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【完結済】生まれ変わっても一緒にいるとか言ってません!  作者: 紫藤しと
第二章 リチとダリッチの慕情

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14.ラブレターの書き方

 何故か私の目の前に、制服姿のルビーがいる。


「ラブレターって・・・どうやって書くんじゃ?」


「知らない、書いたことないもん。」


 ルビーは机の上にだらしなく顎をのせて苦悩している。


 領地から王都のドーナー家に戻ってきた次の日、ルビーがなぜか手紙の内容を一緒に考えろと私の部屋に押しかけてきたのだ。


「わしだって書いたことないわい・・・」


「得意だって言ってなかったっけ?」


「よく考えたら全然得意じゃなかった。リチ、代わりに書いてくれ。」


「嫌だよ。なんで弟にラブレター書かなきゃいけないの。あと、どうでもいいけど何で制服着てるの?」


「それっぽいかなと思って・・・」


 それっぽいって何だろう? 私が首を傾げているとルビーは一冊の本を私に寄越した。どこからどうやって取り出したのかわからないが、魔女って便利だなと思う。


 渡された本は『ラブストーリー』というタイトルがついていた。王立学園に通う王子様と魔力が高い平民の娘が立場や色々な試練を超えて結ばれる話らしい。


「・・・面白そうだね。」


「ユマが書いたんじゃ。」


 え、お姫様が書いたの?と慌てて作者を見るとユマ・ソドムとなっていた。ユマ様はそんな名前じゃなかった筈だが。


「ユマの両親がモデルとなっておる。ユマが憧れる恋愛について具体的に教えて欲しいと言ったらこれを書いてくれた。」


 へー。


「何年か前これを出版社に送り付けたらいつの間にか出版されていた。ソドムはわしが潰した家だ。さすがに本名では出せんからな。」


 ペラペラとページを捲ると何枚か挿絵があった。気になったのは魔法を使って悪魔のようなものを倒している場面だ。横の文章を見ると倒しているのは本当に悪魔らしい。


「・・・国王夫妻ってめちゃくちゃ強かったんだね。悪魔倒したの?」


「悪魔というほどのもんじゃない、ただの雑魚だ。だがそういうのがしたいのかと思って実際にユマを連れて色んな奴に戦いを挑んだこともある。みんな逃げられたが。」


 そりゃあルビー強いみたいだし、普通戦いたくないよねぇ。


「誰も戦ってくれなかったの?」


「うん・・・最終的にはアダールが鳩の姿で付き合ってくれたが、鳩を倒してもな・・・」


 ルビーはその時を思い出したのかしょんぼりしている。確かに鳩を倒しても絵面的にねえ、微妙だねえ。キャーカッコイイとはならんねぇ。


「わしが強すぎるのが悪いんじゃがユマはあまりわかってくれんかった。・・・あのクソ魔女と戦って勝ったらユマもわしに惚れていたじゃろうに。」


 ルビーが何かを思い出したのか怒りだした。でも全部、100年前の話だ。


「・・・今口説きたいのはうちの弟でしょ? パルは別にルビーがどんな悪魔を倒してもキャーステキーとはならないと思うよ。」


 そう言ってからすぐに案外そうでもないかなとも思う。弟の好みなんかしらないけど、物凄く強い人を見たらうっかり好きになってしまうかもしれない、まだ12歳だし。


「まあ適当な相手がおらんからな。あの魔女は今なら人間の姿で戦えるはずだが、あいつと戦うとなるとアダールがついてくるし、アダールがいるならハジムもくるだろうし、なんならお前もついてくるじゃろ? 4対1は流石のわしでもちょっとキツイぞ。」


 どうやらさっきからルビーが言っている魔女とはミツさんのことらしい。私が戦いに参加してもあまり意味がないと思うが、あの三人を一度に相手するのはいくらルビーでもしんどそうだ。

 

「そう言えばさ、誰かがクーデターを起こすとか言ってなかった? クロだっけ?」


「あー、そんなのもいたな。」


「クロと戦えば?」


「・・・お前は戦いをなんじゃと思っとるんじゃ。殺し合いをするっていう意味じゃぞ?」


 あ、そっか。気軽に勧めるもんじゃないな。


「はい・・・ちょっと酷いと思います。」


 突然の男の声に横を見ると、クロが俯いて立っていた。どうやらずっと聞いていたらしい。


「ハジムは話しかける許可は出してないって言ってたけど。」


「でもちょっと酷すぎるので。俺をなんだと思ってるんですか?」


 恨みがましい目で見られても、特になんとも思っていない。


「まあお前でもいい、ラブレターの内容を考えろ。」


 ルビーが尊大な調子で言った。


「あの、俺はルビー様を口説きたいんですが。」


「なら口説け。参考にしてやる。」


 ルビーはどこまでも偉そうだ。


「できれば、二人になれる場所に行きたいのですが。」


「甘えるな。さっさと口説け。」


 ルビーはクロを睨んだ。片手にはペンを持ち、書き写す気まんまんだ。


「えっと、では・・・私は初めて見た時からあなたの美しさに目を奪われました。その絹のように輝く髪、神秘的な目。私はあなたの・・・」


「ちょっと待った。パルの髪って輝いてたか?」


 ルビーがクロの言葉を遮った。私は首を振る。


「輝いてはない。あとパルを神秘的と思ったこともない、私はね。」


「わしもじゃな。可愛いとは思ったが・・・却下。もっと良い文を考えろ。」


「いえ、私はルビー様のことを・・・」


「そんな表面的な言葉でわしが惚れるか。お前はその程度か。」


 ルビーに睨まれてクロの目が宙を泳いだ。


「あのー、こういうのは雰囲気が大事なんですよ。こんな待ち構えられている状態では何を言ってもダメだと思います。」


 急に正論がきた。ルビーが私を見たので無言でその通りだと頷く。


「・・・じゃあどうすればいいんじゃ?」


「まずは自分に敵意がないことを伝えます。あと一緒にいると何か良いことがおこりそうだという可能性を示唆します。」


「ほう」


 ルビーが身を乗り出した。「それから?」


「自分に会うと楽しいと相手に思わせます。」


「ほうほう」


「楽しいのでもっと会いたいと思わせれば勝ちです。会えば会うほど仲が深まっていきます。」


「なるほど!」


 ルビーが立ち上がった。「素晴らしい! 褒めてやろう!」


「ありがとう存じます。」


 クロがにっこり笑った。


「つまり・・・読むと気分がよくなる手紙を書けばいいんじゃな? リチ、弟は何を褒められると喜ぶ?」


「え、何だろう・・・?」


 頭がいいとか手先が器用とか顔がいいとか、弟が褒められているのはたくさん見てきたが、特に喜んでいる様子はなかった。


「・・・お前それでも姉か?」


「あの子小さい時から褒められまくってるから、褒められ慣れてると思う。」


「そういう時は誰も褒めない部分を褒めるといいですよ。奇麗な顔の女性には顔を褒めずに爪を褒めたりすると喜びます。」


 クロが口を挟んだ。確かに女慣れした発言だ。しかしクロはどういう立場で喋ってるんだろう。ルビーを口説くとか言ってた気がするけど。


「パルの爪は見てなかったな・・・今から見に行くべきか?」


「爪は例えです。男は筋肉とか褒めると喜びますよ。」


「筋肉・・・なさそうじゃったな。」


「当たり前でしょ。パルはまだ子どもだし、あの子は将来服のデザイナーになるんだから。」


 話がおかしな方向に進みだしたので私は慌てて軌道修正を図った。


「デザイナー? ならばセンスがいいとか言ってみるべきか?」


「すでに死ぬほど言われてると思う。母の英才教育についていける時点でセンスも才能もすごいんだから。」


 私は全くついていけなかった。一通りの洋服作りは教わったが、すぐに花嫁修業という名の一般的な勉強に変わっていった。私に才能がなかったからだろう。


「じゃあ、どこを褒めたらいいんじゃ?」


「知らないよ・・・」


 小さい頃のパルが喜んでいる顔が頭に浮かんだが、何に喜んでいたのかは思い出せなかった。まあ大昔だし今のパルには参考にならないかもしれない。


「やはりここは互いの人となりを知るところからではないでしょうか。まずはルビー様の自己紹介から始めては如何ですか?」


 クロの言葉にルビーが考え込んだ。


「自己紹介か・・・関わった家を潰したりとか、強い魔法が使えたりとか、そういう事か?」


「最初は良い事だけをアピールした方がいいと思いますよ。ルビー様が魔法で色々なことができることを知れば、男の子なら食いつくかもしれませんね。」


「なるほど。パルはあまり魔力を持ってなかったな。」


「うん、今のシナト家では私が一番魔力が強いぐらい。基本的には戦うような家系じゃないから。」


「ほうほう。ではわしがいかに美しく賢く魔力に溢れた天才的な魔女かというのを伝えればいいのじゃな?」


「・・・好きにしたら。」


 ルビーがどこまで本気なのかよくわからない。というかできれば全部冗談であってほしい。


「うむ、わかった。物凄いラブレターを書いてくれるわ!」


 その言葉を言い終わると同時にルビーの姿が消えた。相変わらず勝手な奴だ。


 私はルビーが置いていった『ラブストーリー』という本を手に取った。面白そうだから少し読んでみよう。


「リチ様。もうお昼ですがお食事はどうされますか?」


「ここで食べる。」


 承知しましたと言ってクロは部屋を出て行った。私はゆっくりと本を読むことにした。




今日も三話更新です

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