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第一話『玉響の行き違い』(続)

踏めば踏むほどぎしっと鳴る家は久しぶりだ。落ち着いた木造建築のようで、実家のような安心感がある。しかし、海の近くに建っている木造建築は手入れが大変だろう。塩にあてられ腐食するのが目に見えている。


もちろん、金属や鉄筋コンクリートでも悪くなることに変わりはないが、この家は違う。二階建ての広めの一軒家。きっと家族で住んでいたのであろうことが伺える内装。民宿、というよりも友達の家に泊まりに来た感覚に近いかもしれない。


「二階のこの部屋が客室です。朝食と夕食はこちらでご用意します。一階で食べるので、下まで降りて来てください。お風呂は湧き上がったら呼びに参ります。トイレは二階の突き当たり、一階は浴槽の隣にありますのでご自由にお使いください。何かご質問はありますが?」


「え、えーっと……あの、料金って一泊いくらくらいで……」


「そちらは最後の日にまとめて請求致します。大金を要求することはないのでご安心を」


「あっはーい……」


それでは、と言って頭を下げる彼女。長い髪の毛は腰まであるようで、綺麗に一つに結ばれていた。丁寧な言葉遣いをしているが、どこか距離を感じるので寂しくなった。


階段を降りていく黒髪少女を見送った後、目の前の扉を見つめる。『客室』とだけ書いてあるようで他は何もない。質素な部屋なのかな、と思いドアを開けると目に入ったのは真っ青な海。嫌という程見ていた海が、太陽の光を反射している。


目を細めても刺さる光に「こんなに綺麗だったっけ」と言葉を零した。床はフローリングではなく畳になっており、外観から想像していた部屋そのものだった。


「はーあ。ちょっと、疲れたなぁ」


ゴロンと寝転がり、外から入ってくる風を感じる。あぁ、廊下に置きっ放しになっているキャリーケース、持って来ないとなぁ。頭の中で考えながらもウトウトしてくる。


暑い中、鉄の塊ほどの重さがある荷物を運んだからかもしれない。思っていたよりも疲れが溜まっていた私は、そのまま夢の中へと落ちて行った。


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