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第19話 肉の塊

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 入り口……と言うが、透明なガラスが2枚貼られているだけだ。手をかざすと自動で開いた。不思議な扉だ、いや扉ではないのかもしれないが。これは窓なのだろうか、窓にしては人間と同じくらいの縦に細長いガラスが貼られている。この建物は不思議だ。


 本格的に中に入ると、妙に明るい。不思議に思いながらも、上の階から音がするため上の階に向かうことにした。


「キャァアアア!!」


 ガタッ……


「誰か助けてくれ!!」


 ブシュッッッ……


「こっちに来るな!」


 ドサドサ……


 上から音はこれだったのか。俺はこの惨状を目の当たりにしてしまった。ナイフを持つ男が、周りの人間をバッサバッサと斬り倒している。女性だろうと関係ない、老人だろうと関係ない。そこにいた全ての人間に向かってナイフを突き刺している。死に至る者もいれば、生き延びてしまった不幸者もいる。


 先程から”人間”と言っているが、服装が俺たちの想像している物とはかけ離れている。今までに見たことがない服装のため説明が難しい。その上、机も椅子も何もかも見たことがない。貴族の方々が使用されている物というなら話は別だが、それとはまた違う。


 鉄でできた机と椅子、紙には読めない文字が大量に書かれており、見たこともない文字と見たこともない服と見たこともない空間に俺は包まれている。


「あぁ……やっちまった」


 目の前のナイフを持った男はそう声を発した。俺の姿は見えていないようで、そのままどこかに去っていった。

 周りは人間であった”肉の塊”が並んでいた。目を開けたまま、ナイフを持った男を睨むように死んでいった様がその顔から伺える。大事に子供と写る絵を握る者もいた。絵にしては相当写実的だが、そこは今気にするべきではない。


 また独りになってしまった。男の人がどこに行ったのかも気になり、俺はその人が行ったであろう部屋に行くことにした。その部屋の扉もまた見たこともない形をしていたが、既に開いていたため特に何もすることはない。


 あの男のものだろう、床には血塗られた靴の跡がくっきりと残っている。この先には間違いなくあの男がいるに違いない。


 この部屋はややこしい。右にも左にも前にも扉がある。足跡も3方向に伸びており、扉を開けないことにはどこに行ったかなど判断できない。

 右の扉を押してみるも開かない。引いてみるも開かない。よく分からないが、そのまま蹴破ってみても何もない。真っ白な空間がそこには広がっていた。左の扉も同じように蹴破ってみたが、何もない。


 残るは、真ん中の扉。これもまた蹴破ろうとしたが、扉が自ら開いた。


 中にいたのはあの男、血塗られた顔面を俺の顔の前に持ってきてこう言い放った。


「お前は永遠に後悔する」


「いや、後悔などしない」


「お前が求めた快楽は得ているか?」


「感情は抑えろ」


「そして……」


「貴様は……んだ」


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「こっちに来るな……!」

「貴様、よくも!」

「その剣を降ろせ……」


 パッと目を覚ますと、いつの間にか見知らぬ建物の中にいた。周りの人々は皆俺を見ており、恐れる者もいれば怒りを込めた顔をする者もいる。

 剣を見るとモンスターの血ではなさそうな血が大量にこびり付いている。何をしたかなんて覚えてはいないが、予想すること自体は容易い。


 目の前の男を人質に取るように、剣を首の近くに持っていき……こう言った。


「城まで案内しろ、しないならこの男は死ぬ」


 人質に取った男は怯えているが、その前に別の男性が叫んだ。


「ここは既に城の中だ! お前は何の目的があってここに来た?」


 ここは城の中だったのか。確かに内装が豪華で、皆の服装も異様に豪華であった。一般庶民では着ることはないくらい派手な服を着ている人間が多い。そもそも意識がないうちにどうやって城に来たのだろう。


 そんなことはどうだっていい。


「ではこの城の中……いやレインマークの中で1番偉い人をここに呼べ。さもなければ……」と言いながら、剣を人質に突き刺すような素振りを見せる。


 皆慌てながらどこかへ行った。正直にお偉いさんを呼びに行ったのか、はたまた逃げたのか。それならば、人質をもう少し増やせばよかった。幸い顔はまだ見られていない。


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「グラ! 無事か……?」

 少し経つと、この中では最も服装が派手な人物が駆け込んできた。これが俺の呼んだお偉いさんなのだろうか。また……”グラ”というのは俺が人質に取っているこの男のことか。


「グラを返してくれ、用件はなんでも聞こう」

どうやらグラは彼の息子らしい。そこまで懇願されれば……返さないわけにもいかない。が、その前に用件を話すこととする。


「お前は何故ストラート村を襲った? その理由を言え」と単刀直入に話す。

 彼は口を閉じたまま何も答えない。代わりに側近の者と思われる人物が口を開いた。


「モンスター特別対策法に違反した人物をその村で発見しました。なので……死刑として”とある方”が襲わせました」とのこと。

 冷酷な目を持つ側近は続けて言う。


「貴方は知らないと思われますが、襲わせたのはレインマークの人間ではありません。その上に立つ国……ライムートの人間です」


 国か。都市が存在するのなら国も存在するよな。

 またモンスター特別対策法など初めて耳にした単語だ。記憶喪失ということもあるだろうが、キミカさんもシアンさんも……ガイアさんもその単語を口にしたことは無い。


「貴様……奴らに何故そのことを!」

 このレインマーク内では最も偉いと思われる人物が、その側近に対して声を荒らげた。


「ドール様、落ち着いてください」

 側近は彼にそう告げた。そう言われたところで落ち着くはずもなく、彼は騒いでいる。が、側近はさらに続けて話す。


「ドール様の息子を人質に取っているところ恐縮ですが、人質を取り替えてみませんか。例えば……私と交換はどうでしょう?」


 その側近は謎の提案を俺にしてきた。このグラという人間を離す代わりに、側近を人質にする……とのこと。偶然ドールという者の息子を人質に取っているわけだから、極力交換は望まない。しかし、この側近の行動も興味深い。武器も俺の方が持っている。


「いいだろう、こっちに来い」

 俺はこう言うや否や左手でグラを押し出した。側近は言葉通りに俺の元に歩いてきた。その側近と目があった気もしたが、気の所為だろうか。


 ドゴオオオンンッッッ!!

 

 爆発音が部屋中に鳴り響いた。大きな部屋でも関係ないと言わんばかりの大きな音だ。灰色の煙がそこら中から吹き出てくる。これもまた大量で、前が見えなくなるくらいのものであった。


「この大部屋を出て真っ直ぐ、手前から3つ目の階段を登る。4回登ると大モンスター対策室があるが、そこを----」

 爆発音と煙に乗じてここから避難しようとする側近は、俺に小さな声で耳打ちをした。


「何故ここから逃げようとする?」と俺が聞くも無視。今斬り倒してもよいが、情報を得るためには生かさなければならない。

 その言葉の通りに、俺は動いた。


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