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第2話運命の出会い

大湊家に預けられてから5年。

5歳になった俺は、大湊家の子供として大事に育ててもらっている。正直、出産時の記憶を持つ俺からしたら、気まずさを通り越して申し訳なさが勝ってしまう。連れてこられて早々、気を失った俺は大湊家の人達と、近隣住民の協力や医師のおかげで、一命を取り留めることができた。が、治療が遅れた為、肺に穴が空いてしまい常に息苦しさに悩まされた。完全治療を目指してはいるが、医師の話しでは、特殊らしく難しいらしい。そのせいで、かなり過保護に育ててもらっている。


「大鯨。今日の調子はどうだ?」

「元気だよ。今日こそ手伝うよ!」

「あぁ。……大丈夫だ。今日は、不漁らしくてな。家で遊んでなさい。」


またか。


この国では、俺ぐらいの歳でも仕事や家事の手伝いをするのだが、父や母は体を心配してか、部屋から出そうとしない。もしくは、別の理由があるのか……。


「大鯨ーー⁉︎」

「ぐぁ⁉︎」

「あっ!愛宕、お前は〜、危ないだろ!」

「え〜、大丈夫だよ。大鯨なら、平気平気。」

「まったく。お前ってヤツは…。」


父と話していると、後ろから駆けてきた愛宕に飛びつかれ、前に倒れそうになるが愛宕に抱き寄せられる形で、倒れることは回避した。


「それに、外に出て体を動かさないと、病気になっちゃうよ?」

「むぅ〜。……わかった。だが!無理だけは禁物だぞ!」

「は〜い。じゃっ!行こう!!」

「えっ⁉︎」

「愛宕!」


父の注意を聞かずに、俺の腕を掴み引っ張るように、外へと走り連れ出してくれる。


「お姉ちゃん。今日はどうしたの?」

「今日は、加賀さんが来てくれるの!大鯨にも見せてあげたいの!」


いつもテンションの高い姉だが、それと比較にできないほど、興奮している様子なので軽く引いてしまう。その疑問は、姉の言葉を聞いて理解した。


加賀。自国軍の第一部隊の副隊長兼、国軍人事統括を行っている人物を指しており、姉の憧れる人物である。


「第一部隊が、お見えになること事態珍しいのに、その副隊長が来られるなんて何事ですか?」

「ふふふ。」

「……。お姉ちゃん?」


不気味な笑いをしながら、俺を引っ張っていく姉を見て不安な気持ちでいっぱいになる。


大丈夫なのか?これ?


そんなこんなで、坂道を下りて行くと古びた木造建築の平屋に着く。入り口の表札には、『零式剣術道場』と達筆な字で掘られていた。


「ここは?」

「私の通う剣術道場よ!ゆくゆくは、大鯨も入門することになるんだから、見学は必要でしょ?」

「いや、初耳なんですけど…。」

「だって、さっき決めたんだもん。」

「自由すぎでしょ…。」

「だけど、適正あると思うんだけどな〜。私の直感って当たるのよ?」

「まぁ…お姉ちゃんが言うなら。」


何故かはわからないが、愛宕姉は昔から直感が当たり、妙な自信というか変な感情が芽生える。


「入ろうか。」

「うん。」


姉は、門の前で一礼して敷地内に入り、先程と打って変わって真剣な面持ちで歩を進める。初めてみる真剣な表情と動作に、かっこいいと素直に思ってしまう。


「おはようございます!今日もよろしくお願いします!」

「おはよう。愛宕。今日はいつもより気合い入ってるな。」

「はい!師範、その…加賀様は?」

「まだ来とらんよ。予定時間には、まだだからな。」


道場内に入ると、すでに門下生が数人集まっていて清掃をしてる中、それを上座から見下ろす師範が、姉と数度会話を交わす。


「そちらは?」

「初めまして。愛宕の弟、大鯨と言います。本日は、見学に来ました。」


軽い自己紹介をすると、道場内の雰囲気がおかしくなる。門下生達は、隣同士で耳打ち話し合って動揺の色が見えた。


「ご丁寧にありがとう。私は、零式剣術道場の師範松島だ。愛宕から君について沢山聞いている。親御さんからは、許可はもらっているのか?」

「はい。問題ありません。今日は、いつもより体調が良いので、ご迷惑は、おかけしません。」

「そうか。見学だけなら、問題無かろう。…お前達、手が止まってるぞ?」

「「「⁉︎ごめんなさい。」」」


清掃の手を止めていた門下生に、睨みをきかせ清掃を続けさせた。


「愛宕。準備をしてきなさい。」

「はい!」


師範の言葉に従って、姉は奥の部屋へと歩いて行く。


「大鯨君は、私の横に来なさい。」

「はい。」


師範の隣に行くと小さな椅子を後ろから取り出し、座るように誘導されたので甘えることにした。


「大鯨君は、道場に来るのは初めてかい?」

「はい。家から出ることすら少ないので新鮮です。」

「…そうか。君は良い姉を持ったな。」

「?それは、どういう意味でしょうか?」

「今のは、聞かなかったことにしてくれ。バレたら、愛宕に怒られそうだ。」

「わかりました。よくわかりませんが、追求はしません。」

「そうしてもらえると助かるよ。」


はにかんでいる所を見ていると、近所の優しいおじいちゃんって感じだが、先ほどの表情とかを思い出すと、達人の人である事を忘れないでおく。腰にある刀を見ていると、失礼な事をしたら斬られるのではないかと、ハラハラしてしまい硬くなる。


あれ、本物だよね?


前世では、博物館とかでしか見た事なかったけど、実際に帯刀した人の隣にいると恐怖という感情が出てくる。子供を斬るような人には見えないが、それで成り上がってきたであろう人間を前にすると、当たり障りのない会話が続く中、会話を終わらせる声が入る。


「師範。準備できました。」


そんな事を思っていると、目の前には道場着に着替えた姉が立っていた。


「よし。準備体操を」


師範が立ち上がりながら次の指示を出そうとしたところで、閉まっていた戸が開き、全員の視線が、そちらに向けられる。太陽光が丁度重なり、目を細める。獣人?長い耳と4本の尾を持つ黒い影が、その場に立っていた。

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