カノンの八つ当たり
カノンは俺たちにとっての妹分だ。3つ年下の貴族の少女で、次期ドルレアン領領主候補として生まれたため、マナーや勉強の他に戦い方も両親から教わっていた。だから成長するにつれて会って遊ぶ機会もかなり減ったし、会う度にマナーを教わったせいなのか大人びていた。
小さい頃は俺を『お兄ちゃん』と呼んでくれていた妹分なんだが―――――――あんな粗暴な口調のカノンは、今まで一度も見たことがない。
近所の悪ガキと喧嘩になった時は、ラウラと一緒に震えながら俺の後ろに隠れるほど気が弱かったカノンが、ウィルヘルムの直刀を鞘から引き抜いた瞬間に豹変したのだ。
上品だった口調はごろつきのように粗暴になり、今まで習ってきた優雅な剣術とは程遠い荒々しい剣戟を何度も繰り出しては、彼女と対戦することになったアベルを圧倒している。
「ふにゅ………カノンちゃんが怖くなっちゃった………!」
「おいおい………」
剣戟を辛うじて回避したアベルを左手のパンチで殴り飛ばし、怯んだ瞬間に鎖骨へと直刀を振り下ろす。だが、対戦相手のアベルは何度も闘技場で戦った経験のある男だったらしく、その一撃を片手の短剣で何とか受け止めていたようだった。
闘技場のルールは、基本的に相手を殺さなければどんな手を使っても問題ない。だから殺さなければ、剣で手足を斬りおとしてもお咎めなしなのだ。
今の剣戟を受け止めなければ、アベルの左腕はカノンの剣戟で切断されていた事だろう。
「タクヤ、あれが貴族なのですか?」
「ステラちゃん、普通の貴族は違うからね?」
「カノンは特別な貴族なんですね」
確かに特別な貴族だな………。あんな貴族いないよ。
闘技場の試合を見物しに来た観客たちは、普通ならば考えられない冒険者同士の戦いを見下ろし、目を見開いていた。せっかく販売員から購入した飲み物やフライドポテトを購入した客も、それを口に運ぶ途中のまま動きを止め、中央の広場で繰り広げられる戦いを凝視している。
無数の観客たちの眼下で繰り広げられているのは――――――14歳の少女の試合などではなく、ただの八つ当たりであった。
剣戟と共に私怨を振り下ろし、対戦相手となった哀れな冒険者に全く反撃させない。剣戟を受け止めて反撃しようとしても、ドルレアン家の次期領主候補らしからぬ粗暴な左手のボディブローがアベルを打ち据え、彼の反撃を阻害しているのである。
「ほらほら、おっさん! このままだと14歳の女の子に負けちまうぜ!? しかも観客の前でなぁ!」
「くっ………ウグッ!?」
またしても、カノンの左手のボディブローがアベルに直撃する。みぞおちではなく肋骨を殴りつけられたアベルは汗を流しながら片手で腹を抑え、後ずさりする。しかし、いつまでも腹を抑えているわけにはいかない。
この少女は先ほど腕を両断するつもりで刀を振り下ろしてきた。試合が終了した時点で相手が生きていればお咎めなしということは、もし仮に試合の後に致命傷を負った相手が治療が間に合わずに出血で死亡したとしても、その選手に致命傷をお見舞いした対戦相手はお咎めなしなのである。
つまり、この少女は容赦をするつもりがない。手足を斬りおとすつもりで刀を振り下ろしてくるのだ。
肋骨を殴られた程度の痛みで、隙を作るわけにはいかなかった。
しかし、隙を作らないように必死に耐えても、反撃するチャンスが無い。剣戟を受け止めたとしても反撃する前に殴られ、怯んでいる隙に次の攻撃が始まる。いっそこの少女のスタミナが底をつくまで耐えてみるべきだろうかと考えたアベルだったが、先ほどからこの少女の猛攻は全くペースが落ちていない。攻撃を耐え抜くよりも先にこちらが倒れてしまう事だろう。
(く、クソがッ! 俺がこんなガキに………!)
アベルは、ダンジョンの調査よりも闘技場での戦いで活躍しているタイプの冒険者である。特にラトーニウスの闘技場は魔物との戦いよりも対人戦がメインになっているため、他の冒険者よりも対人戦ならば一日の長があるつもりだった。
「アベル、何やってんだ! さっさとぶちのめしちまえ!」
「う、うるせ―――――ぐへっ!?」
「おいおい、仲間と喋ってる場合じゃねえだろ?」
またボディブローを叩き込まれるアベル。このままでは反撃する事すらできずに倒されてしまうに違いない。何とか反撃するには、一旦距離を取るべきだろう。
何度も対人戦を経験したアベルはそう判断し、ボディブローを喰らった腹を抑えながら後へとジャンプする。そしてこの少女が刀を空振りした直後に再接近し、反撃をお見舞いするのだ。
攻撃を回避されて驚愕する少女を想像しながら短剣を構えるアベル。しかし――――――目の前を横切る筈だった少女の直刀は、振り払われる途中で軌道を変えて地面へと突き立てられ、そのまま急迫する少女と共に地面を抉りながら急接近してきたのである。
「!?」
「後ろに下がれば避けられるって思ったかぁ!? ギャハハハハハハハッ!!」
アベルの回避は、もう見切られていたようだ。ウィルヘルムの直刀を地面に突き立て、地面を抉りながら接近してきたカノンは両手で刀の柄を握ると、まるで剣豪が刀を鞘から引き抜くかのように地面から得物を引き抜き、右下から左斜め上へと振り上げた。
刀を引き抜かれた地面が爆音にも似た断末魔をあげる。舞い上がる土の礫の中を駆け抜けた鋭い一太刀が、回避している最中のアベルの胸を掠め、少量の血飛沫を土の欠片の中へと混じらせた。
「ぎゃははっ!」
「ぐぅ………!」
「おいおい、おっさん。しっかりしろよ。あんなに調子に乗ってたんだから、こんなところで年下の女の子に負けちゃったらかなりカッコ悪いぜ?」
「だ、黙れッ!」
「へへへっ。――――――ああ、まだ続けて欲しいね。あたしのストレスはまだ残ってるんだ………」
振り払った刀を引き戻し、まるでヘリコプターのローターのように回転させてから再び地面に突き立てる。
カノンが持つこのウィルヘルムの直刀は、これをドロップしたウィルヘルムの得物と同じ代物ではないものの、リゼットの曲刀と対になる刀である。
風を操るリゼットの曲刀と対になるという事は――――――この得物には、大地を操る力が備わっているという事なのだ。
かつてリゼットのために剣を振るったウィルヘルムは、剣術だけでなく土属性の魔術も得意としていたという。おそらくその得意分野が、この刀に反映されているのだろう。
地面に突き立てていた刀を、またしてもカノンが引き抜く。だがその刀身があらわになった瞬間、彼女と対峙していたアベルだけでなく、座席で試合を見守るエリックやタクヤたちまで目を見開く事になる。
最後の最後までリゼットに従い続けたウィルヘルムの忠誠心のように真っ直ぐだった刀身が、荒々しい漆黒の岩石のようなものに覆われていたのだ。
「――――――グランド・エンチャント」
「なっ………!? と、刀身が―――――――」
日本刀を思わせる細身の刀身は、漆黒の岩石に覆われて荒々しい形状に変貌していた。辛うじて日本刀の刀身のような輪郭は残っているものの、シンプルだった刀身の表面からは不規則に岩石のスパイクが突き出ていて、刃の部分にはノコギリやサバイバルナイフのようなセレーションがある。
刃物と鈍器を組み合わせたような無骨な刀を地面に叩き付けたカノンは、怯えるアベルを見つめながら楽しそうに笑った。
「続けようぜ、おっさん」
「ひぃっ……!?」
続けられるわけがない。回避は見切られていたし、彼女の剣戟を防御すれば反撃が出来なくなってしまう。
しかも、土属性の魔力で得物は強化されている。先ほどと同じように防御できるだろうか。
目の前の少女への恐怖が、ついにアベルのプライドを全て食い破った。
「こ、降参する!」
「あ……? 降参だって?」
今まで以上に強化された剣戟を防ぎ切れる可能性は低い。そんな状態で先ほどと同じ攻撃を繰り返されれば、もうアベルは回避することも出来ないし、防御することも出来なくなってしまう。攻撃されれば確実に傷を負うという状況に追い込まれることになるのだ。
辛うじて防いでいた状態が、辛うじて生きている状態になってしまうという事である。無事に生きて試合を終えることは出来ても、そんな試合が終われば出血が原因で死んでしまうかもしれない。
だから彼は、プライドを対価にすることにしたのだ。
「ふざけやがって。おい、まだあたしのストレスは残ってんだぜ? 最後まで戦えや、クソ野郎」
「ま、待ってくれ! もうやめてくれぇ………!」
「うるせえ。小せえ頃からマナーとか勉強ばっかりやってたせいで、あたしはあんまり遊べなかったんだぞ? お兄ちゃんとは段々会えなくなるし、マンガを買って帰ればお母さんに怒られるし………」
「えっ? お、お嬢ちゃん………?」
明らかにその怒りは、アベルへの怒りではない。勉強やマナーの教育ばかりでまともに遊べなかった幼少期の鬱憤である。
「お母さんの理想には賛成するけどよぉ………もう少し遊ばせろやぁッ!! あたしだって遊びたかったし、男の子と恋もしたかったんだよぉッ! なのに毎日ダンスの練習とかピアノの勉強ばかりで疲れるっつーの! マンガ読んでればお母さんに小言を言われるしよぉ、あたしの味方はお父さんだけだったんだよッ! 読んでても怒られずに済んだのは童話と教科書だけだよ! ふざけんなッ! ――――――おい、おっさん! 子供はもっと遊ばせるべきだよなぁ!?」
母親への怒りなのだろうか。岩石に覆われた刀身を、怯えるアベルに向けながら尋ねるカノン。ここで首を縦に振らなければ、そのまま両断されてしまうに違いない。アベルはぶるぶると震えながら首を縦に振ることにした。
「あ、ああ………俺もそう思う……」
「ああ、そうだろ? まったく………。とりあえず、もう許してやるよ」
カノンがそう言うと、彼女の直刀を覆っていた漆黒の岩石がぼろりと崩れ落ちた。まるで乾燥した泥の塊が剥がれ落ちていくかのように岩石が落下し、再び刀身が日本刀のような形状に戻っていく。
あの恐ろしい刀の餌食にならなくて良かったと安堵したアベルだったが、その安堵と共にやってきたのは、14歳の少女に完敗した上に降参したというみっともない結果であった。
『勝者、カノン選手ッ!』
「おい、アベル! ふざけんな、なんで降参してんだよ!?」
「………」
もう、背後から短剣で攻撃するわけにもいかない。それに彼女はおそらく、それを不意打ちと思う事はないだろう。
背後から今攻撃すれば、確実に今度こそあの刀の餌食になる。憤怒を恐怖が上回っていたせいなのか、アベルは短剣を鞘に戻し、散々殴られた腹を抑えながら仲間の元へと戻る事しかできなかった。
「勝ちましたわ、お兄様っ♪」
元の上品な口調に戻り、座席に座る俺にカノンが抱き付いてくる。幼少期からモリガンの傭兵たちに戦い方を教わっていたのだから、当然ながらカノンの圧勝だった。もし彼女が普通に戦っていたのならば、ここで仲間たちと抱き合ったり、すぐに労っている事だろう。
だが、幼少の頃から一緒に遊んでいた俺たちでも見たことのない粗暴なカノンを目の当たりにしてしまったせいで、俺はすぐに彼女を労うことは出来なかった。ぽかんとしながら椅子に座り、戻ってきて抱き付くカノンをぎこちなく抱きしめる事しかできない。
あんなにストレスたまってたのか………。しかも、読んでも怒られなかった本って教科書か童話だけかよ………。
だからカノンの部屋にマンガに混じって教科書が並んでたんだな。ということは、書庫に保管してあるというマンガたちはカレンさんに内緒で購入したものなんだろうか。
カレンさん、もう少しカノンを遊ばせてあげても良かったんじゃないでしょうか。
「あらあら。お兄様、どうしましたの?」
「い、いや………その、試合お疲れ様。すごかったよ」
「ありがとうございますわ。お兄様たちのために頑張りましたのよ。ふふっ。………うふふふふっ。お兄様って、やっぱりお姉様と同じ匂いがしますわ」
「当たり前だよ。私の弟だもんっ」
「そうですわね。お姉様の大切な弟ですし………」
そう言ったカノンは、今度は隣に座るラウラに抱き付いた。彼女の甘い残り香に包まれながら隣を見てみると、カノンに頬ずりされて困っているラウラの向こうで、次鋒に立候補したナタリアが戦いの準備をしている。
腰に下げられたフィオナちゃん特性のククリナイフからは、既に毒の入ったカートリッジは取り外されている。コンパウンドボウも装備していなかったが、左手に装着されているもう一つの獰猛な武器は、もう点検を終えているようだった。
フィオナちゃんが作った試作型のエアライフルだ。ライフルとはいえ、圧縮空気で従来のクロスボウ用の小型の矢を撃ち出す代物であるが、ハンドガン並みにコンパクトである上に貫通力も高く、腕に装着するから袖の中に隠すことも出来る。射程距離は短めになっているが、暗殺や奇襲に向いている。
1発撃ったら再装填しなければならないが、利点は大量にあるのだ。
「嘘だろ……? なんだよ、あの新人のチームは!?」
「おいおい、もしかしたらエリックの奴が負けるかもしれねえぞ!?」
「番狂わせだッ!」
「おい、急いであのチームを調べろ!」
背後の客席では、観客たちの驚愕する声が聞こえてくる。俺たちはあいつらと違ってまだ無名のパーティーだから、調べようとしても全く情報は出てこないだろう。
さて、次はナタリアの出番だな。
「ナタリア、頼んだぞ」
「任せなさい。瞬殺してあげる」
そう言いながら、彼女は腕に装着したエアライフルに模擬戦用の矢を装填し、サイガ12を背負った。
『続きまして、次鋒の戦いです!』
座席から立ち上がり、肩を回してから広場へと向かって歩き出す。客席からはまだ先鋒の戦いに驚愕する声が聞こえてきたが、ナタリアのこの戦いで彼らは更に驚愕する羽目になる事だろう。
タクヤに作ってもらった新しい相棒にゴム弾を装填したナタリアは、木製のグリップを握りしめながら天井を見上げた。
今から14年前、ネイリンゲンでモリガンの傭兵に救われた彼女は彼らに憧れた。燃え上がる街の中から駆けつけて来て、母親とはぐれてしまった幼いナタリアを救い出してくれたのである。
自分もあの傭兵のように強くなりたいと思ったナタリアは、最初は傭兵を目指そうとしていた。あの時のモリガンの傭兵のように、人々を助けようとしたのである。
だが、魔物の襲撃の件数が激減したことによって傭兵の需要も下がり、母親にも傭兵を反対されたため、冒険者を目指す事にしたのである。
ベテランの冒険者から訓練を受け、今はその傭兵の子供であるハヤカワ姉弟や仲間たちと共に伝説の天秤を目指して旅を続けている。目標とするモリガンの傭兵からは遠ざかってしまったかもしれないが――――――強くなることは出来た。
燃え上がる街の中で助けてくれたリキヤ・ハヤカワという傭兵の敬礼する姿を思い出したナタリアは、天井に開けられた大きな穴を見上げながら微笑んだ。
いつか、タクヤとラウラにお願いしてリキヤに会わせてもらおう。そして、14年前のお礼を直接言うのだ。
あの最強の傭兵は、果たして幼かったナタリアの事を覚えていてくれるだろうか。
「おい、どこ見てんだ?」
「え? ………ああ、ごめんなさいね」
粗暴な声に呼ばれたナタリアは、少しだけ目を細めながらため息をついた。そういえば、今からこの対戦相手と戦わなければならなかったのだ。
「眼中になかったわ」
「何だとぉ!?」
相手のチームの次鋒は、斧を手にした男性だった。手にした斧には傷や砥いだ痕がいくつも残っていることから、あの得物はかなり使い込んだ得物なのだろう。
私服の上に小型の防具を装着するのは他の冒険者と同じである。それ以外の武器は見当たらないから、攻撃手段は斧か魔術程度なのだろう。
いきなり年下の小娘に「眼中にない」と言われた男性が、唇を噛み締めながらナタリアを睨みつける。基本的に冒険者として登録できるのは17歳以上であるため、ナタリアのような年齢の冒険者は基本的に初心者だ。その初心者に眼中にないと言われれば、経験を積んだ冒険者は激怒する事だろう。
経験を積んでいない初心者に、自分の経験を踏みにじられて激昂するベテランは少なくないのだ。
『では――――――試合、始めッ!!』
「この小娘がぁッ!!」
開始早々に斧を振り上げ、正面からナタリアに襲い掛かる男。金属製の斧で攻撃されれば、防具で防御したとしても防具が破壊されるか、防具もろとも骨まで粉砕されてしまうに違いない。
しかし――――――男の雄叫びは、圧縮された空気が噴き出すような音が聞こえた瞬間に消えることになる。
「グヘッ!?」
その攻撃を喰らった瞬間、男は驚愕していた。
目の前の小娘が左手をこちらへと向けたと思ったら、いきなり頭を突き飛ばされたような衝撃と激痛を感じたのだから。
(い、今のは……魔術!? しかし、魔力は感じなかったぞ!?)
どんな攻撃を喰らったのか、まったく理解できない。魔術ならば魔力の気配がするから分かりやすいのだが、今の攻撃は魔術ではないとでもいうのだろうかと混乱を始めてしまう。
男の頭に攻撃を直撃させたのは、ナタリアの左手に装着されたフィオナ製試作型エアライフルであった。装填された模擬戦用の矢が頭に直撃しただけなのだが、ナタリアに侮辱されて激怒していた男は怒りが生み出す陽炎に隠されてしまったかのように、その攻撃がどのような攻撃だったのかを見抜くことは出来なくなっていた。
混乱しているうちに、ナタリアは追撃を開始する。
背中から取り出したのは、ロシア製セミオートマチック式ショットガンのサイガ12。アサルトライフルのようなマガジンを持つショットガンであり、ポンプアクション式のショットガンよりも連射速度が素早いため、凄まじい速度で散弾を敵に叩き付ける事が出来るという強力な代物である。
今装填されているのは模擬戦用のゴム弾であったが、近距離で連射すれば鍛え上げられた冒険者でも容易く気絶するか、骨を折られてしまう事だろう。その獰猛な得物を取り出し、照準を合わせたナタリアは、目の前でまだ混乱している男を冷たい目で見つめながらトリガーを引いた。
「―――――だから、眼中にないって言ったのに」
「ギャッ!?」
大口径のゴム弾が、男の胸元に喰らい付く。胸元をゴム弾に打ち据えられて呻き声を上げる男に、今度は顔面にゴム弾が激突する。
再び頭ががくんと揺れる。照準器を覗き込むナタリアはもう少し連射しようかと思ったのだが、ゴム弾で頭を撃たれた男が白目になり、口からよだれを垂らしながら倒れそうになっていることに気付いたナタリアは、ため息をついてからショットガンを肩に担いだ。
もう勝負が決まってしまったようである。
『そ、そこまでッ!』
1発も攻撃を食わらずに勝負が終わってしまった。
(銃って凄いのね………)
相手の弱さに落胆しつつ銃の性能に驚愕したナタリアは、ため息をつきながら仲間たちの座る座席へと戻っていった。
おまけ
モリガンの皆さんが闘技場の戦いを見るとこうなる パート2
カレン「もう少し………カノンを遊ばせてあげればよかったわ………」
エミリア「うむ……やはり子供は遊ばせるものだ」
ギュンター(お、俺たちの娘があんな粗暴な口調に………!? ど、どうしよう!? 俺のせいなのか!? ま、まさか、俺の遺伝子のせいか!?)
エリス(ナタリアちゃんかぁ………。可愛いなぁ………。今度襲いに行ってみようかしら)
完




