とある魔生の転生(?)話
魔生の呟きです。短め
上位種に匹敵するであろう力量を既に持ちながら、力が物を言う魔物の世で命を尊ぶ。
そんな博愛思考のお子様に拾われたのは、今から約2年前――。
その時は、まだ俺っちは鞄型のミミックではなかった。
その頃はミミックと言えば真っ先に思い浮かぶだろう、宝箱型の魔生――それが、それまでの俺っち。
強い魔物が棲む薄暗い洞窟や、古めかしい遺跡とやらにあるお宝を目当てにやって来る人間どもを喰らう――と言っても"魔力"や"生命力"ってやつで血生臭い話じゃねーぞ?――そんな生活をしていたんだ。
……それがどういうわけか、今はこんなナリ。
ちょっとくたびれた肩掛け鞄が今の俺っち。
何が起きたんだかさっぱりわからねえ。
目が覚めたらこうなっちまってて、パニクってる間にちょい変わり者のお子様がやって来て拾われることになって……。
ああ、まあ、今の生活は悪くは無えんだけどよ?
このお子様の魔力の質すっげえ極上モンだし、様々な場所を飛び回るもんだから全然飽きねえし。
でもな、一つ腑に落ちねえことがあるんだ。
鞄型のミミックなんつーのは……アリなのか?
俺っちそんなの聞いたことも無かったんだけど。
進化は除外するとして、何故こうなったんだか。
ああ、俺っちこれでも上位種ミミックだったんだぜ。
だから進化の線は無しなんだ。
でも今のこの状態は……なんだろな?
ランクもわかんねぇし、俺っち何が出来るんだ??
……うーん、こんなナリになった経緯も曖昧だし、モヤモヤするなぁ。
ハッキリしてんのは誰かになにかやられたってことだけなんだよな。
誰かっつーのかがわからねえんだけど。
なにかと対峙している感覚があっただけで姿を見たわけじゃなかったからな~。
でもそこになにかいたのは間違いねえんだ。
探索地の最奥に潜んでいた俺っちを持ち上げて連れ出しやがったのが何よりの証拠だろ?
ああいう場所は達成感や疲労感で判断力が鈍り、宝箱を見かけたら思わず寄ってこずにはいられないという絶好のポジションだったんだけどな~。
……まあ、暇でもあったけどな。
でもそいつは見えないし、気配というものも感じられなかったし……存在が稀薄っつーか、なんだったんだろうな、あいつ。
透明なお化けか?
……Σおおう、魔生である俺っちがお化け発言なんてしちまったぜ。
ああ、幽体のは居るぞ?ちゃんと触れねえやつな。
まあ今はそれは置いといて。
……またアレに会えたら、俺っちは元に戻れるのかな。
――――もう少しあとの話になるが、俺っちが鞄型のミミックになったのは、鞄が欲しいと言ったお子様の呟きを叶えようとしたとある魔物の仕業だったという。