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海へ(仮)  作者: 雨水 音
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序話

皆さまどうも。雨水音です。初連載作品です。至らぬ点も多いと思いますが、どうぞ温かい目線で読んでいただけると幸いです。では本編へどうぞ。

私は澪。皐月澪(さつきみお)。現在十五歳、いわゆる女子高生だ。受験期、もはや異常とまで言われるくらいの勉強をし、秋ごろの自分の偏差値よりずっと上の県立白波高校に入学した。その理由は、白波高校にはダイビング部があるからだった。

私は、物心ついたころから海に興味を持っていた。綺麗な水中の世界に心を奪われた。私は幼いころから、休日は両親とよく水族館に行っていたと思う。水族館に行けば、一つの水槽に多ければ一時間強の時間をかけて、魚の生態をよく観察するという、子供とは到底思えないようなことをしていた。というか、なんなら今もその習慣が根付いている。水槽の前にいると、何故か魚が寄ってくるから、観察しやすいのだ。

話を戻そう。白波高校に入学した私は、体験入部期間が始まったその日にダイビング部に入部届を出した。部員は、私以外に三年生が三人、二年生が五人。そして、一年生は私と、隣のクラスの男の子の二人だけ。たった十人しかいない小規模な部活だけれど、どうやら顧問の先生がこの市のダイビングセンターと繋がりがあるらしく、格安でダイビングに必要なものを提供してもらえるのだそうだ。

今日は体験入部期間終了後、初めての部活でのダイビング。白波高校に通う多くの生徒たちが住んでいる白浜市には、どこまでも澄んでいて、ずっとずっと海の奥の海底まで見渡せそうなくらいの海がある。白浜市に面している海の波は一年を通して穏やかで、初心者向けとして有名なダイビングスポット。まずはそこの浅瀬で一年生に経験を積ませるというわけだ。

「澪ちゃん、大丈夫?緊張してない?いやまあ、澪ちゃんは経験者だから、そんなでもないか」

バスから降りて歩いていると、部長のやよい先輩が私の肩をぽんと軽くたたいた。やよい先輩の高い位置できっちりと結ばれた焦げ茶のポニーテールが揺れる。気さくで明るいやよい先輩は、私のあこがれの存在だ。

「まあ……、人並みに緊張はしますけど、今はそうでもないです。やよい先輩もいますし」

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。おだてても何も出ないぞ~。はい、飴ちゃんあげる」

いや、何も出ないとか言いつつ、飴出てきたじゃないですか……と一瞬言いかけたけれど、私は代わりにお礼の言葉を述べて、飴を受け取った。包装を破いて、丸くころりとした飴を口に放り込むと、レモンのさわやかな香りが口いっぱいに広がった。潮風が海沿いの道を歩く私のボブカットを揺らす。あと一週間後、五月に入れば、もう夏は目前だ。

「着いたぞ、ここが先生の友人が経営している白浜ダイビングセンターだ」

顧問の声に顔をあげると、大きな建物が視界に映った。白波ダイビングセンタ―は、私の想像以上に綺麗だった。白い壁が、どこか西洋の石灰が塗られた建物を連想させる。

「じゃあ、各自着替えて海のほうに集合して!九時には船、出るからね!」

やよい先輩の声で、部員たちが更衣室に向かい始めた。私も行かなくては。さざ波の音がして、私は海のほうに振り向いた。一瞬、煌めく水面で白い何かが跳ねた気がした。けれどそれは瞬きひとつの間に消えてしまっていた。

「澪ちゃん!遅れるよ!」

 「はい!今行きます!」

 こうして、私の高校生活が、この夏の物語が、運命が、動き出したのだった。


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