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え、あ、はい、ワームですよ?  作者: 素知らぬ語り部
はじまり
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2、砂と血





 意識が突然覚醒し、跳ねるようにして目が覚める。

 しかし、体は全く動かず、ザラザラとした感触がした。

 その感触は身体全体を囲み、全方位から圧力をかけている。

 その感覚は初めてのはずなのに、毎日感じていたような『当たり前』が付きまとう。


 ただただごく自然に、『当たり前』のような感じで、俺はナニカに転生したことが分かった。







 俺が最初に確認したのは、『システム』の存在だ。

 転生はまだ良いとして、ここが異世界であるのか確認したかった。

 結果は、以下の通りだった。


〈名前〉フェドマ・レニア

〈種族〉鳥獣種・ワーム族・リトルサンドワーム

〈スキル〉砂泳Lv1・咬合Lv1・消化Lv1・飢餓耐性Lv2

〈称号〉なし


 異世界無双特有の『鑑定』スキルなしでも、自分のステータスが見れた。

 すでに名前がついているのが気になるが、それよりも俺が転生したナニカはサンドワームということが分かった。

 確か、サンドワームは砂漠に生息していると言われるヒルのような手足のない架空生物の一種で、ある種類では毒と電気を使うとも言われている。

 そして、サンドワームの生息域は砂漠。砂中を泳ぎ、砂から飛び出して獲物を丸呑みにする。

 音に敏感で、盲目にもかかわらず的確に襲いかかる………


 俺が知っているサンドワームの主な特徴はこれくらいだ。

 全部が全部この世界のサンドワームに当てはまるとは限らないが、これらを基準に動いた方が良さそうだ。


 まず初めに、どう動くか、そもそも動けるのかの確認をした。

 かなり時間がかかると予想していたが、割とすぐに動き方が分かった。

 どうやら、この体はポッとここに現れたわけではなく、サンドワームが俺自身の記憶を思い出したような感じらしい。身体の動かし方はこの身体自体が覚えていた。


 次に、地上を目指してみた。

 目が見えないにもかかわらず、方向感覚は失われておらず、上に向かって泳いでいると周りが段々熱くなってきた。

 おそらく昼なのだろう。もう少し泳いでみると火傷しそうなくらい熱くなったので、すぐに地の深くへ戻った。


 その次、今度は日陰を探した。

 どう探していいのか分からなかったが、遠くから聞こえたカサカサという音のもとへ進むと、そこだけは砂が冷たいままだった。

 試しに地上に出てみると、そこはさまざまな音が反響して聞こえてきた。

 それらは硬く、鋭角に反射してきており、サンドワームの本能的に周りが岩だと分かった。

 また、水の滴る音や、草の風に揺れる音も聞こえたので、ここはオアシスだと判断した。

 現在、俺はオアシス周辺の岩場にいるらしい。


 最後は、獲物を探した。

 結構動いたせいか小腹が空いており、今後の生活も考えて狩りの方法を確立することにした。

 幸い、耳が良いおかげで獲物の位置が分かりやすく、すぐそばまで近づくことができたが、そこからを考えていなかった。

 俺は、サンドワームの捕食方法は丸呑みだと思っているが、どう丸呑みするのかを知らない。

 ちなみに、口は四つに裂けていて、上顎下顎右頬左頬に分かれているような感覚だ。これは、知識の中のサンドワームにはなかった。

 それも、丸呑みの方法を混乱させる一因になった。


 結局、一か八かで獲物、鳴き声的にネズミのような動物を襲った。

 俺の口はネズミの尻に食い込み、ネズミをその場から動けなくしたが、さあここからどうする状態になってしまった。

 丸呑みするためには口を開かなければならないが、そうするとネズミが逃げてしまう。

 一度、蛇のように巻きついて固定しながら丸呑みするかと思ったが、それをするには体の長さが足りなかった。

 そのままその場でウンウン唸っていると、ネズミの抵抗が小さくなってきた。

 それに伴い、俺の口の中に血が溢れた。


 失血死だった。


 俺は動かなくなったネズミをやっとのことで丸呑みにし、砂中へと潜った。

 その直後、いろいろな足音が先ほどの場所に殺到した。

 どうやら、血の匂いを嗅いで来たらしい。


 なんというか、困難があったとはいえ意外にも狩りは簡単だった。

 命を奪うのが、簡単だった。


 捕食される側には、絶対なりたくない。

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