異世界から来た私が魔王軍と人間軍の関係を悪化させました〜プロローグ〜
【元外交官ロイによる回想的独白】
異世界の転生者、トウカ。
彼女の故郷は、我々の常識とはかけ離れた「平和」に塗り潰された世界である。戦火はなく、飢餓も遠く、娯楽と飽食が約束された地。親族に見守られ、天寿を全うすることが当然とされる安寧の揺り籠。そんな場所から、彼女はこの地獄へと引きずり出された。
魔族たちは、絶望に震える彼女の肉体を「改造」した。この世界の毒気に適応させるために。
そして同時に、その「精神」にも手を加えた。
彼女が理不尽を突きつけられても、決して嫌悪を露わにしないのは何故か。
――その感情は、すべて魔力に変換されるからだ。
彼女が故郷を想って涙を流さないのは何故か。
――「帰りたい」という切望すら、魔法を使う燃料として抽出されるからだ。
彼女が常に明るく前向きであること。それは彼女の美徳ではない。
それ以外の感情を抱く自由を奪い取られた結果に過ぎない。
トウカが放つ強大な魔力は、彼女の魂の叫びそのものなのだ。
エアリス、君に同情を強いたりはしない。だが、彼女の「笑顔」が何を代償に成立しているかだけは、その目に焼き付けておいてほしい。
【ロイ先輩への緊急報告:発信者・エアリス】
ロイ先輩!!
言われた通り、トウカのことは気にかけてましたよ!? ちゃんと隣に座ってお菓子とかあげてたんですから!
でも、あの二人目の転生者が……なんて言ってるのかさっぱり分からなくて。トウカが必死に話しかけてるのに、向こうは喚き散らすし、周りの貴族たちは『無能の役立たずめ』とか言ってトウカを責めるし……!
それで、今トウカの様子が・・・凄く変なんです。
なんか、近くにある花瓶とか椅子が、触ってもいないのにミキミキ鳴って壊れ始めてて。トウカ本人はまだ笑ってるんですけど、その、笑顔のまま魔力がドバドバ溢れてるっていうか・・・正直、めちゃくちゃ怖いです!多分、暴走しかかってます!
このままだと、敵意を向けたとかで叛逆者として処刑されちゃいますよ!
ロイ先輩、どうにかしてください!早く、至急、お願いします!!




