第10章 考えて答えが出ないなら
部屋に戻ったユウは、シャワーも浴びずベッドに倒れ込み、しばらく天井を見上げていた。
(……疲れてる。今日は訳の分かんねぇことばっかりだ。)
ユウはざらついた溜息を吐き、起き上がる。
シャワールームへ向かい、冷たい水を浴びて熱を帯びた思考を無理やり冷やした。
だが──
ノアの濡れた髪、揺れた声、震えた喉が、瞼を閉じるたびに浮かんでくる。
(……クソ、考えるな。)
シャワーを終えたユウは髪も拭かずにベッドへ沈み、
そのまま深い眠りに落ちた。
♦︎
朝。
薄い光に照らされながらユウは目を開ける。
眠った気がしない。
気だるい身体を引きずり、リビングへ向かう。
扉を開けると、シオンが資料を見ながらうとうとしていた。
「徹夜かよ、お前……」
「ん……大丈夫。いつも通り。」
ユウは呆れながらも軽くシオンを後ろから抱く。
シオンは一瞬だけ安堵したように微笑み、ユウの腕に触れた。
「……で、何が分かった。」
姿勢を正したシオンは端末をユウに向ける。
「ヴァレリオの動き。
あと……ノアがどこに戻ったか、ほぼ確定した。」
ユウの瞳が細くなる。
「……言え。」
「このルートを通って、この地点。
おそらくここが奴らのアジト。」
地図にいくつかの光点が浮かぶ。
「ヴァレリオの部下の巡回時間も割り出した。
動くなら今日だよ。今が一番、スキがある。」
「……そうか。」
ユウは腕を組み、深く息を吐いた。
出るタイミングは、決まった。
だが準備をしようとした瞬間、シオンが声をかける。
「ユウ。」
「……なんだ。」
少しの間──
そして、弱い声で。
「……俺のところに、帰ってくるよね?」
ユウは不安を隠せないシオンの頬に唇を寄せる。
「当たり前だろ。ここは俺の居場所だ。」
それだけ告げて立ち上がり、部屋を離れた。
♦︎
廊下に出た瞬間。
ユウは深く息を吸い、額を押さえた。
ボスの言葉──
「楽しめよ」「逃げるな」が耳の奥に蘇る。
「……考えて答えが出ねぇなら、楽しむしかねぇか。」
ユウは革靴を鳴らし、ジャケットを羽織る。
「さぁ、ショータイムだ。」




