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お姫様と魔物少年のわき道  作者: あしあと
子供時代・裏話
5/7

少年の食生活を正せ?

ノリで投稿。

推敲も何のその、短いです

 目の前の奇妙な光景に私は絶句した。

 だって、花を体に突き刺した奇妙なスライムがのそのそと歩いているんだもの。何かの本で読んだ異国の話に出てくる生け花とかいうものに似ているが、あれは一体何してるの……?

 どこかちゃんとした目的地があるみたいで、城の一角を曲がってもスライムは確かな歩調(?)で歩み続ける。


 気になった私はそれを追いかけ、その先に気が付くと――また絶句することになった。


「なに、やってるのかな……?」

「……食事」

「しょく、じ……」


 人気のない城の片隅。スライムの向かう先にはコウがいた。

 口をもぐもぐと動かしなにかを食べているのはわかってるんだけど、食事と納得するにはおかしすぎる物を手にしているし、ちらりと口から見えてたりするし、どうしていいかわからない。

 食べているのは、スライムが運んでいたあの花だ。


「なんでそんなの食べるのかなっ?!」

「そりゃあ、勿体無いから?ね」


 話を振られたときには傍らにたどり着いたスライムも、返事の代わりなのかもりっと膨らむと一気に花たちを体内に取り込んでいた。

 黄色い体内に浮かぶ花たちになんかこんな洒落た食べ物があったような、なんて少し現実逃避をしてみたけど…目の前のこれは間違っても食べ物じゃないはずだ。


「勿体無いってなに?なんでっ?」

「だってこの花たち二、三日飾ってあと投げるだけじゃん。だったら食べた方がいいんじゃないかなって思ったんだよね。俺はスライムじゃないから土には還せないけど、魔力の足しには成るからただ捨てられるよりは良いと思わない?」


 でも、だからといって――口から葉っぱらや茎やらが見え隠れするのはどうだろう。いただけない。というか、嫌。主に私が。


「……お願いだから人の姿でそういうことしないでっ?」

「あー…まあ、そーだね。隠れて食べてたつもりだけどお姫様にバレちゃったし、今度からはちゃんと森とか行って、人の完全にいないところで食べるようにしないとか」


 あくまでも花を食べるのはやめないらしい……。




「料理長!わたしに料理を教えてっ!」

「どうしたんだい姫さん、急に」

「コウにまともなの食べさせたいの」


 私は必死に花を止めさせることを考え、ちゃんとしたご飯を持っていけば止めてくれるのではないかという考えに至り、料理長であるオリバーさんのもとに駆け込んだ。


「そういや、あの兄ちゃんが食うとこ見たことない気がするな。どこでなに食ってるんだ?」

「だからまともなの食べさせたいの!」

「え?え?……んん、そうだなあ。料理初心者の姫さんでも上手く出来そうなのは……」


 戸惑いながらも親身になって考えてくれる料理長。

 そうして出来上がったのはスクランブルエッグとトーストと野菜という軽食だ。

 卵に火が通っている方が私の好みなので固くなるのを待ってたら多少焦がしてしまったけど、食べられなくはない出来である。

 これで少しでも食に目覚めてくれないだろうか、と祈る思いで私はコウのもとに向かった。




「はい、コウ!」

「…これは?」

「ちゃんとした食事作ってきたから、これを食べてっ」

「えー…っと、お腹すいてないんだけど…?」

「じゃあ空いたらでいいから食べて!」

「ええ…」

「えーってなによ、御飯嫌いなの?」

「んん、食べ物には特に拘り無いから嫌いもなにも。お姫様が食べ物と呼べないものも食べたの、覚えてるでしょ?基本、何でも食べれるよ」


 そういえばそうだよね、出会ったときなんて武器を食べてらしたもんね。歯応えが好きだからって感想に困ったのはまだ昔のことじゃない。


「でもじゃあなんで食べないのよ」

「お城のものは食材に限らず国民の税ってやつで支えられてるんでしょ?俺は居候だから遠慮しないと」


 ふと、思い返してみる。彼は確かに消耗品の類いは触れてなかったように思う。

 まさかそんなことも考えているとは思ってなかったので驚きだ。相変わらず周囲を気遣う真面目君である。だけど。


「それでも、これは私がコウのために初めて作ったものだから……食べて欲しい、な?」

「……じゃあ、一緒に食べよう?全部はちょっと多いから」

「わかった」

「あと、次は食べないからもう作ってこないでね」

「なんで」

「こういうの、あまり好きじゃないのかもしれない」


 食事をじっと見つめる姿はなんとも複雑そうな顔をしている。


「それって、嫌いってことなんじゃ?」

「ううん、嫌いって訳じゃないと思うんだけど…食べたいと思わないっていうか。果物だったら美味しいって思うけど、他のはそこまで美味しいって思ったことないんだよね。あ、でも……肉は、嫌かもしれない。なんとなく。一番食べたいとは思わないんだよね」

「ふむふむ、わかったわ」


 好きなものが果物で嫌いなものが肉と。彼の好みを知れるとは思わぬ大収穫である。

 でも果物は貴重品だから量はなかなか。保存も効かないものだし、どうしようかな。



 後日料理長に相談し、私たちの食事には出せない傷物の果物で作った果実汁を出したところ、彼はいたく気に入った様子でちびちびと飲んでました。

スライムに関してひとつ。

頭に乗っけて運んだ方が楽なんじゃね?って花の運び方してるけど、少しでも新鮮なものをコウに届けたいが故の行動です。

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