表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
え、あ、はい、ワームですよ?  作者: 素知らぬ語り部
はじまり
9/36

9、長いものには巻かれずに結ぶ勢いで





「シャアアアァァ!」


 咆哮とともに牙が迫る。

 十字に開く口を駆使した急激な身体回転によってその大口をすんでのところで回避し、そのまま逃走に移る。

 蛇はその行動に疑問を持たず、狙い通りに空洞から這い出て追ってきた。


 その緑色の三角頭が影に覆われる。

 次の瞬間、蛇の頭に石が落ち、上がっていた頭が地に叩きつけられた。

 上を見ると、カラスが次の石を用意すべく、階段へ戻っていくのが見えた。


「シャア!シィーーー!!」


 蛇は石一つでは力尽きず、頭から少なくない血を流しながらも石を弾き飛ばす。

 そして、上空の敵ではなく、目の前の敵、すなわち俺へと迫ってきた。

 これは想定内だ。このまま俺がヘイトを負い、カラスがダメージを与えていく。

 弱ったところをカラスと俺でボッコボコにする作戦だ。


 蛇が俺の尻尾に触れそうになった瞬間、カラスの二投目がやってきた。

 再び蛇の頭に大きな石がぶつかり、流血を加速させる。

 さすがの蛇もかなりフラフラになっているが、焦点の定まらない瞳はまだ俺を見ていた。

 蛇の噛みつきをなんとか回避し、草むらに突っ込む。

 蛇は温度を詳細に感じることのできる器官を使って獲物を追うが、その獲物の体温が低くなれば、その器官は使えないも同然だ。


 ということで、水溜まりの1つに身を投げ、底にある泥を身体中に塗りたくる。

 その間に蛇に追いつかれたものの、やはり獲物の体温を見失って困惑しているようだ。

 その隙をついて逃走を再開する。

 蛇の視力はそう強くない。ある程度離れることができれば、勝手に見失うだろう。


 その予想通り、感覚器官の1つが獲物に反応しなくなった蛇は進む速度が遅くなり、やがて俺を完全に見失ったらしく、その場で止まった。

 それを狙ったかのように、カラスの三投目が蛇に迫る。が、地上の獲物を見失った蛇は空からの攻撃に対応し、石を軽々と避けて階段へと進み始めた。


 そこには、罠がある。

 蛇が階段を登ろうとした瞬間、一段目に仕掛けられていた細長い草が蛇に引っかかり、数段上に置いていた手作りのストッパーが草に引かれて外れ、大量の石が階段を駆け下りて蛇に襲いかかった。


「シャアアァ!」


 さすがに、そのまま大人しく石の下敷きにならなかったが、罠を警戒して階段を登るのを躊躇し始めた。

 そこへ俺が小石を投げ、蛇の視線をこちらに向ける。

 蛇は先ほど見失った獲物を見つけると、今までの怒りをぶつけるように猛スピードで迫ってきた。


 そこへ、四投目の石が直撃する。

 噛みつきは全く別の方向に逸れ、そこにあった水溜まりに突っ込んだ。


「シャアアァ!?」


 体温を感知する器官だけでなく、目も使えなくなった蛇は混乱し、身体に当たったもの全てを薙ぎ払う。

 そこにまた石を投げ、カラスの攻撃が当たりやすい位置まで蛇を誘導する。


 蛇は思い通りに動き、辺りに草むらがなく屋根になりそうなものもない開けた場所まで出てきた。

 そこへちょうど戻ってきたカラスが石を落とす。

 極度の混乱と興奮にあった蛇はそれを避けることができず、四度目の直撃を喰らった。

 そしてついに、蛇は完全に動きを止めた。


 近づくとまだ息があるのは分かるが、かなり弱っており、放っておいても勝手に死にそうだ。

 まあ、蛇は捕食者から獲物へと成り下がったので、俺が容赦なくトドメを刺すが。


 鱗に囲まれて硬そうなその首を咬むべく、蛇に近づく。

 蛇は逃げようと身体をくねらせるが、その進みはもはや地上の俺でさえ追いつくことができる。

 そのまま一思いに殺るべく、鱗が少ないところを狙って飛びついた。



 その瞬間、腹に鋭い衝撃が走った。



 ふき飛ばされながら衝撃が来た方向を見ると、そこにはまだ無傷の蛇がいた。

 二匹目が、静かな眼光を湛えて俺を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ