AP02.テキトーなんかでいい
執筆中。。。
中学を卒業して、俺も高校受験をした。
学校にはろくに行ってなかったけど、勉強には自信があった。
こうみえて俺は、中学に行かなくなるまでの2年間、学年1位にも輝いたことがある。
完全にできない奴、というわけではなかった。だからなのか、教師も無駄に俺に熱く"学校"を語るものはいなかった。
結構自信まんまんで、椙と、オクシュンと一緒に地元の高校を受験した。
ニシザワは家庭環境から、中学卒業してすぐに土木の仕事に就職した。
悪いけどテストの出来にも自信があった。
制服着て、彼女と『ニケツ』してデートする。俺はこんなベタなことが夢だった。
「受かった!!!」
が、夢もむなしく、合格発表の時両手を高く上げて喜んだのはオクシュンのみだった。
「は!?なんで俺が…」
「ガクも駄目だったか」
残念ながら、張り出された掲示板に”7 907 椙原亮”と”7 988 藤井楽”の名前と受験番号はない。
確かにテストは完璧だった、自己採点したら国語なんて90はいっていたのに。
「俺の夢が・・・、制服が・・・」
「悪いな楽、俺が引き継ぐよ」
「クッソー」
ぽんぽんと俺の肩を叩いた、
オクシュンのにんまり笑顔がやけにまぶしかったのを覚えてる。
俺はそのあと駆け込んで、美容の専門学校に入学した。
が、2カ月で辞めた。理由は楽しくなかったから。
親は大金だして入学金を支払ったのに、そんな理由で辞めた俺に母は泣いて怒った。
父は一発俺を平手で殴った。一気に口の中が鉄の味になった。
「お前がこんなに駄目になるとはおもってなかった」と捨て台詞吐いて行き場ない怒りを俺のパズルにぶつけて、パズルを破壊していった。
そんな親には抵抗しなかった。親の言ってることは当たり前だということは理解できるから。
ぐしゃぐしゃになったパズルを無で片した。
俺の心に妙に『駄目』という言葉が響ていた。
俺はその時、髪も盛って、”ギャル男”になってた。
色素抜いて、たまり場の住人といつも集まって夜中まで騒いで、原付乗って町を騒がせて、警察と追いかけっこして、毎夜毎夜がお祭りみたいに騒がしかった。
椙は高校を落ちて、あれからすぐにパチンコに人生を捧げていた。
金がキレたときは妹やモトカノになった『マナミ』に金を借りてまたパチンコ・・・の繰り返し。
唯一高校生になったオクシュンも、ろくに高校には行っていない。
担任と馬が合わないらしく、高校に入ってみたら碌な奴がいない、とカッコつけていた。
朝も昼も、制服かスウェットで俺たちと遊んでいる。高校生のくせに立派に茶髪。
ニシザワは、働くことに熱心であり土木以外に的屋などにも手を出していた。
買いたいものがあるといって毎日熱心に働いてから、夜俺たちと遊んで、朝早く仕事へいく生活をしているようだった。
目標のあるニシザワは妙に羨ましくって妬ましかった。
「オク、ニシザワは?」
夕方、俺が受験した高校生が帰っていく姿をヤンキー座りしながら3人で眺めてた。
眩しい制服とか、着崩した制服とか、いろんな制服がある。
ミニなスカートをはいた年上に、変な色気を感じたりする。
誰も俺たちとは目を合わせない。
変なまじめそうな年上の男はじろっと下から上まで見てふっと勝ち誇った顔をした。
けどそれに向かわない。
いらっとするけど、喧嘩は嫌いだし、笑われてもおかしくないからだ。
落ちた高校の前で煙草吹かすって、結構な負け姿だ。
椙はコーラを飲みほしてから道端に空き缶を捨てた。
「仕事だってさ、あいつそんなに頑張ってどうすんだよ、な楽」
「ああ」
「テキトーが一番いいんだよ、な楽」
「ああ・・・あっち!」
ぼーっとしていたら煙草の火が指の所まで迫ってきた。
ぱっと捨てて靴の底でぐりぐり潰してやけどした手を振った。
「なにやってんだよ」
ヒーヒー笑う椙の笑顔が生き生きしてた。
テキトーテキトーで、いったいどこまでいけるのか。
俺はもう1本煙草に火をつけようとした。が、もったいない気がしてやめた。
今の俺の収入源は、ニシザワが紹介してくれた的屋のみ。
むやみに無駄遣いしたら先が困る。仲間にはそんなこと、恥ずかしくて言えない。
結構先のこと考えてるんだぜ、なんて言えない。
「そいやあさあ、俺ココ辞める」
オクシュンがポツリと呟いた。
誰も驚かなかった。
「そりゃ、単位もないだろうな」
「お前も俺と椙と一緒に高校なんてはいらなきゃよかったんだよ、初めから」
「専門辞めたお前にいわれたくねーよ」
いつの間にか、辞めるが正しい、みたいになっていた。
負けてるのはこうして入れなかった高校の前で煙草吹かしてる俺たちのほうなのに。
「可愛い子いなかったからだろ」
冗談で聞いたら、少し悩んで頷いた。
「まあ、ギャルはいねえけど、可愛い子はいる」
「あ?お前いまいないっつたやん」
「楽の可愛いって、お姉さん系とかだろ?全然違うんだよな、マコトっち」
「マコトッチ?」
俺と椙の声が重なった。
オクシュンは携帯をスライドさせて、いきなりいじりだしてあるサイトを開いて俺に見せてきた。
よくあるプルフィールサイト。
写真付きで、【NAME まこと】と記されていた。
「可愛くね?」
若干テンション高めのオクシュンにのっかかるようにして椙が携帯を奪った。
しばらく眺めて「マコトッチ」と呟いて携帯をオクシュンに返した。
「ふつージャン」
「バカか、高校生はこんくらいがいいんだよ」
「俺はもっと大人っぺえほうがいいし、楽、どうだよ」
「マコトッチはいまどき珍しい『電話無理』っていう子なんだよ!まじ古風!俺そういうのいい!」
「この見た目で?すげえ派手そうな顔なのに?」
「いや、すっぴんでこれはいいだろ、アイドルになれるね!つか俺のアイドル、蕗高のアイドル!」
「今なんかアイドルなんてこれ以下のブスでもなれんだろ」
鼻で笑って椙は煙草に火をつけた。
「め・・・」
「め?」
「っちゃ可愛いじゃん」
オクシュンは「だろ?」と”どや顔”で俺を上から見てきたが、椙は驚いた顔して
俺に近づいてきた。
椙が言いたいことは何となくわかる。
俺は昔から可愛い子か綺麗な子でいったら綺麗な子しか受け付けないほうだった。
美人は3日で飽きる、なんてことわざも俺には問答無用なくらい、見た目重視。
自分で言うのも変だが、モトカノは決して不細工は1人もいないし、
不細工だった、なんて冗談でも言われない。
それに比べて、この「マコトッチ」は綺麗な部類ではない。
プリクラからして、綺麗より、可愛い系だと思う。
それに、オクシュンが目をつける子は可愛い系な子しかいないから。
ありきたりのプリクラで、なんにも変わらないのはわかるのに、何故か興味があった。
「俺に紹介して?」
「はー?やだよ!」
「お願い!奥俊様お願い!」
そっと、まだ沢山残ってる煙草を差し出した。
「つまらないものですが」と大人がやる時みたいに手をピンと伸ばして
差し出すと、オクシュンはしばらく考えたのか、沈黙してそっと、煙草の箱を俺を見ずにつかんだ。
「サンキュー!」
バシッと背中を叩くと、痛そうな顔してきたけど「はいはい」と頷いて携帯をいじっていた。
煙草に負けるなんて、安いのか高いのかわからない買い物だ。
しかもただ俺が勝手に興味があるだけで、完璧狙って挑戦するわけでもない。
ましてやオクシュンが狙っていた子。俺はそれを煙草と交換するなんて、なめているかもしれない。
けど、なんかとりあえず脳の奥のあたりが『どうにかしなさい』って言っていた。
これをなんて言ったらいいかわからなかったから、仲間には何も言わなかった。
これが『ビビビッときた』ってやつだったり。
まさかね、そんな夢、絶対にあり得ない。
だけどただ急速に「マコトッチ」に何とも言えないくらい惹かれていた。