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落下音はだいたい悲鳴から始まる

「――ぎゃああああっ!?」


 目を開けた瞬間、私は空を飛んでいた。いや、正確には――落下中。


 体が浮いた感覚と、胃が置いてけぼりになるアレ。

 風が耳を裂く。やばい、これ夢じゃない!


(なんで!? さっきまで理科室で、発光実験してただけでしょ!?)


 白い光が爆発した。

 それから、気づいたら真っ青な空。

 青が濃くて、まるで絵の具を垂らしたみたいな色だった。


「だれかああああ!! 助けてぇぇええ!!」


 叫ぶ声も、風にちぎれて消える。

 あ、終わったかもしれない……と思った瞬間、視界の端で何かが光った。


 次の瞬間――どっしゃぁん!!


 草のにおいと、背中に走る衝撃。

 目の前に見えたのは、奇妙な紋様の刻まれた石の輪。まるで門の跡のような……?


「……生きてる。たぶん。いや絶対、青あざできた」


 立ち上がろうとして、足がもつれ、座り込む。


 「何が何だか......そもそもここはどこなの!」


マオは思案する。締切ギリギリの仕事をなんとか終電前に終え、間違いなく家に向かっていたはずだ。

 

「はぁ...今日の夕ご飯、生姜焼きの予定だったのに」


スマホももちろん圏外、とにかく場所がわからない。

 人を探さなきゃ!

 

 「だれか〜〜いませんか〜〜!!」


 そのとき、低い唸り声が耳に届いた。


「ガルゥゥゥ……」


「えっ、なに!? 犬!? いや、狼!? サイズおかしくない!?」


 金色の瞳を光らせた巨大な狼?が、私を見据えていた。

 よだれ、たれてる。食べる気満々じゃん!


「ちょ、ちょっと待って、私おいしくないよ!? 朝ごはんまだだし!!」


 じりじり後ずさる。

 狼が一歩踏み出した瞬間――空気を切り裂くような金属音が響いた。


 びゅんっ、と風を裂いて飛んできた剣。

 狼の前足すれすれを掠め、地面に突き刺さる。


「……誰だ!」


 その声がした方を振り向くと、そこにいたのは――

 黒髪を後ろで束ね、鎧をまとう長身の男。陽光を反射する銀の肩鎧。

 まるで現実から浮いて見えるほど整った顔。


(……え、二次元? これ夢? ねぇ夢って言って)


「おい、そこの女。怪我はないか」


「えっ……あ、あのっ、はい! 狼が……その、いま……!」


「見ればわかる」


 男はため息をつくように言うと、剣を軽く構えた。

 その動作ひとつで、風が変わる。

 剣を振るった瞬間、閃光。

 狼が一声もあげずに崩れ落ちた。


「――終わりだ。……まったく、また結界が歪んでいたのか」


 そうつぶやく彼に、私はただ呆然。

 いや、強いしカッコいいけど、命の恩人だけど、状況がカオスすぎる。


「……あ、ありがとう、ございます?」


 声が震えた。すると男はわずかに眉をひそめた。


「このあたりに人の村はないはずだ。何者だ、お前は」


「あ、あの、私――えっと、家に帰る途中で……」


「お前は空を飛びながら家に帰るのか?」


「違います! そんなスーパーマンなことはできません!!」


って、私落ちてるところ見られていたのか。


「……すうぱぁまん?」


 男は一瞬、目を瞬かせるが、すぐに真顔に戻った。


「名のれ、どこの国の者だ?」


「え、あ、えっと……桜井 真央さくらい・まおです」


「マオ、か。俺はレオン・ヴァルドだ」


 

 名前からしてカッコいいけど、理解した。間違っても日本ではない。


 と、そこへ甲冑の音が響く。


「団長! また結界の外で異変が!? ……って、わ、女の子!?さっき空飛んでいたのはこの子だったの!?」


 若い騎士が駆け寄ってくる。

 どうやら仲間もいるらしい。


「そうだ、降ってきたのはこいつだ。一旦連れていくしかないな...」


「えっ、私捕まるんですか?」


「まあ似たようなもんだな」


「えっ......」


「団長!怖がってるじゃないですか!お姉さん、保護ですよ保護!逮捕ではないですからねー、まだ」


この若い騎士、まだって言った???

でもついて行くしかないよね、、

あんな狼まだ出てきたら私一人じゃどうにもならないよ。


「お前はもう見つかってしまったんだ。こちらに着いてくるしかないぞ」


「念押しされなくても分かりましたよ...ついていけばいいんでしょ!」


マオは諦めた。



------




「団長、あの子、もしかして“光渡り”では?」

「……軽々しく言うな。まだ確証はない」


 レオン団長は淡々と返す。

 その金の瞳が、少しだけ――揺れていた。

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