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コメディ

巨人は巨人じゃない

作者: 千路文也

 アニメ発生の国、日本の上空には巨人族の世界が広がっていた。この国では独自の進化を遂げた巨人と呼ばれる種族が住んでいるのだが、当の本人達は自分を巨人だとは思っていない。大小とはずばり、誰かの目線によって変わるからだ。ある人から見れば大きくても、ある人から見れば小さい。ようするに巨人の世界では当たり前の背丈なので自分達を巨人だとは思えないのだ。だが、人間は自分達の事を「巨人、巨人!」と連呼してくるので仕方なく巨人族の名前を使っていた。そんな巨人達だが、日本と当たり前の生活を過ごしていた。家では靴を脱いで過ごすし、当然のようにテレビも普及している。生活水準は日本と対して変わらず、ニュースもあればお笑い番組もある。アニメに至っては日本産が大半を占めている。日本のアニメはアメリカで言うとハリウッドぐらいの知名度はある。映画と言えばアメリカ。アニメと言えば日本という格式が作られているのだ。そんな訳で、巨人族のとある家族は一緒になって日本のアニメを見ていた。それは奇しくも、巨人をモチーフにしたアニメであり、人類滅亡をかけた哀しい闘いだった。そのアニメを見ていた子供の巨人兄弟は共に会話をしていた。


「このアニメって巨人が人間を食べるみたいな表現があるけど、実際はそうでもないよな。人間を食べると感染症になるから人食の文化は廃れたって聞いたし。そりゃ昔は食べてたかもしれないけど人間を食べていた時代は疫病が流行っていたらしいよ。そんな逸話があったら食べる気分なんて起こらないよな」


 そうだと言うのだった。実際の巨人は人間を食べないのだと。何故人間を食べないのかと兄の巨人は自問自答をしていたのだが。結局それは見た目が似ているからという結論に至っていた。ハッキリ言うと、人間は自分達をミニチュアサイズにさせた感じだ。ようするに小人である。小人を食べたい人間がいないのと同じように、巨人も人間に対してはまったく食欲が湧かなかった。むしろ人間達と同様に家畜の肉や海の幸に食欲を抱くのだ。その事を弟の巨人に伝えると、弟も同意見のようで首を縦に振っていた。


「そうだよね。兄ちゃんの言う通りだよ。人間を食べるなんて原始的過ぎるって」

「ああ。クレイジーとしか言いようがない。もうすぐ夕ご飯の時間なのに食欲が無くなってしまうよ。チャンネル変えようかな」


 兄貴の巨人は食欲不振の恐れがあると言って、リモコンを手に取りチャンネルを変えた。この時間帯はニュース番組ばかりなのでツマラナイが、中にはアニメ番組も放送されている。こちらは先程の人食表現など全く皆無の子供向け番組だ。平和的に物事が進んで行くので、どちらかと言えば此方の番組の方がが見やすかった。二人共ランドセルを卒業したばかりの巨人中学生なのだ。まだまだ子供向け番組はクリーンナップを打てる時代だった。日本でも同じみの教育関係のアニメ番組が放送しているのだ。それを見始めた巨人兄弟たちは「やっぱりアニメはこうじゃなくちゃ」と落ち着いた様子でテレビに釘付けになっていた。台所から香ってくる肉じゃがの匂いを堪能しながら、教育アニメを見るのは至福の時間としか言いようがない。他のアニメでは到底味わえない思春期感を味わえるのだ。巨人兄貴は夕方の時間帯に合うアニメを見るのが、今を楽しめる方法だと確信していた。その事を再確認するように弟の方を確認しながら言葉を出していく。


「殺伐としたアニメを見るのって夕方じゃないよな。やっぱり夕ご飯帯は落ち着くアニメを見ないと中学生っぽくない。ああいうアニメは大人達が見るべきだよ。ストレス社会の仕事から帰って、録画していたバトルファンタジー物のアニメを見る。それが大人の楽しみ方だと俺は思っている訳だけど、お前はどう?」


 と、話しを振るのだった。すると弟の巨人も同意見のようで笑みを浮かべながら首を縦に振っていた。これで自分の意見は間違っていなかったと巨人兄貴はホッとした表情を見せる。巨人は自分の考え方を否定されるのが一番ビックリする。まして物事に敏感な思春期を体感している巨人兄貴にとってはナウい問題でもあった。母親の言葉や父親の弦喝な態度に反応してしまう時期は、自分の考え方を否定されるのが怖い。それは巨人だろうが人間だろうが同じである。


 こうして、巨人はゆっくりとしたスピードで人間を襲う木偶の坊と表現されがちな人間界の現実に巨人兄弟は深くメスを入れていた。巨人だからと言って色眼鏡で見られるのは好ましくない。もっと人間と巨人を同等に評価されたアニメがあってはいいのではないかと、巨人兄弟は考えていた。まるで巨人と人間が天敵のように描かれるのは、あまりにも心が泣かされる。それこそ教育アニメで巨人と人間の日常を

描いた平和なアニメが放送されないかと兄弟達は期待していたのだ。今の日本アニメは、ダークファンタジーばかりで日常を描いたアニメが全く放送されていない。もっと子供向けで分かりやすい内容の巨人アニメを放送してくれと、巨人兄弟は望むばかりだった。








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