AP01.ファースト
中学3年のとき、俺は変わった。何故か全く学校に行かなくなった。
楽しくなかったから。おもしろさ、意味、全部わからないから。
毎日ツレの家にたまって、15のガキのくせして煙草吸って、他の奴とは違うぞアピール。
今思うと、何してたんだって笑える。
15そこらの男の会話なんて、ほとんど下ネタ。
あれはどうだ、これはどうだ、近況報告、彼女との進み具合。
たまに、何何中のアイツがどうだこうだ、何々中のあの子が可愛い、だとか。
「椙さんマナミとどこまでいった?」
「ヤッた」
ひょろくて可愛い顔した、椙原亮がさらっと噂の彼女との状態を、田舎の15には刺激あることを言ってのけた。
「まじか・・・」
たまり部屋の主、奥俊が煙草の灰をポロっと落として力なく言った。
俺は言葉も出ない、まさか、と思って聞いたら、椙はもう童貞卒業してた。
「まあまあまあまあ」
「どうだった?」
「良かった!」
椙が、自信満々に微笑むから、俺とオクシュン含めてみんなが目をぽかんとさせた。
焦らなくてもいいのに、そのにんまり笑顔に妙に悔しくて、
それが原因で、俺たちは”競争”のようにどんどん”卒業”していった。
俺ももちろん、その時めちゃくちゃ焦った。
当時は彼女と別れたばっかりで(ヨリ戻し回数2回目)あてがない。
そんな時都合よく1こ上の女の先輩が俺に猛アピールをかましてきた。
その人はたまり場の住人である西澤正規の彼女であった。
だから、メールも電話もハラハラドキドキで、スリル満点で。
ニシザワには申し訳ない気持ちもある、だけど何故か優越感もあったから、先輩との関係は止めなかった。
3回目に会った時、その時がついに来た。
「アタシ、正規と別れた」
聞きたかったようで、聞きたくないようなセリフだった。
俺はとりあえずうなずいて、「ああそっか」とでも言おうとしたら、先輩が急に抱きついてきたから、さあ大変。
「は?どういうこと?」
わかってるでしょと言わんばかりの、エロい顔されて、つばをのんだ。
15なんて思春期真っただ中。女の子に敏感にナリマス。
ましてや先輩。俺に選択する資格はない。年功序列だ。
誘ってきたのは先輩なんだから。
「・・・いいよ?」
俺が聞いた最後の合図だった。
俺は、誘われるがままにツレのモトカノと体験した。
人生初が、この女だってこと、いまではすごく後悔している。
のちにツニシザワに会った。
ニシザワは俺を見つけるとニタっと笑って近づいてきた。
逃げようとしたけど、肩抱かれた。目を合わせづらかった。
「楽、先輩とやったろ?」
俺は無言でうなずいた。殴られること覚悟でうなずいたら、ニシザワはなんと抱きついてきた。
同情するように背中をポンポン叩いて、不気味だったから顔見たら、全く怒ってない、むしろ笑ってる。
「俺たちやられたな」
「どういうことだよ」
「アイツ、ドーテーキラーだった!!」
ひゅーっと風が吹いた。
俺とニシザワの、何とも言えない気持ちを代弁してくれるように。
こんなバカなことしたことは、ニシザワが元彼女に昔言ったらしい。
したら、爆笑してたらしい。あたりまえだな。
こんなこと思うのは気持ち悪いかもしれないけど、やっぱり完全に好きな人のが一番理想だった。
できればやり直したいトコロ。