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【完結済】生まれ変わっても一緒にいるとか言ってません!  作者: 紫藤しと
第三章 魔王の誕生

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5.聞き込み

 魔女に連れられて向かった先は姉の所だ。姉は突然部屋の中に現れた僕に大騒ぎし、そのせいで姉の婚約者まですっ飛んできた。


 色々な質問に僕は全部「姉さんに会いたかったから」と答えた。姉に抱きついて泣きまねをすれば、姉はいつものようにすぐ騙されてくれた。もう夜遅いからという姉の婚約者の一声で僕はドーナー家の客室で眠ることになった。計画通りだ。魔女は僕が茶番劇を演じている間にいつのまにか姿を消していた。


 翌朝、昨日の服を着て姉の部屋で一緒に朝食を取った。弟が夜突然魔女と一緒に現れたというのに、なぜか姉は嬉しそうだった。


「姉さんは学校行ってないの?」


 朝食後のお茶を飲みながら、全く出かける様子のない姉に聞いてみた。


「学校? ああ、王立学園ね。なんか・・・行きそびれちゃって。」


 姉は照れたように笑った。どこに照れる要素があるんだろう。


「そう。時間があるならそろそろ本題に入りたいんだけど、その前にあの人何?」


 部屋の壁と同化するように全く動かない黒髪の男を指さす。朝、僕が姉の部屋に入ってきた時から一ミリも動いていない。給仕でないことは確かだ。


「え? ああ、クロそんなとこにいたの・・・護衛だよ、ドーナー家の。」


「部屋の中にまで護衛が必要?」


「うーん、でも昨日みたいに突然部屋の中に人が現れることもあるし・・・」


「姉さんの知り合いの中に瞬間移動ができる人って何人いるの?」


 姉は首を傾げて考え始めた。これまでの姉の付き合いの中では強い魔力を持った人間なんていなかったはずだ。いつの間にそんな人たちと出会ったのだろう。


「3人かなぁ・・・ルビーもいれて。たぶん瞬間移動って普通は魔力強くてもできないみたいよ? ハジムはできないし。」


 ハジムは姉の婚約者の名前だが、呼び捨てにするのは今日初めて聞いた。たった二か月で随分仲良くなったもんだ。


「そっか。実は今から姉さんに色々聞きたいんだけど、彼には聞かれてもいいんだね?」


「内容によるかな・・・」


「100年前のこと、なんだけど。」


「ああそれなら大丈夫。」


 そんな事かと言わんばかりの姉に戸惑ったが、ここで引いても仕方がない。僕には圧倒的に情報が足りないのだから。


「まず姉さんのことなんだけど、100年前姉さんはどこで何をしてたの?」


「ドーナー領で領主補佐をしてた。」


「男だったってほんと?」


「うん。・・・ルビーに聞いたの?」


「まあね、ルビーと友達だったって聞いたよ。」


 ともだち?と姉は呟いて首を捻った。


「ちょっと喋ったことがあるだけで友達ではなかったけどなあ・・・ハジムが怪我をした時に治してくれたのが当時治療師をしてたルビーだったんだよね。あとハジムの兄とか姪の友達とかと知り合いで何度か会ったことがあるって感じ。」


 内心これは困ったと思いながら相槌を打った。質問を考えなければ姉の前世を一から十まで聞くことになってしまう。


「姉さんはその、前世の記憶っていうのをいつ思い出したの?」


「最近。この部屋ってさっき言ったハジムが大怪我した時に寝てた部屋なんだ。そういうので何となく。」


 なるほど、姉が実家にいた時と人が違って見えるのは前世の記憶を思い出したせいか。


「他に前世の記憶がある人はいるの?」


「ハジムぐらいかな・・・100年前からずっと生きてるから当時を知ってるっていう人は3人。ルビーとハジムの前世のお兄さんとその恋人。」


「ハジムさんも知ってるんだ・・・」


「うん、俺よりもハジムの方がルビーについては詳しいかもね・・・」


「姉さん?」


 呼ぶと姉はきょとんとした顔をした。どうやら自分で”俺”と言ったことに気付いていないらしい。


「いやなんでもない・・・ところで姉さんはパプルについてどのくらい知ってる? 100年ぐらい前、城で近衛をしてた僕らの先祖なんだけど。」


「全く知らない。」


「パプルが守ってた王族については?」


「当時の王族? ・・・一度だけハジムと一緒に挨拶したことがある、緊張した。」


 その後も言葉を尽くして姉から情報を聞き出そうとしたが、結局ろくな情報は得られなかった。やっぱり姉さんは姉さんだ。




 夜遅くに姉の婚約者の部屋を訪れた。非常識だとは思うが、時間は先方の指定なので仕方ない。ハジムは直前まで仕事をしていたようでスーツのままだった。


「ごめんね、夜遅くに。」


「いえ、僕の方こそ突然押しかけてきてしまい申し訳ございません。」


「シナト家の方には早馬でうちで預かってるから問題ないって伝えたよ。さっきご両親から申し訳ないがよろしくと返事がきたばかりだ。」


 手回しの良さにもう一度頭を下げる。あまり借りを作りたくない相手だったが、こうなったら開き直るしかない。


「・・・それで、ルビーについて知りたいんです。ハジム様がご存じの情報を教えてもらえますでしょうか。」


「なんか君と恋をしろとか言ってるらしいね。あの子は本当に、思い込んだら周りの言う事が聞こえなくなるから。」


 呆れたようなハジムの言葉に心の中でガッツポーズをとる。これだ、僕が聞きたかったのはこういう話だ。


「ハジム様も前世の記憶があるそうですね。」


「うん、僕は生まれた時から全部覚えてたよ。だから体だけ変わったけど僕の中では意識は前世と続いてるんだよね・・・君の姉さんに5歳でプロポーズしたのもそのせいだからね。一応、言っとくけど。ロリコンじゃないから。」


 ハジムの顔が少し赤い。悪いけどそっちの話は興味ないんだ。


「・・・そうですか、ルビーについて知りたいんですが。」


 ハジムはやっと僕が聞きたかった昔の話をしてくれた。時は100年前に遡る。



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