得体の知れない黒幕
お待たせしました。果たしてコートは黒幕を見つけることが出来たのでしょうか
物語は激動のクライマックスへ・・・
「なな、何を言ってるんですか!? コートさん!?」
あわあわとメガネが青ざめているが、正直私も唐突すぎて衝撃を隠しきれなかった。そして、それはその場にいる全員が同様の様子であった。
「メガネ、別に庇ってやる必要はねえぞ。どうやら、コイツはまともに自分の正体なんざ隠す気はないようだしな」
当の関西弁は、今までのにこやかかつ爽やかな雰囲気から一転して、まるで水を打ったように無表情で黙りこくっていた。
「まず不審なのは……一番乗りで広場に来て、そのまま三人で散策に行ったとは言うが、だとしたらその三人は一人として俺らに会わなかったと言うのか?」
「え……?」
「お前の話が正しいなら、俺たちはまだ廃屋の中で眠っていたということになる。だとしたら、廃屋の中を調べてみれば、俺たちの存在に気づくんじゃないのか?」
散策に行ったが、大した収穫も無かったと関西弁は言った。しかし、確かに廃屋の中を調べればそこには私たちの姿があった筈……。『散策をする』と言いながら、一番怪しげな廃屋の調査をしなかったとしても違和感が残る。
「拙者たちのことを村人と思い、放置したという可能性があるのではないか?」
「しかし、こいつは俺たちを『初めましての人ら』だと言ったぜ」
「……言葉のあやだと、言えなくもないわね……でも……」
「もう一つ。これはもう根本的なことなんだが」
尚も石像のように動かないままを貫く関西弁の目を、しっかりと見据えてコートは続ける。
「そもそも最初に広場に来たのは俺だ」
「は!?」
幾つかの驚愕の声が重なった。そのまま、ちょっと待てと軍人が割って入る。
「おい!! 俺は覚えているぞ!! 貴様がここに来たのは俺の次だった筈だぜ!?」
「それはそうだ。そもそも俺は何が起きているかも分からない状況で、ふらふらと散策に行ったり、むざむざ目立つ場所に一人で向かったりはしない……。最初は一番人が集まりやすそうなこの広場を、隠れて見張っていたのさ」
コートもコートで無表情で調子も変えずに続けている。
「すると、広場に最初にやって来たのは……今この場にいない『三人』だった。恐らく、散策組だろうな。しばらくしてからその三人は散開していったよ。……その後は、人がちらほら集まってきたんで、そこの軍人がやって来た後に広場に向かったのさ」
「え? そ、それじゃあ別にこの関西弁さんの話は間違ってないんじゃ」
当然の疑問だ。最初に三人が集まり、そして散策に向かって行った。関西弁の話した事実と一致する。しかしコートは首を振る。
「違うんだよ。確かに『三人』はいた。だが、その三人の中にこの関西弁の姿は無かったんだよ」
「は、はあああ!?」
信じられないと言わんばかりに叫んだメガネは、目を真ん丸く見開いていた。
「だから隠す気がないと言ったんだ……。お粗末な嘘だよ。たった今現れた癖に、最初からいたなんていう要らん嘘を吐く。しかももし他の三人がこれから現れたら、一瞬でバレる嘘だ。不審な言動も狙って言ったんじゃないかとすら思えて馬鹿馬鹿しいね……」
「で、でも……。なんで黒幕と言い切れるのよ!? 黒幕ってことは、コイツが全部仕組んだことって言いたいんでしょう!? 確かにコイツは存在しない筈の十一人目の人間かもしれないけど、そもそも合計十人の人間しかこの空間にいないっていうのは、私たちの推測に過ぎないでしょう!?」
「おいおい。おかしいとは思わないのか? コイツは俺ら以外に『三人』がいることを知っているんだぜ? 俺たちはコイツに対して何も説明なんかしていないのに。コイツは自分から『自分の前に二人先客があって、三人でバラバラに散策に行った。他の二人はまだ戻ってない』と言ったんだ。つまり、俺ら以外の三人が何をしていたか把握している上で、彼らの身の安全を強調し、俺たちに詮索をさせないようにしているということだろ?」
その返答を受けた時、ツンデレの表情は酷く青ざめた。今までの小さな疑念とは違う。初めてこの男を明確な『敵』であると認識したのだ。無理も無い……。私も関西弁の報告を受けることで、他の二人の身に大事があった訳ではないと思い込んでしまったのも事実だ……。コイツの行動には異常性が感じられるのは明白だ。
「さあ、そこでだ。今度は嘘偽りない言葉を頂けると願って、まずは聞かせて貰うぜ……」
そこまで言うと、コートは初めて一呼吸置くような動作を見せ、改めて関西弁と向かい合った。
「他の三人をどうした? 今、奴らはどこにいるんだ?」
「なに、『僕』の視界でチョロチョロ目障りやってくれたんで、ちょっと向こうで大人しくしてもらってるだけだよ……」
瞬間、走る悪寒に私は思わず顔を上げざるを得なかった。
関西弁の男の目に、いつの間にか光が戻っている……。
しかしその光は、先ほどまでそこにいた人間の、明るくて爽やかな人柄を微塵も感じさせない、黒くて深い……濁った輝きだった。
黒幕でした
次回、黒幕の口から・・・今回一言しか喋らせて貰えなかった黒幕の口から元を取り返さんとばかりに全ての秘密が語られるのか!?
物語は怒濤のエンディングへ・・・