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【祝5万PV】破滅のアダムとイヴ 〜魔法使いと記憶喪失とヒーローと〜  作者: 新進真
起 『Sランクと鑑定された少年は、国から追放されました。』
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第10話 決戦「時の石を手に入れろ」

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 遂にこの日がやってきた。王のパーティーの日……ではなく、王が身につけているとされる時の石を奪取する日。この日のために、すべてを捧げて、特訓を受けてきた。


 火炎魔法も……透明魔法も……剣術も創造魔法も、すべてを完璧にはなっていないが、それでもとにかく詰め込んだ。


 リーゼさんとトートさんが亡くなって……戦闘がまともに行うことができるのは、僕とクリムさんのみ。レッドさんは……今回は回収を主とするらしい。


「時の石さえ手に入れたら、戦闘を続行する必要はないわ。だから……私から離れないようにしてね……」と彼女は言う。


「エスト……今日で全てが終わるはず。もう少しの辛抱だ、そうでなくとも俺が終わらせる」


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「何度も言うけど、基本的には……私から離れないでね」と彼女は言うと、城の前……ではなく王都の中心部にワープした。


「何だアイツら……」

「光ったぞ……?」


 街の人々に見られてしまったようだ。当たり前だ、街のど真ん中にワープしている。なんてったって、噴水広場の噴水の前……。周りにはお洒落な格好をした貴族らしき人物が集まっている。この近辺であのパーティーを開催するらしい。


 僕はフードを深く被った。周りから見たら……間違いなく不審者だろう、そのくらい深く。

……噴水の前に突如現れている時点で、もう不審者か。


「貴様らか、危険な魔法を使うことは法令で禁止されている!」


 衛兵が……3人ほど来た。こんなにも早く来るはずがないと思っていたが、レッドさんは余裕そうに笑みを浮かべていた。


「今すぐ、その……腰に差しているナイフを渡せ。渡さなければ……盗賊としてしょ----」


 グサッ……


 衛兵の声が聞こえなくなった。それもそのはず、何故かレッドさんが……衛兵の1人をナイフで刺した。いや、刺し殺した……。

 衛兵からは……血が噴き出している。顔色も白くなっていく。本当に、”血の気が引いて”いく。


 ぎゃぁぁぁ……!

 うわぁぁぁあ!


 人々の悲鳴が、街中に響き渡る。


「貴様……よくも……」


 また別の衛兵がこちらに剣を向けてきた。

が、もう遅かった。レッドさんがその衛兵の背後に回り、後ろからグサリ。その衛兵からも……”黒”が噴き出している。


 僕の足はすくんでいて……動かない。


「何で……殺すんですか? 今のは……殺さなくても……」と彼女に対して必死に訴えかけるが、無視される。彼に至っては何もせず、訴えかける僕を見つめているだけである。

 何故、衛兵を殺す必要があるのか。


 グチャッ……と、ナイフを衛兵の身体から抜いた音がした。


「レッド……お前、何をしている?」

彼はやっと口を開き、彼女に対して抗議した。が、彼女の返答は予想外なものだった。


「ほら、こうしたら衛兵が集まってくるでしょ」と。もちろん、衛兵が集まってくる。3人だった衛兵も2人減ったが……逆に今は10人ほどいる。が、人の死を悲しむ様子もなく、むしろ殺害を楽しんでいるようにも見える。


「さては、前に我々の仲間を殺したヤツらだ……ここで殺るぞ」


 前に? 前に人を殺した記憶はない。僕も……レッドさんも、クリムさんも、トートさんも、リーゼさんも。

 今は……僕ではないが、ある。


「かかれ!」


 ここにいる衛兵が全員、僕らに向かって走ってきた。剣を持ったままだ。僕らはこのままでは殺されてしまう。しかし、僕の手と足は未だに動かない。無抵抗のまま殺されてしまう……!


「やるしかないか……!」とクリムさんが叫んだが、レッドさんもその言葉を遮るように声を張り上げた。


「……私の身体に触れて! ワープするから!」


 シュッ……


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「レッド……お前、何故警備の人間を殺した?」

「普通の人間は殺さない……そういう話だろ?」

 ワープを使って……現在は、森にいる。

 衛兵は、ここにはいない。が、それどころの話ではない。レッドさんが、衛兵を呼ぶために人を殺した。


「何故って……衛兵を引き付けるためには、大きなことしないといけないでしょ?何で分からないの?」と彼女は自分なりの論を展開するが、僕には一切理解できない。


「そういう話ではない! 人を殺すのは……間違っている……はずだ。それに……え----」と彼は訴えかけるこの行為を途中で止めた。


 何故かレッドさんの口角が上がっていた。逆にクリムさんは、まるで化け物でも見たかのように怯えていた。


「……とにかく、ワープで行くよ。城の入り口まで……」と彼女は僕らにそう告げた。


 もうこれ以上、考えるのは止めよう。頭もぼんやりする。僕らはまた、レッドさんの身体に触れた。


 シュッ……


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「誰だ?」

「その手に持っている剣を、地面に置け!」


 どうやら……兵士たちの目の前にワープしてしまったようだ。


「貴様ら……広場で騒ぎを起こした奴らだな?」

 レッドさんの鎧には、返り血がビッシリ付いている。銀色だった鎧も、黒く染まっている。バレるな……という方が難しい。


 僕らの周りにいる兵士が全員、剣を構えた。その瞳には、殺意しか映っていない。


「俺たちもやるしかないようだな」と言い、クリムさんも剣を構えた。


「今は……私から離れていいから。また後で会おうね」と、レッドさんも……小さなナイフを手に持った。


 これは……やるしかないみたいだ。


 チャリン……


 僕も剣を構えつつ、大きな深呼吸をした。

 長い間、心に溜まっていた悪い空気を押し出すように、何度も何度も。頭はぼんやりするが、気分は最高だ。このまま人を斬り殺しても正当化出来そうな気もする。


 兵士が全員、僕らに向かってジリジリと距離を詰めてくる。剣を構えながら。


「ヤツらは我々の仲間を2人も殺した!気をつけ……」


 グチャリ……


 その兵士が言葉を言い終わる前に、レッドさんが背後からその兵士の首を切っていた。


「いつの間に……」とつい言葉を発してしまったが、僕の背後にも別の兵士がいた。


「死ねぇ!」


 キンッ……

 キリッ……


「危ねぇぞ……エスト!」

 クリムさんの大きな剣で、兵士が振り降ろした剣から防いでくれたみたいだ。


「ありがとうございます!」と言い、僕も応戦する。


 僕は今、平均的な大きさの剣を手に持っている。腰には、クリムさんから貰った小ぶりのナイフもある。


 兵士は……おおよそ10人ほどいる。1人……3人ずつ倒せばいい。だが、僕は人を殺した……倒したことはない。前回の神本の時も、トートさんが全て倒していた。


 僕にできっこない……なんて思っている暇なんてない。今やらなかったら、僕は次いつやるんだ?


「立ち尽くしている暇はないぞ! お前を守りきれる自信は俺にはない!」


 今、やるしかない。

 腰に差しているナイフを抜き、そのまま手に持った。心臓に刺すことは出来ない。だから殺さなくていい、動けないようにすれば……。


「あああぁぁぁ!!」

 僕は叫びながら、兵士の太腿に思いっきりナイフを刺した。


「うぐっ……」

「痛てぇ……痛てぇよ、てめぇ……」


 手応えもある、血も出ている。が、彼は足を引きずりながらも、僕の方に向かって歩いている。まるで死者を無理矢理蘇生したかのような……そんな歩き方だ。


「てめぇ、殺してや……」


 グブサッ……


 クリムさんの……あの太い剣が、兵士の腹に突き刺さっている。直視することが出来ない、そのくらい奥まで突き刺さっている。


「悪ぃな……人を殺すのは間違っている……」

「でも、殺らなきゃいけねぇ……」


 そうしていつの間にか、レッドさんの姿は見えなくなっていた。


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