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【祝5万PV】破滅のアダムとイヴ 〜魔法使いと記憶喪失とヒーローと〜  作者: イソザキ・アラタ
承 『記憶喪失の討伐者』

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第57話 最終決戦12「ルドラの門」

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 人間態の奴に対して、俺は素手で挑む。

 素手と言っても、雷を伴う攻撃が主だが。奴が放り出す剣を避けつつ、本体に雷をまとった拳を当てる。


 奴に普通の攻撃は効かない、しかし雷をまとった……トールの力を使った攻撃は効く。


 奴に殴られても、その場で耐えて、反撃する。油断して少しでも隙を見せたら、それこそ死ぬ。トールの力を過信しないで、油断しないで戦う。


 奴は俺から距離を置き、空高く飛んだ。

 俺も逃がさないように、すぐさま追いかける。


 空を飛ぶ者同士の空中戦が始まった。奴は紫色に発光する透明な翼で飛びながら、小さな刃を俺に向けて発射する。俺は翼などないが、トールの力で飛びつつ、その小さな刃を避けながら奴に直接攻撃を当てる。


 場所は雲の上、雨など関係なしに戦い続ける。


 お互いに攻撃し、お互いに攻撃を防ぐ。お互いにトールの力を持ち、お互いに空を飛ぶ。このまま戦い続ければ、先に力が尽きた方が敗者になる。人間を捨てていた奴に勝てるわけがないが、俺には奴にない要素を持っている。


 それは、連携だ。


「行け、ドラゴン!」


 俺の合図と共に、残った数体のドラゴンが一斉に飛んでいる奴の周りを取り囲み、火を浴びせる。ここは雲の上で、雨なんてない。水蒸気はあるかもしれないが、それでも炎の方が勝る。

普通の攻撃は効かないが、炎の攻撃は多少は効く。また炎により、視界を失うという効果もある。


 その内に俺はドラゴンの背中に乗ったヘイトリッドから、大量の剣を受け取った。これらはロックを始めとした、下に残った人たちから剣を借りた。


「畜生、どこに行きやがった! 被検体番号0818、お前は最初に殺すべきだった!」


 トドメだ。

 奴が視覚を奪われ騒いでいる間に、俺は奴の真上に移動していた。


 奴が見上げた頃には、もう遅い。

 両手をがっしりと組んで、脳天を割るように、または地面に叩きつけるように、奴の頭に振り下ろした。雷の力もそこに込めた。


 トールの本来の力も相まって、奴の身体は雲の上から地面へ強く叩きつけられた。落下の衝撃もあり、奴は完全に動けなくなっている。


 追撃だ。

 俺は大量の剣を持ったまま、奴の真上に飛び降りた。落下の衝撃が、奴の腹に直接加わる。


 これだけじゃない、確実に息の根を止める。

 大量の剣を地面に並べ、1本ずつ雷の力を刃に込める。その後、動けない奴の腹に向かって、剣を突き刺す。普通の剣は効かない、しかし雷の力が入った剣なら効く。


 奴の身体を切り裂いて中を覗いてみると、血もなく内臓も無かった。代わりに、無限に広がる真っ黒な世界があった。中には大量のモンスターや人間、それ以外の生物が存在する。


 そうだ、これで終わりじゃない。彼らを助けなければ。関係ないのに巻き込まれた人間たち。日常を人間に奪われたモンスターたち。その他、花を咲かす計画に巻き込まれた生物たち。


 他の剣は奴の腹に刺したままにしておく。これで黒い世界とこの世界を行き来できるようになった。俺は2本の剣を持って、奴の腹の中で広がる黒い世界に飛び込んだ。


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 真っ黒で何も無い世界に辿り着いた。

とは言っても、何かが違う。中にいる生物の色味が、前に来た時と変わっている。


 前に来た時は、全生物にしっかりと色がついていた。しかし今は、全生物から色味が失われている。代わりに真っ赤に塗られているのだ。怪我をして血だらけという訳ではないみたい、人間もモンスターも笑顔で暮らしているから。


 さぁ、ここにいる生物全員をどうやって現世に運ぼうか。一体ずつ運ぶとなると、手間がかかる。それに、真っ赤に染まった生物を外に持ち出しても、外で動くのか。


 しまった、何も分からない。

 この場に奴がいれば聞き出せたはずだが、奴の身体から入った世界に奴がいるほど奇妙なことはない。ロックかヘイトリッドなら何か分かるか?ヘイトリッドなら、体感では百年くらい黒い世界に滞在していたのだから、方法の一つや二つは分かっていそうな気もする。


「分かるよ、僕なら」


 いつの間にか、真横にヘイトリッドが立っていた。彼も奴の身体の中に入ってここに来たとのこと。


「僕が何のために、皆を誘ってとか言ったか分かる? 帝王に従ったフリをしたのさ、体感では五十年くらいかけて。彼も孤独だったから、話に話したさ。外に出す方法も聞き出せた」


 奴はヘイトリッドに、全生物を外に出す方法を話していたらしい。それにしても奴も孤独を感じることがあるのか。一人でもこの世に生き残ればいいという思想を持っていたから、てっきり孤独など感じない生物かと思っていた。


「始めよう。彼は全生物を現世に戻す作業を『ルドラの門を開ける』と呼称していた。僕らで門を開けよう」


 アムスカリスの花計画に、ルドラの門。

 どれもこれも聞いたことがない単語ばかりだ。まぁ、いい。俺とヘイトリッドの2人で門を開けられるのなら、喜んでやらせてもらおう。


「歩こう。真っ黒の世界は有限だ。君の飛行能力を駆使すれば、”管理人の世界”に行くことができる」


 彼と共に、丁寧に歩数を数えながら進む。ヘイトリッドが元から立っていたところから、前に十三歩。左を向いて三十八歩。右を向いて八十八歩。そこから真上に飛ぶと、さっきまで歩いていた床とは違った床に到着する。

 天井はなかったのに、元の床とは違う高さの別の床はある。不思議な空間だ。


 そこから前に十四歩、右に五十六歩。更に左に四歩進んだところで、後ろを振り向く。


 目の前には、実験室のような薬品の並んだ部屋が広がっている。真っ黒の空間の中に、長方形の穴があいていて、そこから実験室のような部屋に行けるようになっている。ここが管理人の世界ってやつか。


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