可能性がある。だから常に冷めていなければならない。冷静で、熱狂とは無縁を維持し続けなければ、ラウラはいつも通りには戦えない。


 それはおそらく、母親からの遺伝なのだろう。彼女の母であるエリス・ハヤカワも氷の魔術の使い手であり、戦闘中に熱狂することは殆ど無く、常にハルバードを手にしながら冷気にも似た殺気を放ち続けていたという。


「ゴードン、頼むぞ! ロゼットみたいに舐めるなよ!!」


「分かってる! ………まったく、ガキ共が」


 無様な試合を3回も見せられた上に、ロゼットの試合では明らかに勝っていた状態で馬鹿にするかのようにわざと降伏され、副将のゴードンは苛立っていた。相手は無名のチームだし、冒険者としての活躍もあまり聞いたことのない初心者たちのチームである。何度もダンジョンの調査を達成し、この闘技場で優勝した経験もあるベテランのチームが、なぜあんな弱小なチームに圧倒されなければならない?


 目の前で睨みつけてくる赤毛の少女を見下ろしながら、ゴードンは息を吐いた。


 この少女も同じだ。防具を全く身に付けず、私服姿のままである。手にしているのはクロスボウのような奇妙な武器だが、これもまた先ほどの少女たちの得物のように轟音を発するのだろう。防具を身に付けないのは、そもそも接近される前にあの飛び道具で敵を殲滅してしまうから、防具を付ける意味がないからという事なのだろうか。


 距離を離せが脅威だが――――――距離を詰めれば、むしろ脆くなる。


 近年は昔のように全身に防具を身に着けるのは時代遅れとされているが、だからといって防具を全く身に付けないのは命取りだ。腕に防具を装着していれば盾の代わりになってくれるし、防具が敵の攻撃を弾いてくれるかもしれない。


 身を守るための装備を持たずに飛び道具を装備するのは間違いではないが、初心者がそんな戦い方をするのは愚の骨頂である。


(ふん、どうせモリガンの連中の真似事だろうよ)


 そう思ったゴードンだったが、目の前に立つラウラの目つきの鋭さに一瞬だけぞっとしてしまう。


 17歳の少女の目つきにしては、あまりにも鋭くて禍々し過ぎるのだ。まるで百戦錬磨の傭兵が得物を引き抜き、殺気を放出しながらこちらを睨みつけているような恐怖を感じてしまう。


『では―――――――試合、開始ッ!』


 その恐怖をかき消すよりも先に、試合が始まってしまった。


 慌てて大剣の柄を両手で掴み、振り上げながら雄叫びを上げるゴードン。威嚇のつもりでわざと雄叫びを上げたのだが、あんなに鋭い目つきをする少女が威嚇で動揺するわけがない。


 ゴードンの剣戟を回避するために右へとジャンプするラウラ。既に剣を振り下ろしていたゴードンは途中でその剣戟をちめることは出来ず、既に彼女が回避を終えた地面へと剣を叩き付ける羽目になる。


 ゴーレムやアラクネの外殻すら断ち切ってしまうほどの一撃を容易く回避したラウラは、目の前の大男が再び大剣で攻撃してくる前に射撃を開始する。


 両手のキャリコM950を向け、フルオート射撃を開始した。ハンドガンなどに使われる9mm弾はアサルトライフルやPDWの弾丸と比べると貫通力や破壊力には劣るが、非常に小型であり、マガジンの中に大量に入れておき易いのだ。一般的なアサルトライフルのマガジンの中の弾薬は20発から30発なのだが、それに対してラウラのキャリコM950のヘリカルマガジンの中には、50発もの9mmゴム弾が装填されている。


 無数の弾丸で肩や太腿を殴りつけられ、ゴードンは慌てて大剣を引き抜いた。歯を食いしばりながら飛来するゴム弾の痛みに耐えつつ、もう一度剣を振り払い、地面へと叩き付ける。


 だが、その剣が何かに激突した感触が来ることはなかった。素振りしている時と変わらない感覚が来るだけである。


(馬鹿な!? 避けたのか!?)


 激痛と轟音の中で目を見開きながら、ゴードンは驚愕した。防具を一切身に着けていないのならば動きやすいだろうが、それにしても動きが素早過ぎる。鍛え上げられた騎士や傭兵でも今の一撃を躱すのは難しい筈だ。


 しかし、ラウラは普通の人間ではないし、彼女に戦い方を教えた両親たちもただの傭兵などではない。変異を起こしてキメラとなった男の遺伝子と最強の騎士の遺伝子を受け継いで生まれ、その両親に幼少の頃から戦い方を教わっているのである。


 キメラは人間よりも身体能力が高いし、反射神経も人間より優れている。さすがにサキュバスのような馬鹿力は持ち合わせていないものの、サラマンダーのように炎を操り、堅牢な外殻で身を守る能力があるのだ。しかも身体能力が高く、そんな能力を持っている上に強力な銃を使いこなせるのである。


(くそ………それに、この武器は何だ? クロスボウじゃないのか!?)


 先ほどからゴム弾に全身を打ち据えられながら、ゴードンは舌打ちをした。このような武器は見たことがない。轟音を発し、凄まじい弾速で飛んで来る飛び道具が存在するという話は聞いたことがあるし、それをモリガンの傭兵たちが所持していたという話も知っている。一時期各地の鍛冶職人がその飛び道具を再現しようとしたり、本物だと嘘をついて販売したことがあったが、再現しようとした武器はモリガンの傭兵たちの武器の足元にも及ばなかったという。


 もしこの武器が本物ならば、この少女たちはモリガンの傭兵の関係者なのではないか。


 ゴム弾に被弾しながらも、ゴードンは雄叫びを上げながら大剣を振り払う。右から左へと思い切り振り払った一撃だが、はやりこの一撃もあっさりとジャンプされてしまう。


「くそ、動きが速すぎる………!」


 今の一撃を躱した少女を見上げながら驚愕していたゴードンは、着地しようとしていたその赤毛の少女の姿がいきなり薄れたような気がして、目を見開いた。


 噴き上がった蒸気が、やがて空気と同化してしまうかのように、宙を舞っていた赤毛の少女がいきなり消えてしまったのである。


(なっ………!?)


 息を呑むゴードンの周囲で、驚愕した観客たちが騒ぎ始める。観客たちのやかましい声に包まれながら、ゴードンは冷静に魔力の反応を探し始めた。


 あのように姿を消す事が出来る魔術は基本的に光属性である。だが、姿を消すためには長い詠唱を終わらせ、大量の魔力を消費しなければならないという欠点がある。だが、目の前で姿を消した少女は、どちらも済ませていない。第一、大量の魔力を消費する魔術ならば魔力の反応がする筈なのに、何も反応が無いのだ。


 姿は見えない上に、何も反応が無い。


(ば、馬鹿な………! これも魔術なのか………!?)


 こんな魔術は聞いたことがないと焦り始めたゴードンに、先ほどのゴム弾以上の激痛が喰らい付く。


「うっ………ぐぁっ!?」


 まるで、右肩だけを強引にもぎ取られるかのような激痛だ。おそらく今の一撃で骨が折れたのだろう。激痛は全く消えない上に、右腕は動いてくれない。思わず大剣から手を離し、左手で押さえながら飛来した方向を睨みつける。


 飛来した方向には、観客席と壁があるだけだった。だがその何もない空間から金色の小さな管のようなものが排出されたのが見えて、ゴードンは目を見開く。


 少女は、あそこにいる。


 あそこで飛び道具を構え、ゴードンを狙っているのだ。


 キン、と石畳に落下した金属の小さな管が音を立てた直後、今度は左から飛来した轟音と何かが、ゴードンの太腿を直撃する。


「がぁっ……ぐっ、がぁ………!?」


 もう移動していたというのか。


 ガキン、とレバーを引くような音が聞こえたかと思うと、またしてもあの金属の小さな管が、何もない空間から排出される。


(いったいどこから攻撃が………ッ!?)


 どこから攻撃が飛来するのか、分からない。


 必死に魔力の反応を探しながら周囲を見渡すゴードンだが、当然ながら赤毛の少女の姿は見えないし、魔力の反応もない。聞こえてくるのは轟音の残響と、仲間たちからの罵声と、観客たちの歓声ばかりである。


 あの少女は、ゴードンを嬲り殺しにするつもりなのだ。


 頭を撃てば鍛え上げられたゴードンでも気を失うに違いないだが、ラウラはゴードンの頭を狙わず、肩や足ばかりを狙って攻撃してくる。


「ふ、ふざけやがって! このガキ―――――――ギャアッ!?」


 次にゴム弾が喰らい付いたのは、一番最初に被弾し、既に骨折していた右肩であった。しかも骨折したせいで腫れている箇所と全く同じ場所に攻撃を叩き込んできたのである。


 砕けた骨が筋肉に突き刺さり、骨を折られた瞬間よりもしつこくて忌々しい激痛がゴードンの肩を食い荒らす。一撃も攻撃を当てられず、逆に17歳の少女に嬲り殺しにされていると理解したゴードンのプライドには、もう既に亀裂が入っていた。


「ふ、ふざけ―――――――ギャアアアアアアアアア!?」


 次に被弾したのは、左手の小指だった。手の甲の方向へとへし折られた小指を抑えようとするが、右腕が動かないせいで小指を抑える事が出来ない。


 続けざまに今度は骨を折られて動かない右腕に命中する。まるでボクサーが殴りつけるサンドバッグのように揺れる自分の腕を見下ろしながら、ゴードンは絶叫していた。


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ど、どこにいる!? この卑怯者がっ!! 結局モリガンの野郎度と同じ臆病者かよ!?」


 罵倒すれば、更に攻撃が来るだろう。降伏してしまった方が良かったのではないか。


 辛うじて壊れきっていなかったプライドのせいで相手を罵倒してしまったゴードンは、目を見開いて周囲を見渡しながらぶるぶると震え始めた。









 自分の両親を馬鹿にしたのは許せないが、これ以上虐めてしまえばあいつは壊れるか、降伏してしまうだろう。もし降伏してしまえば試合は終了し、タクヤの出番はなくなってしまう。


 最愛の弟にお願いされたのだ。だからここで相手を追い詰めて降伏させるわけにはいかない。


 手足を砕かれて叫ぶ姿をもっと観察していたかったけど、そろそろ降伏させてもらうべきだろう。


 姿を消しながらアンチマテリアルライフルのヘカートⅡを構えていたラウラは、ぶるぶる震えながら周囲を見渡している情けない大男を冷たい目で見つめていた。


 彼女はサラマンダーのキメラでありながら、氷を自由に操る事が出来る。その能力を利用して、空気中の水分を凍らせて氷の粒子を生み出し、それを纏う事によって氷の粒子に光を反射させ、マジックミラーのようにして姿を消す事が出来るのである。


 しかも消費する魔力の量も極めて少ないため、感知するのはかなり難しい。もし仮に敵の転生者が熱で探知しようとしても、その時は粒子の密度を調整すれば探知されることはない。だからラウラは、姿を消した状態で敵を狙撃する事が出来るのだ。


 スコープを必要としないほど優れた視力と、潜水艦のように超音波で敵を探知する能力を併せ持つラウラは、遠距離での狙撃においては既に父を凌駕している。異世界と転生者の変異が生み出した最強の狙撃手スナイパーなのだ。


 ヘカートⅡを背中に背負い、ラウラは絶叫するゴードンに向かって歩き出す。武器を持たずに歩いているだけだというのに、激痛と恐怖にプライドを食い破られたゴードンは全くラウラに気付かない。


(………パパたちを馬鹿にするからよ)


 父親であるリキヤ・ハヤカワは、ラウラとタクヤを小さい頃から大切にしてくれた。幼少の頃はいつも狩りに連れて行ってもらったし、買い物に行けば欲しがっていたおもちゃをいつも買ってくれた。


 ラウラにとって、あの一番最初に生まれたキメラの父親は最高の父親なのだ。それに母であるエリス・ハヤカワも、もう1人の母であるエミリアによく「甘やかし過ぎだ」と咎められていたが、いつも可愛がってくれる優しい母親であった。


 家族やモリガンの傭兵たちを馬鹿にするのは許せない。それに、最愛の弟を馬鹿にする奴も絶対に許さない。


 ラウラにとって、タクヤはただの弟ではないのだ。いつも一緒にいてくれた遊び相手であり、ラウラを助けてくれるヒーローでもあるのだから。


 だからラウラは彼を守るために父から戦い方を教わり強くなろうとしたし、彼に惚れているのである。


 氷の粒子を解除し、そっとゴードンの肩に手を伸ばす。先ほどまで氷の粒子を纏っていたせいで冷たくなっていたラウラの手に触れられたゴードンは、目を見開きながらラウラを見上げてきた。


「お、お前――――――」


「黙りなさい」


 冷たい目つきでゴードンを睨みつけながらラウラが言った直後、ゴードンの肩がいきなり鮮血で作られた結晶のように紅い氷に覆われ始めた。左肩を覆ったそれは背中や下半身を飲み込んでいくと、氷つかせる速度を落としながら今度はゴードンの首を覆っていく。


 徐々に氷漬けになっていくゴードンの目の周りが、彼の涙で濡れ始めた。


「ひ、ひぃっ! な、なんだこれはぁっ!?」


「―――――審判さん」


『な、何でしょうか?』


 氷漬けにされながら泣き叫ぶゴードンを無視しながら、ラウラは弟に甘えている時とは全く違う口調で審判に告げる。


「私、降伏します」


『え!? ラウラ選手もですか!?』


「はい。風邪ひいちゃったみたいですので」


『か、風邪ですか!? でも、ステラ選手みたいに元気そうなんですが………よろしいですか?』


「はい」


「おい、ちょっと待て! 降伏するならこの氷を何とかしてくれぇっ!!」


 ゴードンの体を覆う氷は、まだ止まっていない。もうゴードンの首を飲み込んでしまった鮮血のような氷は少しずつ上に上がり続け、ゴードンの顎を包み込んでしまっている。


 あと30秒くらいで、あの大男は氷漬けにされてしまう事だろう。


『では、ラウラ選手の降伏により、ゴードン選手の勝利となります!』


「おい、頼む! 早くこのこ……お………り―――――――」


 そして、ついにゴードンの声が聞こえなくなった。まだ完全に氷漬けにされたわけではなく、鼻の辺りまで氷漬けにされたせいで喋れなくなってしまったらしいが、もうあの氷を止めることは出来ないだろう。


 恐怖と氷の冷たさで震えながらラウラを見つめるゴードン。だが、ラウラは必死にこちらを見てくるゴードンを見て鼻で笑うと、ヘカートⅡを肩に担ぎながら踵を返す。


「いい気味ね、お馬鹿さん」


 かつて絶対零度と呼ばれていた母親から、彼女は氷属性の魔力と冷たさを受け継いでいる。


 彼女の冷たさは、仲間に武器を向けてくる敵を薙ぎ払うためにあるのだ。


 その氷の餌食となったゴードンはもう真紅の氷に覆われ、紅い銅像のような姿になっていた。




 おまけ


 モリガンの皆さんが闘技場の戦いを見るとこうなる パート4


エリス「きゃあああっ! ラウラが活躍したわ!」


エミリア「姉さん、落ち着け!」


エリス「しかも最後は降伏した相手をちゃんと氷漬けにしてプライドを木端微塵にしてからわざと負けたのね!? 偉いわ、ラウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


カレン「ちょっと、エリスさん! 落ち着いて!」


フィオナ(昔から全然変わってない………)


 完

 


 

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