月が、なくなった。
今日は、満月の夜。
なのに、夜空に月が無い。
昨日まで、未完成の月が夜空に浮かんでいたのに。
その月が、見当たらない。
夜空にはいくつか雲が浮かんでいて。
雲に隠れてるのかと思ったりもしたけど…
泳ぎ過ぎるどの雲の後ろにも、月はない。
今日は、満月の夜。
普通なら、満月が夜空を煌々と照って、辺りをやさしく照らしてくれるのに…
夜空に浮かんでいるはずの満月がいないせいで、世界は真っ暗に沈んでいた。
夜空を見上げながら、私がハラハラしていると。
【あ、もう夜か。すまんすまん、ちぃと寝過ごしてしまったわい】
ふいに夜空に四角い空間が現れ、まるで両開きの窓が開いたように、夜空が開いた。
開いた夜から満月が現れたのだ。
満月はそう言うと、開いた夜を閉じて夜空に浮かんだ。
今日は中秋の名月、そして満月の日。
満月は煌々とやわらかに微笑みながら。
夜空と世界をやさしく照らしていた…