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私の喪失

とうとう新連載を始める事ができました。長過ぎました。

R-15、残酷表現ありと一応させては頂きましたが、今後の展開で流血表現もあるのかなあと考えたときの早めの予防線です


まあそういう感じで思っておいて頂ければと

 目覚めた。

 最初にそう意識した時の気分は極めて『最悪』であった。




 気がついた時、自分にはほんの一秒前までの記憶すら無かった。

 最初に気づいたのは、物語の一行目を語るには余りに突飛で、それでいて計り知れない程重大過ぎる、そんな事実だった。

 どんな過去を失ってしまったかは分からない。しかし、自分の大切な何かを丸ごと置き去りにしてしまったような感覚に襲われている。

 恐らくは人生初体験であろう記憶喪失……いや、自分の人生において初めてなのかどうか、最早それを確かめる証拠さえ奪われてしまったのだ。


 なんとも形容し難い喪失感……そして考えれば考える程膨れ上がっていく不安を、止める術がある筈もない。

 


 耐えられず、自分はその場から跳び起きた。

 




 ……えっ。


 その時、自分は初めて気がついたのだった。見知らぬ部屋の、見知らぬベッドに横たわっていた事に。


 あちこちから曲がった釘の飛び出す木壁。年季の入った机に、フックで掛けられたランタンや帽子。どうやらそこは、どこかの民家の一室のようだった。(勿論、本当に見知らぬかどうかは定かではないが)

 しかし、それにしても奇妙なのは……その部屋は、どうやら寝室のようだったが、お世辞にも人が満足に生活している空間とは言い難い、廃屋当然の様相をしていたのだ。

 年季の入った机、と言ったが、正確に言うなら、それは強めに押し込んだりすれば脚からへし折れてしまいそうなまでに朽ちかけている。床などは地面とそのまま地続きで土が剥き出しだし、乱雑に打ち込まれた木の板の中に、一箇所だけぽっかり開けられた風穴は、ガラスの張られていない窓、なのだろうか……。


 身を起こし、そっと足を地に降ろす。

 じゃり。靴底が砂利を踏みつける音が初めて自分に、見知らぬ靴を履いていたことを気づかせる。

 立ち上がり、改めて部屋を見回すと、机の上に紙切れが置いてあるのが分かった。数歩ばかり歩み寄って摘み上げると、


『オモテへデロ』


 ……そんな一言が。

「表へ出ろ……」

 古臭い喧嘩文句のような、ふざけた一文だ。だが、これで確信した。

 自分は何者かによってここへ『連れ去られた』のだ。

 そしてこの紙切れの送り主こそが恐らくはその首謀者……黒幕とも呼べる存在。自分の失った記憶に、何かしらの関係があるはずだ。

 正直言って、自分は焦っていた。記憶を失った事実への動揺からだろう。とにかく手掛かりに繋がりそうな物には縋りつきたい気分で、そんな風に決めつけてしまっていた。


 ぐしゃり。

 手の中で紙切れを丸めると、私は、玄関とは名ばかりの藁の暖簾を潜り抜け、家の外へ飛び出したーー。

寝て起きただけだねコイツ

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