人生ゲーム③
「ダークエルフは気高い。この国の始まりの種族なのだ。また、魔法使いとしても優秀である。しかし、惜しむべきは祝福が足りない。男子は生まれると半年ほどで死んでしまう。己の強すぎる術に耐えきれないのだ。」
とダルクさんがエピローグを語るように私の判定に物申してきました。
「ダークエルフの強さは半端じゃないからな。やはり、別格だ。」
ロイさんまで援護射撃を!えーと、一度声に出した事を覆したくはないのですよねー。こんなルールでやり直しありなら、なんでもありになっちゃいますからね。慌てず騒がず落ち着ついて、ダルクさんに喋らせてチャンスを伺って、適当にはぐらかして。
「ロイさんがエルフのことを褒めるんて珍しいですね!ですよね、ダルクさん。」
「エルフではない!ダークエルフだ!」
「今のはトウカくんが悪い。謝っておこう。」
「うぇ!?すみません。配慮のない発言をしてしまいました。」
「ほら、謝っている。許してやれ。」
なんか理不尽な感じがしますが話を続けさせましょう。
「それで、ダークエルフの雄が希少な理由をもうちょっと聞かせてくれますか?」
「それはだな。ダークエルフ雄の固有魔法は禁術指定されるような危険なものが多く、特に男は常識を超えた魔法を持っている。と国王軍の中では言われている。」
ロイさんが話すのかい!
「そうだ。固有魔法は意識のない赤子の状態でも無意識に発動してしまう。その対象も範囲もわからぬままに。実の母・・・そして、自身の命を奪うことがほとんどだ。わけもわからぬうちに魔法を使えてしまうというのは本当に危険だ。」
いつになく、ダルクさんが神妙な顔をしてますね。話の内容的には赤ん坊が念じただけで打てる銃をもっているようなものでしょうか?そんなこと種族ってだけで起こり得るのか。
「それはダークエルフの男子だけで起こることなのですか?」
「人間なんて実践的な魔法を使えるようなるのに10年はかかる。エルフですら魔法を使えるのは子供の頃からだと言われている。それも基本的な魔法に限るが。」
超強強な魔法を赤ん坊の頃から使えるが故に死亡事故が半端ないんですね。セーフティな感じでないのが恐ろしい。あのゴチャゴチャ詠唱してるのってカッコつけてるだけじゃなかったのか。
「逆にエルフはある程度分別がつく頃に魔法を使用できるようになるのでこんなことが起きない。このことからエルフには祝福が十分にあるとされている。」
「逆にダークエルフは祝福が足りないと。強い魔法を覚えるのに暴走するので祝福が足りないって事ですか?交換してきたレベルの高いポケモンが混乱して自爆しちゃう感じですね。」
「というわけだトウカよ。ワレの希少性がわかっただろう。」
なにか、押し切られそうになってますが、ここで引いたら行けません。最後の抵抗です。
「そうですね、希少なのは生まれた時の環境や宿命が関わってくるのですね。私の国でも生また時の環境はとても重要です。時代が違うだけでそこの一族でも大いに違います。例えば、上杉鷹山がそうです。彼の祖先は大きい領地がありましたが、時代とともに衰退、部下の数はそのままに20分の1程度の領地になります。多額の借金もあり、こんなの立て直せない!普通の人はそう思うでしょう。しかし、そこは上杉鷹山。若干15歳にして当主となった彼は最悪の現状を見るのではなく、建設的に持ち直せる未来を見ていました。荒れ果ててどうしようもない土地を改善し、知恵を絞りながら自分の国を立て直し、10年先に芽吹く花を植え見事に咲かせたのです。彼の見事な行いは後の世にも語り継がれました。このように彼は悲惨な現状に生まれたからすごいのではなく、そこから持ち直す努力をしたからすごいのです。生まれではなく生き方こそが素晴らしいのです。」
とすごくそれた話をしてなんとか終わらせたいな、ダメ?
「いや、今は生まれの話をしているのだろう?」
ロイさんからのツッコミが!・・・うん、しょうがないですね、
「わかりました。それでは希少性を加味して4000ドル私に配り直します。」
まったく、初手でこれならこれからが思いやられますね。それでも若干不服そうなダルクさん。
「では、気を取り直してダルクさん、ルーレットをどうぞ。」
「うむ・・・。1か。」
「おっ、ダルクさんもG県生まれですね。3500ドルどうぞ。」
「俺の誕生が語れなかっただと。」
「人生ゲームですからね。さて、ロイさんルーレットをどうぞ。いよいよ、人生ゲームスタートといってもいいでしょう」
「6だな。」
「おっ、進みますねー!それではこのマスは・・・。」
夜寝ていたら襲われた。異母から差し向けられた暗殺者を返り討ちにしたようだ。戦士としての箔がついた。
「えっ、誰ですか?この物騒なこと書いたのは。襲われて、それも異母からで返り討ちにしてしまって、箔がついたけど・・・これはマイナスマス!ロイさん1000ドル没収です。色々悲しすぎます。」
「これがマイナスマスになるのか。プラスになると思ったんだがな。」
ロイさんまで不服そうな顔をして。
「じゃあ、私の番ですね。・・・9だ。えっと、このマスは。」
昼寝ていたら、従兄弟に襲われる。叔父様からの命令だそうだ。戦士として箔がついた。
箔つきすぎでしょ。この人の人生。




