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【完結済】生まれ変わっても一緒にいるとか言ってません!  作者: 紫藤しと
第二章 リチとダリッチの慕情

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1.前世の恋人

 初めて見た時、なんてキラキラした人なんだろうと思った。


 いやキラキラっていうかむしろギラギラ? 見ちゃいけないレベルで光っていたそいつは、俺の前に跪いて左手の甲にキスをして言った


「やっと会えたね。僕と結婚してくれる?」


 うっかり頷いてしまった俺は悪くないと思う、だってまだ五歳だったし。




「-----------やっぱあの話は無効だな。まだ分別のついてない幼女に結婚迫って強引に頷かせるなんて詐欺だろ。」


「なんでよ。前世ではうんって言ったでしょ。」


「前世は前世! 今は今は!」


 俺の横で拗ねた顔をしているこいつはハジム・ドーナー・ジュニア、前世の俺の恋人だ。前世では黒っぽい髪と目の地味で男っぽい顔だったのに、今生では真っ赤な髪に黒い目、女みたいに奇麗な顔に生まれている。前と違い過ぎて落ち着かない。


 一方で俺は地味な平民の男から貴族のお嬢様に生まれ変わっていた。くすんだ紫の髪に茶色の目。前世から考えると大躍進だが他の身内に比べるとぜんぜん地味だ。背も小さいし貧相な体つきだけれど、まだ十五歳なのでそれは今後に期待したい。


「でもダリッチだって・・・」


「ダリッチじゃない! 今はリチ!」


 何かを話そうとしたハジムの言葉を遮って釘を刺した。ダリッチは前世の俺の名前だ。今はリチ・シナト。由緒正しきシナト家の長女だ。


「じゃあリチ。・・・改めて、僕と結婚してくれる?」


 ハジムは俺の左手を取ると甲に口づけた。


「・・・なんか嫌だ!」


 左手をハジムから取返し俺は叫んだ。顔が赤くなっているのがわかる。だって左手はズルい。ここには生まれつきの痣がある。前世では傷跡があった。ハジムを思って俺が搔きむしってつけた傷だ。恥ずい! もうヤダ!


 ハジムが笑ってまた手を伸ばしてきたので、俺は慌ててソファから立ち上がった。


「勝手に触るなよ!」


「婚約者なんだから手ぐらいいいじゃない。ご両親の許可は貰ってるよ? パーティで婚約者ですってお披露目も済んでる。」


「着々と周りを固めんな!」


 ハジムは肩をすくめた。


「あのね、こっちは君が生まれるまで10年待ったの。それに君が生まれてから15年経つんだから・・・今更逃がすわけないでしょう?」


 ハジムが俺を見上げて妖艶に微笑む。前世とは顔が違う。でもこれはこれでカッコいいと思う・・・でも、だけど!


「なんか嫌なんだよ!!」


 俺はそう叫んで部屋を出た。正直何が嫌なのかは自分でもわかってない。でも嫌だ。ちょっと手を触られたぐらいでドキドキして死にそうになる自分が嫌だ。やたらカッコよくなってて余裕たっぷりに笑うあいつも嫌だ。もう何もかもが気に入らない。


 廊下をドスドス歩いていると前からきた執事が顔を顰めた。仕方なくスピードを落としてなるべく淑女っぽく歩いて通り過ぎた。別にこれぐらい出来る。15年間女として生きてきた訳だし。


 無駄に広い屋敷のどこに行っていいかわからず、取り合えず庭に出てみた。王都とは思えないぐらいの広い庭だ。先月からあいつの婚約者として俺はここドーナー家の屋敷に滞在している。一応名目は王立学園に通う為だが、実際はドーナー家に嫁入りするための準備期間だ。18歳で学園を卒業すると同時にハジムと結婚することになっている。


 俺は柔らかな日差しが降り注ぐ庭をゆっくり歩いた。こんなことは前世を思い出す前なら絶対にしなかった。女に日焼けは大敵だ。青白いぐらいでちょうど良いのだと母は言っていた。


 庭の東屋に座ってぼんやりと庭を眺める。色々な花の匂いがする。シナト家もそれなりに大きいがここまで大きくも優雅でもない。頭を掻こうとして奇麗に編み込まれた髪を乱してしまった。うざ。切りたいな・・・なんで女は髪を伸ばさないといけないんだろう。


 ため息をついて俺は机にうつ伏した。ちょっとまだ混乱してるだけだ。なんせ前世を思い出してから三日しか経っていない。


(ダリッチ)


 前世のあいつが俺を呼ぶ声を思い出した。


 前世では一方的に俺があいつを追いかけまわした。あいつは全く男に興味がなかったから、それこそストーカー並みに付き纏ってやっとのことであいつの隣を手に入れた。結局あいつからはほとんど好きだなんて言葉も言われなかった気がする。・・・ん?ひょっとして一度も言われてないんだっけ?


(ダリッチ)


 前世のあいつが俺を見て困った顔で笑う。


 なんで今のあいつはあんなに奇麗な顔になっちゃったんだろ。モテるだろ絶対。


 あ。


 あることに気がついて俺は体を起こして顔を手で覆った。


 あいつの声、前世と一緒だ。


 耳まで真っ赤になっている自覚がある。あの声が大好きだった。話しかけても無視するし、でも聞いてないようで聞いてるし、結局俺のことどう思ってるのかよくわからなかったけど。


「そっか、あいつ死んじゃったんだ。」


 一人で呟くと涙が勝手にあふれてきて止まらなくなった。前世でもあいつを看取って死ぬほど苦しかったのに、もう一度失った気分だ。最悪だ。


 結局俺は大昔に死んだ男の為にもう一度泣くはめになった。次会ったらぶん殴ってやる。



今日はあと二話更新します。次は19時。

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