響きは大事?
シチュとしては夜にお子様三人あつまっての会話。
「月光樹にもああいう使い方があったとはねえ」
「月光樹?」
「ああ、呼び名違うんだよね。夜色の魔木、だっけ。まさか属性判断に使えるとか知らなかったなあ。様々に色付いてて不思議だなあとは思ってたけど…あれは属性の色だったのか」
魔物界では夜色の魔木のことは月夜に輝く木ということで月光樹と言われているらしい。
「そういえばコウは音花の魔木のことも知ってたんだよね?綺麗な咲かせ方してたし」
「おとはな…は、調和の木のことだっけ。うん、知ってるよ」
「あれは調和の木って言うの?」
「俺達はそう呼んでるかな。あの木がある周辺は魔力が澄んでて、魔物も比較的穏やかだからって」
「そうなのか。ってことは音花の魔木があるシルヴァニアって実は凄く安全だったのか?」
ヘンリーがそう言うのには訳がある。各地にプラティオン聖堂はあれど、音花の魔木を国下で抱えているのは実はここだけだからだ。
音花の魔木や夜色の魔木は移植不可能で、枝の状態は魔力を宿した木だからか魔力を与えれば長持ちするけどそれでも半年保つかどうかというくらい。
魔木を抱えたければ引っ越しをするしかないけど、開拓するには現住の魔動植物と一戦交えなければならず、決まってそこの者たちは手強いそうなので難しいらしい。
だから魔法適性検査も他国ではお手軽に1日でやることは出来ない。お金もかかって出来る場所まで赴く手間もかかってと、まあそれでも身に付けたら一生ものだからやる人も少なくないみたいだけど。
シルヴァニアの現状は偶々なのかなんなのかはわからないけど、初代が音花の魔木の傍に住処を決めての今らしい。
「調和の木があるから安全、と言うのはどうかなあ。調和の木って場の魔力を生き物に馴染みやすいように循環させてるから居心地良くて、反って集めたりするかも」
「そうなの?」
「あー、ひょっとしてだからプラティオン聖堂はあんなでかい音花の魔木を囲ってたのか?」
「そういえばあの調和の木は屋内にあったね。そうかもね」
安全どころか生き物を集めるかもとはびっくりである。初代様は何故にそこに住むことを決めたんだろう……。
「でも月光樹が傍にない分そこまで悲観することはないと思うよ。月光樹と調和の木のセットだと、魔物の中でも知的な猛者が好む場所で大変なんだから。月光樹があるってことはそこの土地の魔力が高いってことなんだけど、さっき調和の木は生き物に馴染みやすいようにするって言ったでしょ。力は存分に使えて回復も早くてと凄ぉく良物件なんだよ。どちらか片方だけなら月光樹の方が魔化した生き物が沢山湧いて危ないだろうし……こう考えると調和の木の傍に住む選択した最初のひとはいい判断だった?」
語っているうちにそういう結論に至ったらしいコウは感心しているようだった。コウが良いと言うならこの現状はきっと良いんだろう。
内容はとりあえず魔木の二本セットは危ないという認識しか出来てませんが何か。
「それで、月光樹の話に戻るけど。何が何色になるの?」
私のせいで話がそれていたけどコウの本題はそれだったらしい。
「赤が火属性で、青が水属性。白色が氷属性で、緑が風属性。黄色が雷で、茶色が地で、橙が光に紫が闇、だったかな。あとあったっけ?」
指折り数えて言っていくけど全部で何種類だったかが実は曖昧だった私はヘンリーに話をふる。
「確か黄緑の木属性ってなかったか?地と同じで知名度が低いからって覚えた覚えが……それと、染まらない無属性だな」
「無属性?」
「無属性なんてあったっけ?」
「……世間一般は比較的無属性の方が多いって話はミリアと一緒に習った覚えがあるんだけど」
「……えへ?」
ヘンリーには呆れられた目を向けられた。
「まあそういうことだから。属性色に染まれば良しな適性検査で半分近く染めるとか、ましてや全部染めとか実はすごいことだからなっ!」
ヘンリーは確か茶色の二枚染めだったっけ。私は緑の四枚で。コウは七枚あったもの全部染めちゃったもんねぇ。すごく悔しそうだ。
「くぅ、あと一枚染められればジオラルドだったのに。ジオールって響きよりもジオラルドの方が良かったのに!」
あれ、適性より響きの問題だったの?
「王子様のセカンドネームはジオールなの?」
「おう」
「ジオル、じゃなくて?」
「ジオールだよ」
「……ふぅん」
思いのほか名前にくいついてる様子を見せるコウ。コウも響きが大事とか言い出すんだろうか。
「何が気になるの?」
「地属性の家族とセカンドネームが似てたから関係あるのかなあってちょっと思っただけ」
「へー、そうなの?」
そして試しに全属性の知ってる分のセカンドネームを上げて確認してみたけど偶々だったらしい。
でもそれからコウのヘンリーの接し方が少し柔らかくなった気がして、属性名とはいえ似た名前を持ったヘンリーを羨ましく思いつつ響きってやっぱり大事かもしれないと思うのだった。