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【完結済】生まれ変わっても一緒にいるとか言ってません!  作者: 紫藤しと
第二章 リチとダリッチの慕情

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4.魔女と昔の恋

 次の日の朝食は宣言通りハジムはいなかった。気まずさも手伝い義母に学園に行ってみようかと思うと言うと義母は鷹揚に頷いた。


「いいんじゃないかしら。まだ若いんだから色んな人とつきあうべきよ。」


 息子の婚約者に言うセリフか?とも思ったが黙って頷くことにした。ここの夫婦は大恋愛の末結ばれたが、今や夫婦の間は冷めきっているらしい。


「ところで馬車は使うの?」


 質問の意味がわからず曖昧に頷く。確かにこの家から王立学園はすぐそこだが、使ってはいけないのだろうか。


「この家の人間はなぜか馬車使わないから・・・いいのよ。使いなさい。あなたまでそれに付き合うことはないわ。もちろん私もね。」


 義母は妖艶に笑うとグラスを飲み干した。朝には似つかわしくない濃い目のお酒の匂いがする。俺は何も言えずに黙って食事を続けた。リチはいつもこうだ。人見知りが激しくていつも人の顔色ばかり窺っている。前世の俺とは真逆の性格だが、これも今の俺の一部ではある。


 朝食後、学園の制服に着替えて馬車に乗った。別に行ったところで何かをするつもりはない。授業はとっくに始まっているだろうし、そもそも申し込みすらしていない。


 馬車から降りると桜並木が広がっていた。といってもとっくに桜は散っていて青々とした葉っぱが眩しい。入学式の時は満開だった桜の下をハジムと歩いた。世界一幸せだと思っていた。


 ぼんやり桜を見上げていると後ろから肩を叩かれた。


「よっ!」


 振り返ると学園の制服を着た魔女がいた。


「ルビー! 何してんの?」


「わしは永遠の十五歳じゃからな。別に学園に通っていてもよかろ?」


 ルビーはなぜか胸を張って制服を見せつけてきた。確かに似合ってるけど・・・


「バレたら追い出されない? あんた最悪の魔女なんだから。」


「わしを追い出せる奴がここにいるかな?」


 ルビーはにやにや笑った。まあ確かに100年前もこいつを止められる奴はいなかった。だから可哀想なお姫様が犠牲になった訳で。


「ふーん・・・何しに来たの?」


「久しぶりに懐かしの学び舎でも見ようと思っただけじゃ。」


「懐かしい? 魔女もここに通ってたの?」


「おうよ! ユマと一緒にな。・・・懐かしいな。」


 ルビーはそう言って桜を仰いだ。懐かしいという言葉に嘘はなさそうだ。


「・・・じゃあ、案内してよ。」


「あほか。わしが通ってたのは100年前じゃ。今の学園を知ってる訳なかろ?」


 そんな会話をしながら校舎に入った。中はしんと静まり返っている。


「取り合えず・・・どこに行ったらいいんだろ。」


「カフェテリアじゃな。ユマが好きだった。」


 ルビーはそう言うと俺の手を引っ張って歩き出した。その後姿はどう見てもただの15歳で、魔女なんてなにかの間違いじゃないかという気がしてくる。よく考えたら俺も今15歳だし、傍から見れば仲のいい女同士に見えるだろう。中身はおっさんと魔女だけど。


 カフェテリアという場所はようするに食堂だった。仕組みがわからずまごまごしていると、ルビーはさっさと何かを注文し、窓際のテーブルに座って俺を手招きした。


「カフェラテだ。ユマが好きだった。」


 ルビーはそう言ってカップを一つ俺の方に寄越した。恐る恐る一口飲んで顔を顰める。


「なにこれ? お酒?」


「まさか。コーヒーっていうお茶じゃよ。これはミルクが入っているからそこまで濃くない。本物はクラクラするぞ。」


 ルビーは笑ってカップを口に運んでいる。長いまつ毛の影が頬に落ちた。自分でいうだけあって美少女で間違いない。


「・・・ねえ、俺がユマ様を生むってどういうこと?」


 それを聞いたルビーが顔を上げた。


「お前からあの子の匂いがする。」


 真顔で言われても反応に困る言葉だ。


「ごめん、わからない・・・俺の魂とか、体とかは全くユマ様と関係ないと思うけど。」


「詳しくはわしにもわからん。だがお前の中にユマがいる。」


 ルビーはそう言って真っすぐに俺の胸元を指した。


「そんなこと言われても・・・今俺の中にはリチとダリッチがいてそれだけでもいっぱいいっぱいなんだけど。お姫様までいるっての?」


「いる。」


 断言されて天井を仰ぐ。正直困る。でも魔女がここまで信じ込んでいるならもうどうしようもないだろう。大昔ユマ様がどれだけ懇願しても、ハジムを始めあらゆる人が説得しても、魔女は決してユマ様を離さなかったと聞く。


 誰かも言っていた「魔女とはそう言う生き物だから」と。


「-----ユマはこの学園に憧れてた。この学園で両親のような素敵な恋がしたいと言っていた。・・・わしは叶えてやれなかったらしい。」


 頑張ったんだけどな、と独り言のようにルビーがポツリと言った。視線は窓の外を見ている。


「素敵な恋ってなんだ? 私はユマを愛したし、ユマも私を愛そうとしてくれた。それは恋じゃなかったのか?」


 物凄く返答に困る質問だ。だがルビーは答えを求めてはいなさそうだった。どれだけ言葉を尽くして説明したって、それを聞く側が本当に理解しないとどんな言葉だって意味がない。


「・・・お前は恋をしたことがあるか?」


 ルビーの目が急に俺の方を向いた。


「え、俺? ・・・あるよ。あると、思う。」


「はっきりせんかい。」


「そんなこれは恋とか、これは違うとか考えるもんじゃないだろ? いつの間にか・・・好きになってただけで・・・」


 言いながらなんて恥ずかしいことを話してるんだと我に返ってしまった。お昼前のカフェテリアは人が少ないので助かった。誰かにこんな会話聞かれたら死ぬ。


「それならわしは初めてユマを見た時、雷に打たれたような衝撃じゃったぞ? わしの方が運命的じゃろうか。」


「あんたが一方的に運命感じてただけじゃないの?」


 ガチャン


 ルビーは驚いたように飲みかけのコップを落とした。俺としては何気なく言った言葉だったが、ルビーは呆然と宙を見つめている。落としたコップは割れていなかったがカフェラテが受け皿からテーブルに零れていた。すぐに給仕がテーブルに飛んできた。


「お嬢様方、お怪我はありませんか?」


 俺が給仕に大丈夫と言ってる間にルビーはふらふらと立ち上がってどこかへ行ってしまった。慌ててルビーの後を追いかけたがルビーの姿はもうどこにもなかった。たぶん瞬間移動で飛んだのだろう。これだから魔女って奴は・・・


 結局その日は校舎を少し見て回っただけで家に帰った。


ちょっとミスって本日は4話更新です

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