表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】生まれ変わっても一緒にいるとか言ってません!  作者: 紫藤しと
第二章 リチとダリッチの慕情

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/58

9.前世の兄弟

 翌朝は清々しく晴れていた。朝食の後にいつの間に用意したのか乗馬服を渡され着替えた。リチはこんな服を着たことがなかったので面白かった。


 馬屋に案内されると似たような乗馬服を着たハジムがいた。どうしよう、過剰にキラキラしているのにも慣れてきてしまった。


 最初にハジムが馬の背に乗った後、俺がその前に乗った。ハジムが近いし、視線は高いしでしばらくドキドキしっぱなしだったが、しばらくゆっくり歩いているとだんだん周りを見る余裕がでてきた。


「じゃあそろそろ家の外にも出てみようか。」


「どこ行くの?」


「うーん、山の方かなあ。兄さんたちもいるかもしれないし。」


「兄さんって・・・まだ生きてるの!?」


 ハジムは今一人っ子なので、ここでいう兄さんは前世の兄の筈だ。ということはとっくに100を超えているはずだが・・・


「生きてるよ。鳩は省エネでいいんだって。」


 鳩。あの人まだ鳩なのか・・・なんとなく疲れてしばらく馬の揺れに黙って揺られることにした。


 ハジムの兄であるアダールさんはとても優秀な領主だったが、ある日恋人を追いかけて鳩になってどこかへ行ってしまった。当時何回聞いても意味が分からなかったし、生まれ変わった今でも分からない。ハジムは「兄さんだから」という謎の呪文で受け入れていたけど、こいつはブラコンなので参考にならない。


「えっと・・・アダールさんは、元気、なの?」


「元気なんじゃないかな。ここ数年姿を見てないけど。子どもの頃はよく遊びにきてくれたよ、ミツさんと一緒に。」


「ミツさんって誰だっけ?」


「兄さんの恋人。」


 ああ、元祖鳩の人か。元々は人間だったのになぜか鳩になった為、アダールさんも追いかけて鳩になったらしい。本当に意味がわからない。


 でも前世でハジムが死んだとき、二匹の青と白の鳩が俺の傍にきてくれた。それだけは感謝している。それっきり見ることもなかったけど。


「ねえ・・・山って遠くない?」


 全然近づいてこない山を見て俺は後ろを振り返った。ハジムの顔がやたら近くにあるけど今日はドキドキしなかった。体調の問題なんだろうか。


「うん・・・走るとすぐなんだけどね。このスピードだといつ着くかわかんないね、戻ろうか。」


 俺は大人しく頷いた。ただゆっくり歩く馬の背に揺られているだけなのに異様に疲れている。リチの体力のなさは本当に酷い。


 ハジムはゆっくりと来た道を戻り始めた。後ろについてきていた護衛とすれ違って恥ずかしくなる。絶対何してんだって思われてるんだろうな・・・俯き加減で屋敷に戻り、馬から降りるとその場に崩れ落ちてしまった。腰が痛い。


「想像以上に体力ないね・・・立てる?」


 一人で立てなかったのでハジムの手を借りて立ち上がった。もう恥ずかしすぎて顔が見られないと思った矢先、横抱きにして抱えられた。


「え? えっ?」


「いいから。せっかくだから庭でお昼を食べよう? 運んであげるから。」


「いや、自分で歩くし。」


 無理でしょとハジムは笑って取り合ってくれなかった。なんかもう恥ずかしすぎてなるべくハジムの腕の中で小さく丸まって全てをやり過ごすことにした。


 誰も見るな誰も見るな誰も見るな・・・


 ハジムがゆっくりと下してくれたのは庭にあった東屋だった。王都の庭も広くきれいだったが、こちらも負けず劣らず大きい。庭をぼんやり見ているとテーブルの上にすばやく昼食が並べられていた。遠出先で食べる予定だったのだろうサンドイッチだった。


 日陰は涼しく食べ物は美味しく空はきれいだった。なぜか唐突に生まれ変わったんだなあと思った。何もかもが昔と少し似ていて、でも全く違う。俺も、ハジムも。


 いや、もう”俺”じゃないな。わたし? 仕事の時は使ってたから別に言いなれてないってこともないけど・・・そんなことを考えながら食事していると、青い鳥が飛んでくるのが見えた。


 青い鳥と白い鳥は東屋まで飛んできたかと思うと、突然姿を変えて二人の人間になった。俺は無言で椅子から落ちた。


「ちょっと大丈夫?」


 白い鳩だった女の人が笑いながら助け起こしてくれた。誰のせいだと思ってるんだ。


「久しぶりなんだからもうちょっと穏やかに登場してくださいよ・・・ダリッチ覚えてるよね? 兄さんとミツさんだよ。」


 そりゃさっきそんな話をしたばかりだから覚えているけど、目の前で鳩が人間になるとやっぱりビックリする。


「どうも。」


「ダリッチ! なんか可愛くなったね。」


 ミツさんはなぜかニコニコしながら俺の頭を撫でた。この人は今いくつなんだろう・・・青い髪も青い目も前世で見た時と全く変わっていない。100は超えているはずだが見た目は二十代のままだ。


「座ってください。兄さんたちも食べますか?」


 ハジムは当たり前のように二人に椅子をすすめている。ミツさんはなぜか俺の横に座って俺の顔を撫でまわしている。


「やだ! 本当にかわいい! どうしたの? 中身は一緒なんだよね?」


「ミツ。いい加減にしないと怒るよ? ・・・ハジムが。」


 アダールさんがニヤニヤしながらハジムを指さした。ハジムは少しだけ怒った顔をしていた。


「ケチねー。減るもんじゃないのに。」


「減ります。」


「私はハジムがアダールに抱きついても何とも思わないわよ?」


「それは兄弟ですし・・・僕がミツさんに抱きついたら兄さんは怒ると思いますよ?」


「怒るっていうかその場で戦いが始まるね。今僕たちどっちの方が強いんだろうね。」


「知らないよ。」


 ハジムが弟の顔をして拗ねていて、なんだか可愛い。


「この中ならまだ私が一番強いと思うけどねー。」


 ミツさんがのんびりとサンドイッチを摘まみながら言った。


「そうなんですか。・・・ルビーよりも強いですか?」


 ハジムの一言で一瞬変な空気が流れた。


「・・・どうかな。元々魔力が強い子だけど今二人分の魔力持ってるよね。」


 ミツさんの言葉にアダールさんが苦笑した。


「でもあの子魔力の使い方下手だから。本気で戦えば勝てるんじゃない? 僕もいるし。」


「まだ負けることはないか。」


 二人で笑う様子をハジムは複雑な顔で見ていた。希望していた答えとは違ったらしい。


「ハジム? こういうのは自分で守らないと意味がないよ?」


 アダールさんが子どもを諭す様に優しく言った。


「わかってるけど・・・魔力じゃ勝てそうにないから。」


「うーん、きみが勝つ方法はいくつかあるけど、僕としては仲良くして欲しいな。もう戦いとか面倒なんだよね。」


「私はたまには戦いがあってもいいと思うわよ? 面白いから。」


 アダールさんはミツさんを軽く睨んだが、ミツさんは笑い飛ばした。


「だって魔女だもん。仕方ないじゃない!」


「え、魔女だったんですか?」


 思わず聞くと、ミツさんは当たり前のように肯定した。


「そうよ? 何だと思ってたの。普通の人間は鳩にはならないわよ?」


 それは知ってる。だけど魔女がこの世界に沢山いるなんて知らなかった。


「ついでに言うとそこの兄弟は天使よ?」


「ええっ!?」


 俺の大声にアダールさんが逆に驚いた顔になった。


「ハジム、言ってなかったの?」


「・・・別に言わなくてもいいかなと思って。」


「いや言えよ! え?じゃあ俺も天使とか悪魔だったりするの?」


「ダリッチは今も昔も普通の人間だよ。ほんのり悪魔成分が入ったごく普通の人間。」


 アダールさんに断言されて立ち上がりかけていた体が勢いよく戻った。なんだ、つまらない。


「天使か・・・だからキラキラしてたのか・・・」


 ちらりとハジムを見るとなんだか拗ねたような顔をしていた。


「キラキラ? ハジムが光って見えてるの?」


 ミツさんの言葉に俺は無言で頷いた。


「あ、それ僕はわかるよ。僕もミツが光って見えるから。」


 驚いてアダールさんを見るとうんうんと頷きながら言った。


「-----好きな相手は光って見えるんだよ。」


 その言葉を聞いた途端恥ずかしくて顔を覆ってしまった。


「え、そうなの?」


 ハジムの声が聞こえる。うるさいバカそんなこと聞くな。


「うん。だから何度生まれ変わっても、どれだけ見た目が変わっても見つけられるんだ。」


「でもダリッチは僕がキラキラからギラギラに変わったって言うんだけど。」


「より好きになったんじゃないの?」


 限界だった。


「うっさいバカ! そんなこと聞くな!!」


 立ち上がって怒鳴るとハジムはなんだか嬉しそうな顔をしていた。余計に顔が熱くなる。


「別に好きとかじゃないし! そんな、生まれ変わっても会いたいとか言ってないし!!」


 ミツさんが横で噴き出すのが見えた。


「だから、もう、こっちくんな! バカ!!」


 最終的にはよく分からないことを叫んで俺はその場から逃げ出した。後ろで誰かの笑い声が聞こえる。俺は一目散に家まで走り、自室のベッドに潜り込んだ。


 もう嫌だ。一生布団の外に出たくない。


 しばらく恥ずかしさに身悶えしていたが、疲れていたせいかいつの間にか眠ってしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ