買い物から戻るとこうなる
かつて、ラウラは元気いっぱいのごく普通の女の子だった。殆ど毎日一緒にいるのが当たり前で、ご飯を食べたり、風呂に入ったり、一緒に寝るのは当たり前だった。
それだけならば甘えん坊のお姉ちゃんとして育っていたに違いない。けれどもそんなラウラにヤンデレという厄介な要素を追加したのは―――――――――俺の目の前にいる、レナという1人の少女である。
ラウラがヤンデレになっちゃったのは、幼少の頃に公園で遊んでいた際、いきなりレナが俺に抱き着いてきたことに端を発する。それまではラウラだけの弟だった俺が彼女に取られてしまうかもしれないという危機感が彼女を変えてしまったのだろうか。
きっとラウラは、1人になるのが怖かったのだ。幼少の頃に男たちに連れ去られ、何もできない無力感と絶望を味わった彼女は、俺が一緒にいるということを支えに恐怖に耐え続けていた。あの誘拐事件は俺が道案内代わりに道にばらまいた.44マグナム弾の空の薬莢を頼りに駆けつけてくれた親父たちによってあの事件は解決したけれど、あの事件が原因で彼女は俺に依存するようになってしまっていた。
そんな状態の彼女の目の前で俺がレナに抱き着かれているのを目の当たりにした彼女は、きっとかなりの危機感を感じたのだろう。このままでは、自分の大切な弟がほかの女に奪われてしまう、と。
俺だって成長すれば彼女を作るかもしれない。だからラウラとはいつまでも一緒にはいられない。彼女だって、それを察していた筈だ。察していながら、彼女はそれを拒もうとしていた。
彼女は追い詰められたからヤンデレになってしまったのかもしれない。
「へえ、まだこの街にいたんだ! あ、もしかして近くのダンジョンの調査中?」
「いや、ちょっと用事があってさ」
近くに拠点があるという話はさすがに言えない。こいつに話したら、拠点まで勝手にやってきそうな感じがする。こちらの秘密を口外しないという条件を呑んでくれるなら問題はないんだけど、問題はそんなことをすればラウラが確実にブチギレするということだろう。下手をすれば殺してしまいかねない。
とりあえず適当に誤魔化してさっさと別れよう。まだ食材すら購入できていないし、このまま一緒にいたら帰った後にラウラに問い詰められちまうかもしれない。うん、下手したら確実に部屋に監禁されるので、それを防ぐためにも早めに別れる方が得策だ。
「悪い、そろそろ買い物に行かないと」
「あっ、買い物? じゃあ一緒に行かない?」
……………すいません、それだけは止めてください。
あのさ、お前は俺を殺したいの? というかお姉ちゃんに殺されろってこと?
レナが幼少の頃に俺に抱き着いてから、俺は外で遊ぶことはあまりなくなった。というか、お姉ちゃんが家の外に出してくれなかった。外に出ようとすると「行っちゃダメ」ってとても幼女とは思えないほど冷たい声で止められたし、どこかに行こうとすると必ず問い詰められた。凄まじい場合は一緒についてきたこともある。
ちょっとした監禁状態だったんだ。それがエスカレートした今の状態で監禁されたらどうなると思う? 下手したら一生部屋から出してもらえないかもしれないし、そのままナイフで刺されて殺されるかも……………。
くそ、俺はクーデレ派なのに……………。
というか、ラウラという強力なヤンデレがいる時点でハーレム作るの無理じゃない?
「ごめん、急いでるんだ」
「えー!? いいじゃん、邪魔しないから!」
いや、死にたくないので別れさせてくださいよ!
どうする? 強引に逃げてしまった方がいいか? レナは身軽そうだけど、小さい頃から壁をよじ登ったり、木の上を飛び回る訓練を受けていた俺たちの方がそういった身体能力では明らかに上だ。彼女には悪いけれど、俺も死にたくないし、彼女だって死にたくない筈だ。その方がベストなのではないだろうか。
困っている間に、いつの間にかレナがすぐ近くに来ていた。握っていた俺の手に力を込め、じっと俺の顔を見上げている。
「ねえ、お願い」
「うー……………」
ま、マジかよ……………。
というか、結構しつこいぞこいつ。下手したら断り続けていればずっとついてくるんじゃないだろうか? 今の時点でも手をぎゅっと握って離す気配がないし。
うーん…………強引に振りほどいて問題にするよりも、さっさと帰った方が得策だな。ラウラには正直に言うしかないか。
「わ、分かった。でも急いでるから早めに済ませるぞ?」
「うん、ありがとっ! ふふふっ、タクヤ君って小さい時から優しいよね♪」
いや、俺はお前に優しくした覚えはない。仮にそんな事実があったとしても、きっとそれは猫をかぶっていただけだろう。なぜならばその時点でも中身は幼児のふりをした17歳の男子高校生なのだから。
しつこいレナを連れて通りを速足で進み、野菜を売っている露店を探す。確か足りない野菜はトウモロコシとジャガイモだったっけ。どちらもシルヴィアや一部の非戦闘員のみんなが栽培を手伝ってくれているけれど、まだタンプル搭の団員全員に行き渡るほどの量でもないんだよな。収穫できる量が人数に追いついていないから、どうしてもこうして街で購入して補うしかない。
「ねえねえ、何買いに来たの? お肉? 野菜?」
「野菜だ」
「へえ。今日の夕飯に使うの?」
「ああ」
さて、露店はどこだ? いろんなものを売ってるけど、野菜はこの辺では売ってないみたいだな。場所が変わったのか?
買い物客や巡回中の騎士たちにぶつからないように気を付けながらすいすい進んでいく俺だけど、レナの奴はちらちらと周囲を見ながら歩いているから通行人たちにぶつからないか心配だ。と思ったら、もう既に当たってるじゃないか…………。
睨んできた通行人に頭を下げつつ、レナの手を強めに引いてさっさと進んでいく。キョロキョロしてないでさっさと歩けという意味で強く引っ張ったんだが、レナの奴は何かを勘違いしたらしく、何故か顔を赤くしている。
ちょ、ちょっと、マジでやめて。こんな光景をラウラ委見られたらアンチマテリアルライフルでヘッドショットされちゃう。もしくはキメラのハンバーグにされちゃう。
「なんだか、タクヤ君って小さい時よりも女の子っぽくなったよね」
「そうか?」
「うん。だってそのリボン、女の子用でしょ?」
「ああ、誕生日にお姉ちゃんがくれた」
ラウラがあのリボンを大切にしてくれているように、俺もこのリボンを大切にしている。前まではごく普通の髪留めを使っていたんだけれど今ではすっかりこっちのリボンを使うようにしているし、シャワーを浴びるときや寝る時以外は常につけるようにしている。おかげでポニーテールとこのリボンがすっかりトレードマークになってしまい、女子っぽい容姿にさらに拍車がかかってしまった。
でも、これは俺にとって大切なお守りのようなものだ。偶然なのか、彼女にあげたリボンの色違いで、色以外のデザインは全く同じだ。前世の世界では姉弟がいなかったからよく分からなかったけれど、姉弟でおそろいの何かを身に着けるのも悪くない。
片手でリボンに触れながらいつの間にかニヤニヤと笑っていたことに気付いた俺は、息を吐いてから露店探しを続けた。
「お姉ちゃんって、ラウラ?」
自慢げにラウラから貰ったリボンの話をした直後、レナの声があからさまに不機嫌そうになったのに気付いた。先ほどまでは幼少の頃に一緒に遊んだ友人と楽しそうに話していた彼女だったんだけど、お姉ちゃんと言った瞬間からまるで憎たらしい敵の話をするかのように、レナの声にほんの少しだけ殺意が混ざり始める。
ん? レナとラウラってこんなに仲悪かったっけ? 確かにラウラはレナのことを嫌っているけれど、レナはその敵意に気付いていない筈だぞ?
「そうだけど?」
「……………タクヤ君、真面目な話だけど………いつまでもお姉ちゃんに甘えてるのはよくないと思うよ?」
「え?」
「タクヤ君は男の子なんだし、冒険者になったんでしょ? だったらいつまでもお姉ちゃんに甘えてないで、自立するべきだと思うよ?」
大きなお世話だ。
第一、小さい頃から甘えん坊のお姉ちゃんの世話をしてきたシスコンの弟に「姉から自立しろ」というのはかなり無理な話である。しかもその姉がヤンデレなのだから、姉の目の前でそろそろ自立すると宣言すれば監禁されかねない。
レナ、お前は俺に自爆しろと言っているのか?
それにラウラはまだまだ不器用だし、俺が一緒にいないといけない。今更離れたら彼女がどうなってしまうかは想像できないけど、彼女のためにならないのは確かだ。
だから俺は――――――――ラウラと一緒にいると誓った。彼女と一緒に旅をして、彼女を守ると。
それゆえに否定は許されない。彼女を否定するくらいなら、今すぐ.500S&W弾で自分の頭をぶち抜いた方がマシである。
ラウラのことを否定したくなかったから、俺は何も答えなかった。長い銃身のリボルバーを腰のホルスターに収めながら黙々と歩き続ける。するとレナは返事が返ってこなかったのが面白くなかったのか、更に不機嫌そうな声で話をつづけた。
「ねえ、聞いてる? タクヤ君もいつか彼女を作るかもしれないんだし、今のうちにお姉ちゃんから離れておいた方がタクヤ君のためになるんだよ?」
うるさい、黙れ。
お前に何が分かる? 確かに普通の姉弟ならそうするべきなのかもしれないけど、俺たちは違うんだ。一緒に冒険者になるって約束したし、ずっと一緒にいるって約束した。それに俺はラウラを守るって誓ったんだ。彼女から離れるということは、その約束や誓いをすべて破るということだ。
そんなことはできない。だから、もうそんなことは語るな……………!
「大体、もう18歳になったのにまだお姉ちゃんに甘えるなんて――――――――」
もしそれ以上彼女の言葉を聞いていたら、俺は激高していたことだろう。だけどここで激高してはいけないと言わんばかりに野菜を売っている露店が買い物客の群れの向こうにちらりと見えて、顔を出し始めていた怒りを強引に奥へと引っ込めてくれた。
露店を見つけた俺は、勝手に説教を始めたレナの手を引きながらその露店へと一直線に向かっていた。俺に手を引かれながらレナ何かまだ言っているようだったけど、もう俺の耳には買い物客の声しか聞こえてこない。
ニンジンを購入した前の客の後ろに並んだ俺は、片手で財布をポケットの中から取り出しつつ店の前へと躍り出た。
「いらっしゃい! お嬢ちゃん、何にする?」
「ええと、ジャガイモ2袋とトウモロコシを4袋ください」
「はいよ! ええと、銅貨8枚な!」
銅貨8枚で済むのはいいな。この露店は比較的安価な野菜を売っているらしい。見たところ品質も悪いわけではなさそうだし、これからは野菜が足りなくなったらこの露店を利用させてもらおうかな。
財布から銅貨を8枚取り出し、露店の店主に渡す。椅子に腰を下ろしながら笑っていたハーフエルフの店主はがっちりした手でジャガイモとトウモロコシの入った大きな袋を持ち上げると、持ちやすいように紐をつけてから俺に渡してくれた。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫です。こう見えても鍛えてるんですよ」
鍛えるためのトレーニングが尋常じゃなかったけどね。親父が言うにはアメリカ軍のネイビー・シールズの訓練をアレンジしたものらしく、一緒にやってた親父たちも息が上がっていたのを覚えている。
おかげでスタミナは平均的な冒険者をはるかに上回るレベルになったし、身体能力も転生者のステータスに頼らなくても十分戦えるほどになった。
代金を支払い、野菜の入った大きな袋をいくつも受け取った俺は、いったんレナに手を放してもらってから袋を担ぎ、街の門を目指して歩き始めた。とりあえずこれで俺の買い物は終わりだ。とっととタンプル搭に戻ってこれを厨房の団員たちに渡し、シャワーを浴びるとしよう。
来た時と同じように通行人にぶつからないように気を付けながら通りを進み、騎士たちが警備する門の前まで進んでいく。街に入ったときにバッジを提示した騎士に微笑みながら頭を下げ、門から離れていく。
もう日が緩やかに沈み始めていた。薄暗くなったわけじゃないけど、急がないとラウラが不機嫌になってしまう。早く帰るって約束したからな。
門から離れ、街の門の外に立つ木の陰へと差し掛かった俺は、そろそろレナと別れるために後ろを振り向いた。再会した時は微笑んでいた彼女はやはりラウラの話になった瞬間に機嫌を悪くしてしまったようで、不機嫌そうな顔をしながら俺の後をついてくる。
「そろそろ別れようぜ」
「うん、そうだね」
やれやれ、これで帰れる。
レナが離れたタイミングでドニエプルを出して荷物を詰め込もうと思った瞬間、顔を上げたレナが俺に向かって手を伸ばしてきた。ラウラと同じくらい白い腕が俺の首に絡みついたかと思うと、そのまま自分の身体を俺に引き寄せ―――――――小さな唇で、俺の唇を奪いやがった。
「―――――――!」
「んっ……………」
おいおい、何やってんの!?
「……………ねえ、考え直してよ」
「え?」
「ラウラの話。……………いつまでも甘えてちゃダメだよ?」
「……………」
「―――――――じゃあね、タクヤ君っ! また会おうね!」
不機嫌そうな表情を一瞬で消し、出会った時のような笑顔を浮かべて踵を返すレナ。手を振りながら去っていく彼女に手を振りつつ、俺は気づかれないように上着の袖で唇を拭った。
なんだか、嫌なキスだった。本当に愛している人とのキスには何も抵抗を感じないし、ずっとそうしていたいと思えるほど愛おしいのに――――――――何なんだ、今のキスは。
まるで汚らわしい汚物を唇にべっとりと塗られたように不快なキスだった。別に好きでもない赤の他人と強引にキスをすると、あんな感じがするのだろうか。あんなに汚らわしくて、不快なものになってしまうのだろうか。
嫌だ。
早く帰ってシャワーを浴びよう。そうすればまだ唇にへばりついているこの嫌な感覚が消えるかもしれない。
吐き気を感じてしまった俺は、それに何とか耐えながらバイクを出すと、サイドカーの中に購入した野菜の袋を素早く詰め込み、タンプル搭を目指して走り始めるのだった。
いつものように無線で指令室へ連絡し、検問所で団員に確認を取ってもらってからゲートの奥へと進んでいく。2つ目の検問所を通り抜けて格納庫へと降り、お気に入りのKMZドニエプルを他のバイクの隣に停車させると、サイドカーから野菜の袋を下ろして厨房へと向かう。
すれ違った団員たちと挨拶しつつ、厨房の奥で調理器具の準備をしていた調理師に野菜の袋を預ける。彼らに「じゃあ、後は頼むぜ」と言って調理を任せた俺は、まだ唇にへばりついている不快な感覚を感じながら自室へと急いだ。
早く洗い落とさないと。
汚れてしまう。
この不快な感覚で、おかしくなってしまう。
第一居住区にある自室のドアを念のためノックすると、ドアの向こうから誰かが立ち上がる音が聞こえてきた。ラウラが出迎えてくれるのだろうと思いながらドアを開けると、やはりドアの向こうには見慣れた赤毛の少女が微笑みながら立っていた。
「ふにゅう、おかえりっ♪」
「ああ、ただいま」
部屋の中に入り、上着を壁にかけてからソファに腰を下ろす。紅いネクタイも取ろうとしていると、スキップしながら隣へとやってきたラウラが俺の隣に腰を下ろし、そのまま身体にしがみつき始めた。
いつものように頬ずりを始めるラウラ。彼女の甘えている顔を見ると、唇の嫌な感覚が段々と薄れていくような気がした。
ああ、俺はもう完全にシスコンになっちまった…………。
その時、ラウラがぴたりと頬ずりをやめた。いつもなら自分が満足するまでずっと続けている筈なのに、今日はなんだか違う。
「ラウラ? …………うわっ」
いきなりラウラに突き飛ばされ、そのまま俺はソファの上に押し倒されてしまう。びっくりしながら起き上がろうとしたんだけど、隣にいたラウラは俺を逃がすつもりはないらしく、そのまま上にのしかかると急に柔らかそうな唇から舌を伸ばし、慎重に俺の首筋や手を舐め始めた。
段々と彼女の表情が無表情に変わっていき、鮮血のように紅い瞳が虚ろになっていく。彼女のその表情を見た瞬間、俺はどうして突き飛ばされたのかを理解した。
ラウラは俺がレナと出会ったことに気付いたのだ。
「……………嫌な味がする」
「え?」
「こんなの、タクヤの味じゃない……臭いも嫌な臭いがする。生ゴミよりも酷い………」
いつものような幼い口調ではない。大人びてる上に抑揚のない、今の彼女の瞳のように虚ろな声。このままその声を聴き続けていたら身体が凍り付いてしまいそうなほど冷たい雰囲気を伴った声が、容赦なく俺をぞくりとさせる。
「ねえ、もしかして―――あの女と会った?」
嘘をつくわけにはいかない。反射的にそう思い、俺は首を縦に振る。
「そうなんだ………やっぱり、あの女は嫌な奴。私の大切なタクヤにこんな酷い臭いをつけるなんて……」
無表情のラウラの顔がゆっくりと近づいてくる。彼女は俺の匂いをすぐ近くで嗅ぎ始めると、5秒足らずで顔をしかめた。
あの時のレナと同じだ。本当に嫌っている憎たらしい敵を認識したかのような敵意を剥き出しにした表情。いや、ラウラの場合はより強烈な〝殺意”というべきだろうか。
「やっぱり、タクヤの匂いじゃない………やっぱり、お姉ちゃんも一緒に行けばよかったのかな? それともタクヤがあの女に汚されないように、ずーっとこの部屋の中に閉じ込めておけばよかったのかな?」
優しく頭を撫でたラウラは、俺をぎゅっと抱きしめてくれた。そしてそのまま自分の唇を俺の唇へと押し付け、いつもよりも長めに舌を絡ませ合う。
やっぱり、レナにキスされた時の感覚と全然違う。本当に愛している相手とキスする感覚は、もっと優しくて心地良い。ずっとこうして抱き合いながら唇を奪い合っていたいと思ってしまうほど愛おしい感覚がする。
気が付くと、俺もラウラのことを思い切り抱きしめていた。甘えん坊なのはラウラの方だと思っていたけど、もしかすると俺も甘えん坊なのかもしれない。
静かに唇を放した彼女は、虚ろな瞳のまま微笑んだ。
「ふふふふっ………あの女の痕跡は、全部消さないとね」
そう言いながら、自分の上着のボタンを外していく。真っ黒なテンプル騎士団の上着を脱ぎ捨て、同じようにミニスカートまで脱ぎ捨てた彼女は、更に白いワイシャツのボタンもゆっくりと外しながら囁いた。
「―――安心して。あの女の臭いは、お姉ちゃんが全部消してあげる」