奇妙な家の中で②
「ワーウルフッ!」
素早く腰にある短刀と足止め用の魔具を構えて臨戦体制をとり、少し距離もとる。室内での戦闘は俊敏性の高いワーウルフの有利な状況と言える。加えて知性のある魔物は魔法も使える可能性がある。いやまて、言葉を話すということは。
「おい、ここは領土の境目とはいえ人間の領域である。魔王が人間と和解したのは知っているな?人を危害を加えるなと条約にもあることは知っているか?」
話が通じるのであれば無駄な戦闘は避けて・・・。いや、民家に勝手に入ってくるようなやつだ。(私もだが)ここで、仕留めるか。
「わかっている。そちらこそ、せんとうのいしのないものを、きずつけてはいけないことはしっているのか?」
話が通じるようだ。敵としては厄介ではあるが。
「・・・先ほど私は複数のワーウルフに襲われた。返り討ちにしたが貴様もそいつらの仲間、いやリーダーという可能性もある。警戒するのは当然だと理解しろ。」
「そうなのか。だが、われはかんけいない。」
信じろという方が無理がある。連続してワーウルフに出会うことがあるだろうか?おそらく、仲間だろう。
「質問が二つある。この地域で何をしている?この家にはなにを目的で入ってきた。」
「ここが、やくそくのばしょだからだ。そのためにここにきた。」
「約束とはなんだ?」
「それはいえない。」
なるほど、黙秘か。
「おい、通行証はあるのか?」
ワーウルフが手荷物をごそごそしている。あるのか。
「これだ。みてくれ。」
「いや、近づかなくていい。投げてくれ。」
すこしムスっとしたのか嫌な顔をした。・・・まずい。通行証を確認するには目線を逸らす必要がある!バディもいないのにどうやって確認すれば。ワーウルフのあの爪!一瞬で距離を詰める運動神経!一瞬の油断が命取りだ。落ち着け。というか、防御魔法を貼ればいい。ヨシヨシ、確認確認。・・・本物だな。
「確かに通行証もあるな。」
「そうだ。だからそんなに、けいかいするな。」
「まだ先ほどのワーウルフとの関係性がわからない以上警戒するのは当たり前だ。」
「ほんとうにしらない。もともと、ここらへんにいたやつらなんだとおもう。われたちの、すみかはここらへんにあったから。」
「だとしても、証明できないな。だが、私も戦闘しにきたわけでもない。お前がここから出ていき魔除けの結界を張らせてもらえればいい。ということで、まずお前はここから出ろ。」
「まよけはられたら、われがはいれなくなる。それはいやだ。」
「ダメだ。私に出来る譲歩はここまでだ。約束ならば家の外でまっていろ。」
「まおうさまがにんがんとわかいしたつさのにぜんぜんできてない。」
すごい顔をしているな。怒っているのか。ますます警戒せねば。
「それをいうならば、私を襲ってきたヤツらはなんだ?全然和解できてないな。」
「われにはかんけいない。」
「はっ」
やはり魔物と和解など無理な話だったのだ。
ビービービー
突然、腰になる魔力探知機が鳴り響いた。
「何事!」
いや、わかっている探知機自体は馬に装着している。ということは我が愛馬の危機である!異常事態!馬の元へ!あいつは押し通るしかない!
「悪いが通らせてもらう!」
魔具を投げつけ、自身には風の魔法を纏い高速で馬の元へ。このワーウルフは倒さなくていい。ドアから退けることができれば!
あの魔具は重力の魔法による引きつけの効果がある。ドアから引き離してスペース確保!ってあれ?魔具が発動しない!?
「いや、このまま行けー!」
魔法による身体強化、これにより高速で動け、肉体もパワーアップ!高速タックルしこのまま外に出てやる!
「あれ?」
思ったより早く動けていない。そして、そのままワーウルフのお腹に直撃し反動で、すっころんで頭から落ちた。風の加護は?身体強化は?
ゴッと嫌な音が響く。
ーあぁ、訓練して実力がつけば女でも戦場で活躍できると思っていたのに。私はこれまでか。
頭を打った衝撃で私の意識が遠のいていった。




