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02 出来損ない王子

 白い壁で囲まれた部屋、そこで1人の男が立っていた。

 黒い長い髪を結わえた、若い男だ。年齢は恐らく17歳程だろうか。

 容姿は端麗と言っても良いだろう。精悍と言うよりは柔和で温厚そうな顔付きだ――が、今は厳しい表情を浮かべている。

 その眼の前には木で出来た武骨で簡素な人形が、床に力なく横たわっていた。

 若い男は両手を人形に向けて突き出し、魔力を込め、


「――起きろ」


 そう声に出して命じる。

 しかし、人形は一瞬ピクリと身体を動かすが、またすぐに同じ体勢に戻ってしまう。

 若い男はそれを見て、大きく肩を落とした。


「ダメか。……やはり僕には才能がないのか?」


 男は溜息を吐くと、人形を其の儘に、部屋を出た。





 男は部屋と同じく綺麗に磨かれた汚れ一つない白の石で造られた廊下をカツカツと音を立てて歩く。

 廊下の向こうからやって来たメイド達が男の姿を見て即座に廊下の端に寄り、頭を下げた。

 その後ろで不格好な木の人形が2体、カクカクと動き同じ様に頭を下げる。


「ご苦労様」


 男は労いを掛けながらメイド達の横を通り抜けた。

 横切り、通り過ぎると、頭を下げたメイドが隣のメイドに呟く。


「あれが”出来損ない”の第2王子様? 外見だけは格好良いわね」

「しっ、聞こえるわよ」


 体勢を戻したメイド達が人形を連れて早足で去っていくのを、男は足を止めて見送った。


「……聞こえてるっての」


 だが、そう呟くだけで男はメイド達に直接何かを言う事はない。

 怒る事は疲れるだけだ。

 そして彼女等の言葉は真実でもある。

 彼女等の嘲笑は、甘んじて受けなければならない。

 そう男は思っていた。


『――せ』

「ぐっ!!」


 突如、雑音混じりの声と頭痛が男を襲い、その痛みで廊下に(うずくま)ってしまう。

 幼い頃から聞こえてきた声と声と同時に襲い掛かって来た頭痛。

 何を言っているのか明確に聞こえないが、医者に診せても原因不明としか言われなかった持病の様なものだ。

 暫くすると治まるので、男は放置している。


「……行くか」


 頭痛が治まった男は歩き出す。

 目的地はこの国において最も重要な場所。玉座の間だ。

 玉座の間の前に着いた男は大きく溜息を吐き、姿勢を正すと扉を開け、中に入る。

 そこには既に、王とその息子達が――男の家族達が揃っていた。

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