私の意志
残酷な表現が一部あります。苦手な方はお控え下さい。それと、感想待ってます。指摘でも良いので。
病院に行くことを決めた咲希。そして、その結果は?
次の日私は隣街の産婦人科病院を訪れた。待合室に腰を添え周りを見渡すと、皆幸せそうな優しい顔をしている。「私もママになれるかな…赤ちゃん」はっきりとした答えはないが、私は自分のお腹を擦った。
「一ノ瀬さ~ん。一ノ瀬 咲希さん」「はい。私です」看護士に案内され診察室に入る。初めての経験に緊張する私に医師も看護士も優しく接してくれた。
「一ノ瀬さん」医師は私の顔を凝視する。「おめでとうございます」やはりなという気持ちと嬉しい気持ちが、ごちゃ混ぜになって私は涙が溢れた。私は結果をいち早く知らせたくて、白井さんにメールをした。「おめでたでした」ただ一言。白井さんの子供じゃなくても、白井さんは喜んでくれる。昨日の言葉を信じて私は祈るように返事を待った。しかし、返事はすぐには返っては来なかった。「仕事…忙しいのかな…」不安な気持ちを抱えながら、歩道橋を降りている時、悲劇は起きた。
「ドン」背後から私の背中を誰かが押した。私は体制を崩し、階段を転げ落ちた。薄れ行く意識の中で微かに見えた、見覚えのある人影。そのまま意識を失い、気が付くと病室のベッドの上に居た。「気が付きましたか?」目の前には医師と看護士が数人私を囲んでいた。「赤ちゃん…私の赤ちゃんは?」医師は腕を背中に回し、ただ首を横にだけ振った。「そんな…そんな…私の赤ちゃん…」看護士に宥められながら、声が枯れるまで私は泣き続けた。「何で、何で私ばっかり」そして、私はあの時背中を押した人影を思い出した。「許せない…」でも、はっきりとあの人だとは言えない。「そうだ、携帯」私は携帯のメールを確認した。白井さんからの受信メールがあった。「それは良かった。今夜はお祝いしないとね」メールの内容からして、白井さんが背中を押す訳がない。私は疑いもせず、むしろホッとした。「白井さん、赤ちゃん駄目だった。今、〇〇病院です」私はメールを送信すると力が抜け、一眠りした。
「咲希~大丈夫か?」息を切らし、白井さんの声で私は目が覚めた。「…赤ちゃん…駄目だった」「何も言うな」白井さんは私を抱き締めようとしたけど、何故か私の身体はそれを受け付けず、振り払ってしまった。〈白井さんが押したんじゃない〉そう思っても、心の何処かでは疑っていたのかも知れない。二週間ほどして私は退院した。二週間の有給休暇の後、二週間の入院。職場では更に冷たい視線が私に向けられ、退職を余儀なくされた。私は何もかも、失った。そんな時、アイツからメールが届いた。元彼だ。
「俺だ。雅人だ。アイツとは別れた。もう一度お前とやり直したい。今度は絶対に悲しませない」
〈何で今頃…〉散々迷った挙げ句、私はメールを返すことにした。