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プロローグ
身震いするような炸裂音。
耳を塞ぎたくなるような叫び声。
ツンと鼻の奥を刺激するのは一体、何の臭いか。嗅ぎ慣れているものでも、臭いと思ってしまうのは避けては通れない人間のさがなのか。いつまで続くか分からないこの戦争は、誰が終わらせてくれるのだろう。
私はいつになったら、普通の女の子になれるのだろう。
「敵を発見! 殲滅せよ!」
ガラガラに掠れた声の持ち主が全力で叫ぶ。彼の声に反応するように私の体は動き、迫り来る自分とは異なる装備を身につけた人間へ立ち向かっていく。走れば走るほど風は激しく通り抜け、立ち向かえば向かうほど周囲の人がいなくなっていった。非現実だと思われる光景の中で生きる私は一体、何者なのか。
「……早く、死にたい」
ザクっと一思いに刺したそれは一瞬魚のように動いたが、すぐに力尽きる。手に持っている凶器を抜いて、ドクドクと溢れ出る赤い液体を見つめた。
誰に願っても叶わない、叶うことのない願いはきっと、このまま消えていくのだろう。