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え、あ、はい、ワームですよ?  作者: 素知らぬ語り部
踏み折られたギンセイジュ

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25、付き纏う影






「なんなの、それ………!」


「可能性があるというだけだ。決まったわけじゃない」


「で、でも!」


「それに、今はそんなことを話している場合じゃない」


 アスアサは一方的に話を切り上げ、そのまま通路の先へと歩いていく。

 俺もとりあえず脱出したいので、アスアサについていく。カラスも一緒についてきた。


「………………じゃあ、あのとき、アイツが来た理由は」


 だからこそ、地面に手をついて項垂れるタモティナの呟きを誰も拾えなかった。













「ここは………神無塔の下か?」


 通路の行き止まりにあったのは、見たことのある焦茶色の壁。どうやら、あの塔の下にたどり着いたようだ。


「あれ? ということは?」


 タモティナは松明をかかげ、壁の前の通路を照らす。

 そこには、光を反射する折れた剣や盾などの金属類や、盗賊の荷物らしきバッグ・リュック類、そして黒焦げになった焼死体と喰い千切られた死体があった。


「え、な、なにこれ………」


 タモティナはここまで悲惨なものがあると予想していなかったのか、口を押さえた。


「痕跡がないと思ったら、ここに落ちていたのか………」


 アスアサは死体の一つ、首から上がない死体に近づいた。

 死体のボロボロな服のポケットを漁るもめぼしいものはなかったらしく、舌打ちしながら別の死体へと近づく。

 タモティナもまだキツそうではあるが、死体を検分し始めた。


 手持ち無沙汰な俺とカラスは、荷物の方を調べることにした。


 しかし、荷物の中は雑多な物だけで特徴的なものはなく、そもそも血に濡れて判別が難しいものが多かった。


「ジャア………」


「カア………」


 またもや手持ち無沙汰になってしまった。

 二人を手伝おうかとも思ったが、知識のない者に寄られても邪魔なだけだろう。

 ということで、俺とカラスは見張りに徹することにした。

 あの大トカゲ達が全滅したとは思えないし、砂割竜がここに来ないとも限らない。

 ただ、ここはすでに行き止まりなので逃げ道をどうするか………


 そんなことを考えている内に、背後で動きがあった。


「あっ、これって」


 タモティナの声に全員が振り向く。

 タモティナの手には、銀色のネームプレートが握られていた。


「『第36番目団員 テレリーノ』。うん、ちゃんとテレリーノのネームプレートだ」


「ということは、奴は私達を引き摺り込んだ後、こっちに来たのか? それで今は砂蜥蜴の群れとやりあっていると………………いや、なぜここに来たんだ? 落ちた私達を狙うのが普通のはず………」


 一応、捜索隊の目標は手に入れたので少し安心していると、あの音が聞こえた。



 硬い砂塊を割るような、静かで、それでも耳に残るようなあの音。



「ジャア!」


「な、なに!?」


 ネームプレートを取ってしゃがんでいたタモティナに体当たりをし、その場から遠のける。

 そして、一瞬前の位置から特徴的な口が飛び出してきた。


「デュルバアア!」


「また奴か!」


 まだ体勢が整っていない俺とタモティナの横を通り抜け、アスアサとカラスが攻撃を仕掛ける。

 しかし、砂割竜の甲殻はかなり硬いのか、アスアサの曲剣は弾かれ、カラスの爪は傷一つ付けられていなかった。


「ダメだ! 逃げるぞ!」


「ジャア!」


 幸い、砂割竜は焦茶色の壁の方におり、通路は塞がれていない。

 問題は逃げ切れるかどうかだが………


 踵を返してすぐ撤退しようとした、その時。


「お前が、お前がぁ!!」


 タモティナの武器(壊刃というらしい)が閃き、砂割竜の甲殻に小さい傷をつけた。どうやら壊刃は質が良いらしい。


「あ゛あ゛あ゛ぁ!!」


 タモティナは攻撃をやめず、むしろ苛烈さを増していく。

 しかし、人一人を易々と呑めるほどの巨躯の前では、かすり傷を量産しているだけに過ぎなかった。


「デュルゥ!」


「がっ!?」


 尻尾どころかヒレの一振りでタモティナの身体が飛び、砂の壁に叩きつけられる。

 だが、タモティナの目はまだ諦めていなかった。


「やめろ! やるなら勝てる算段をつけてからだ!」


 アスアサは砂割竜に向かおうとするタモティナの身体を止め、手を引いて走り出す。

 タモティナはまだ恨みがましく砂割竜を睨んでいたが、吹き飛ばされた傷が痛むのか、大人しくアスアサに従った。

 俺は潜り、カラスは飛んで通路を駆け抜ける。

 しかし、相手は俺よりも早く砂中を泳げる。

 つまりは、


「ダメだ! 追いつかれるぞ!」


 目の一つを後ろに向けてみれば、砂割竜は大口を開けて猛然と迫ってきていた。

 このままでは、あと数十秒くらいで追いつかれるだろう。

 俺が砂中を泳いで砂割竜を引き付けることも考えたが、砂割竜はタモティナをロックオンしているらしく、俺の誘いには乗らなかった。


 そうこうしているうちに、もはや砂割竜の息遣いが聞こえるまで距離が近づいてしまった。


 そして、


「クソがッ!!」


「アスアサ!?」


 先頭を走っていたアスアサが急に反転し、砂割竜へ向かっていく。

 鞘から抜かれた曲剣は、赤いオーラを纏っていた。


「こん野郎がぁ!!」


 アスアサは砂割竜の口をギリギリで避け、曲剣を投擲する。

 すると、曲剣はあり得ない角度で曲がり、砂割竜の右目に吸い込まれるようにして突き刺さった。


「ッ!!?」


 砂割竜の声にならない悲鳴が上がり、その巨体を滅茶苦茶に振り回し始めた。


「ぐうぅ!」


 アスアサは運悪く尻尾に当たり、タモティナのときとは比にならないレベルの勢いで壁に激突した。

 だが、砂割竜はそれで済ませる気がないらしく、アスアサの方に向く。


「ジャ、ジャア!」


「来るな! 早く逃げ」


 砂割竜の尻尾が、未だ砂埃が舞う壁に叩きつけられる。

 通路全体が揺れ、上からいくつもの砂塊が落ちてきた。


 その直後、




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