手術
病院に着いて二時間が経過したところで、手術室のオペ中のランプが消えた。
ガラッと手術室のドアがひらいたと同時に、侑実のご両親が先生に駆け寄った。
「先生、手術は…娘は無事ですか⁉︎」
侑実のお父さんがたずねると、先生は…
侑実のお父さんとは、全く真逆の表情で
「大丈夫ですよ。娘さんは、よくがんばりました。成功ですよ」
と、顔をくしゃりとして微笑んだ。
そのやりとりをみたオレたちは、全員肩を撫で下ろした。
よかったー。
ここにいた誰もがそう思ったことが、空気で感じ取れる。
ガラガラとストレッチャーにのせられて運ばれてきた侑実は、意識がないようだ。
「しばらくすれば、目がさめることでしょう。では。」
先生と看護師さんが微笑み、ペコッとお辞儀をして、去っていった。
頭に包帯がぐるぐる巻きだった。
脳の手術だったのか…
侑実…
こんな大変なこと、一人で乗り越えたんだな…。
怖かっただろうな。
頭の手術だったみたいだけれど、髪はきちんと残っていた。
分け目から手術ができるらしく、髪を切らなくても大丈夫なのだとか。
すげーな。
そんなことができるなんて。
「みんな、長いこと侑実の手術に付き合ってくれてありがとうね。喉が渇いただろう?おじさんもカラカラだ」
「そうね、みなさんで飲み物いただきましょう。」
「あ、でもさっきもいただいたし…おかまいなく」
里香の言葉に、侑実のお母さんが
「いいのよ。わたしもゆっくりみんなとお話ししたいわ。少し付き合っていただけないかしら」
優しく微笑む侑実のお母さん。
そう言われたら…ついご馳走になっちゃうよね。
侑実のご両親が、自動販売機へと誘導してくれた。
皆それぞれ、飲み物を購入していただいた。
お父さんが、コーヒーの蓋をあけて少し上にかかげてごくりと飲んだ。
それに続いて、皆気持ちエアー乾杯みたいにして、軽く頭を下げ飲み物を喉に流し込んだ。
病院では、静かにしなくちゃだもんね。
皆で椅子に座り、ホッとひと息ついた。
ほんと無事に手術が終わってよかったー。
安心したオレは、
「そろそろバイトなので、オレは失礼します。ジュースごちそうさまでした。侑実にもよろしくお伝えください」
と、席をたった。
ほんとは、今日はバイトじゃない。
でも、もしかしたら侑実が目を覚ました時に、オレがいたらイヤな気持ちになるかもしれないと気を利かして、帰ることにした。
すると、オレの後に続くように篤人と稜も席を立った。
「「じゃあ、オレたちも失礼します。ごちそうさまでした」」
「私たちは…まだいてもいいですか…?」
不安そうにお母さんに聞く里香。
お母さんは、笑顔で
「ありがとう。侑実、喜ぶわ」
と、言ってくれていた。
「じゃ、よろしくな」
「うん」
篤人が由華に小声でそう言ったあと、オレたちは、侑実のご両親にお辞儀をして病院をあとにした。
オレたちが帰って三十分後、侑実は目を覚ましたそうだ。
意識もちゃんとしていて、退院も早そうだと里香たちから、いい知らせをいただいた。
侑実は、学校に復活すると元通り里香と由華と仲直りしていた。
で、桜乃さんはどうしたかと言うと…
そのまま友達続行で、オレたちは七人で一緒に過ごすようになった。
七人…
その中の一人の桜乃さんが、オレは好きで…そんなオレを侑実は、好きで…その侑実を稜が好きだったりする。
世の中は、うまくいかないもんだ。
しかし‼︎
最近どうやら、桜乃さんがオレを意識しているっぽいんだよねー。
なので、もう一度告白したら、ワンチャンありなんじゃね⁉︎ってことで、みんなで遊んだ帰りに、今度はきちんと気持ちを伝えたんだ。
オレは、やっぱりまだ桜乃さんが好きですって。
そして、オレたちはそのままゴールインなわけなかった。
桜乃さんは…
オレの目を真っ直ぐみて、ごめんなさいしてきた。
…
終わった
両思いって言葉は、空想の世界でしかありえないのでしょうか?
オレは…てっきり両思いで、このままキスしてこんにちは♡だったのに…
…
お疲れ様でーす
心のシャッターがしまります。
いや、フラれたからって心のシャッターしめなくてもいいよね。
てことで…
オレは、フラれたあとも普通に桜乃さんと接した。
絶対両思いだと思ってたのに…
めっちゃ両思いの自覚あったのに…
オレは…どうしてこんなに自信満々だったのか、大人になってから恥ずかしく思った。
それからだいぶ月日は、経ち…
七人の青春のオレたちは、卒業するはこびとなりました。
決まった空間で生活するのが窮屈に感じていた頃もあった。
しかし、今はもう自由の身に近い。
あの頃のあの空間が、懐かしい。
そして、もう一度戻りたいとすら思えるのだから、オレって生き物はわがままなやつだ。
でも、そんなことできるわけないので、たまにみんなであって、プチ同窓会をしているのだ。
その同窓会で、オレはとあることをきいてしまったのだ。
続く。




