王太子だなんて初耳なんですけど
侯爵令嬢、メルル・ホーキンスは王立学院にて本を読んでいた。
自分の座席にて机にうずたかく積み上げられた勉学書。
化学、生物学、薬学に文学、哲学等々とにかく種類を問わず大量だ。
「まーた本ばっかり読んでるのねメルル。少しは人付き合いとかしないの? これじゃ何のために学院に来てるのかわからないわね」
「勉強の為ですよ」
友人からの茶化しをメルルはすげなく流した。
こりゃだめだ、と去っていった友にメルルは軽くため息を吐く。
王立学院は人脈づくりの場とは誰が言い出したか……ここに在籍している貴族を主とした生徒たちは勉強を二の次にして各々思い思いに交流を深めていた。
メルルはそんな現状を憂いている数少ない一人である。
学院とは勉学の場、それが彼女の考えだ。
幼少期より知識を蓄えることに魅入られたメルルは人付き合いなどほっぽりだして勉強ばかりをしていた、そしてそのスタイルは学院に入ってからも変わらず。
学院内でも少し浮いた存在になるのは必然であった。
その果てに出来上がったのが友人はごく少数、他人がどういう家柄なのかもうろ覚えの少女だった。
「外の空気でも吸いに行くべきでしょうか」
少し気分転換でもしようかとメルルは考える。
彼女とて人付き合いの大切さはよくわかっているつもりだ。
ただ、どうにもそちらの方面には興味が湧かないし、なんとなく面倒だったのだ。
――――――――――――
「はぁ。学校とは勉学の場……しかしそれはあくまで理想の話、現実は人脈づくりと結婚相手を探す場になっている。この場合において不真面目なのは周りか、それとも私か、どちらなのでしょうか」
綺麗に刈り揃えられた芝の上に腰を下ろしてメルルは呟いた。
見る人によってははしたないと思われる光景だが彼女がいるのは滅多に人が来ない隠れ家的な場所、メルルは時折ここにやってきて涼しい風に当たりながら下らない思索にふけるのだ。
「おぉ! 今日はいるんだなメルル、調子はどうだ?」
「む」
そんなメルルに気安く声を掛けてきた一人の青年。
小柄でスレンダーなメルルと対照的に背が高く逞しい体つきの彼の名はドレイク。
以前彼女がこうして気分転換をしていると偶然見つかってしまい、それからちょくちょく会いに来るようになってしまったのだ。
メルルのすぐ隣に座り込むドレイク、メルルはそれを横目でじろりと睨むとさりげなく距離を空ける。
「相変わらずお堅いな。そう避けなくてもいいだろうに」
「前にも言いましたが婚約者がいますので……一応ですが。とにかくそういうことですのであまり寄ってこないでください」
「それを言われてはお手上げだな。とはいえ昔ならともかくこのご時世でそんな考え方は少しばかり古いんじゃないか?」
そう言ってドレイクは芝居がかった大仰な仕草でやれやれと両手を上げた。
ちっとも悪いと思っていない彼、しかしメルルはその様子に抗議することはない。
メルル自身が一応と断りを入れた通り、彼女と婚約者との仲は冷え切ったものだった。
あまりその手のことに興味がないメルルは女性が男性にベタベタしていくのは破廉恥だという風潮もあり、自分から積極的に関わらずに婚約者をほったらかしにして勉強ばかりしていた。
そして当の婚約者の方もリードすべき側でありながらメルルのことなどどうでもいいという態度を取ったのだ。
メルルはドレイクのことなど碌に知らない、以前に似たような絵姿を見たような気がする気がするぐらいの至極曖昧な認識だ。
だがドレイクはメルルのことをよく知っているようで、彼女の婚約が有名無実なことを理解したうえで義理を通そうとする彼女をからかっているのだ。
「いい加減弁えてくださらないと困ります」
「ほ~、まあそのうち弁えるつもりだから気長に待っててくれ」
「ふんっ」
「ハハハ! すまんすまん、別に悪ふざけしにきたわけではないんだ。前にメルルが言ってた新薬の話が気になってな、もう一度聞きたいんだ」
「……そういうことでしたら……構いませんが」
メルルにとってドレイクはいい友達だ、それ以上でもそれ以下でもない。
彼は理知的で柔軟で色々な意味で物分かりがいい。
メルルも自分の考え方を否定せずもっともらしく聞いてくれるドレイクとは話していてついつい楽しくなって話しすぎてしまうほど。
「今日も興味深い話が聞けて良かった。ではまた今度、メルル嬢」
「あまり何度も来られては困るのですが……ごきげんようドレイク様」
「つれないことを言ってくれる。また来るからな」
そう言って去っていったドレイクの後ろ姿をメルルは呆れた眼差しで見送った。
「まったくしょうがない人ですね」
今日の授業は終わっていて今は自由時間だ。
メルルとしてはまだここでのんびりしていてもいいがこういう時間を有意義に使うのもまた経験であると教師には教えられていた。
ならばその教えの通り、ここで無為に時間を潰さず読み残した本を読み切ってしまうべきだろうと彼女は立ち上がり学舎へと戻ろうと歩を進めた。
――――――――――――
ちょっと早足で進んでいたメルルは不意に立ち止まった。
妙に周囲が騒がしいのだ、しかも心なしかジロジロ見られているような気もしていた。
「はて……? これはどういうことでしょう」
首を傾げるメルル、今までの行動を振り返ってみるが特に注目を集めることをした覚えはなかった。
メルルは良くも悪くもひっそりとやってきたためこのような仕打ちを受ける心当たりが全くない。
「ホーキンスっ! ここにいたかっ!」
背後から自分を呼び止める男の声に気づきメルルは振り返る。
「あらアルフレッド様、何の御用でしょうか」
メルルを呼び止めたのはアルフレッドと呼ばれる青年。
整った顔立ちで王家の第二子という文字通りの王子様、女性陣からも黄色い声をよく浴びている彼は……メルルの婚約者だ。
「何の用だとっ!? どの口で言っているんだ君は!」
アルフレッドの怒声にメルルはびくりと肩を竦めた、周囲の視線も集まり何事かと人だかりが出来上がる。
メルルはこの感情的な王子のことがちょっと苦手だった。
「どの口とおっしゃいましても……私が何かしましたか……?」
「あくまで白を切るようだね……はぁ。ルイーズ、おいで」
アルフレッドがそう言うと人だかりの中から一人の少女がオドオドと出てきて彼の隣に収まった。
結構カワイイ顔つきだとメルルは思った。
だがそれだけ、メルルの記憶のリストにはルイーズという少女の名も顔もない、つまり彼女はあまり高い身分の娘ではないのだろう。
「ホーキンス、彼女の顔を見ても何も思い出さないのか? 何とか言ってみるといい」
「さぁ……別に」
みるみる顔を歪ませるアルフレッドとじろりと睨んでくるルイーズに何やら誤解が生じているとメルルは感じた。
しかしメルルは信条として相手の主張もしっかりと聞き入れることにしている、そうでなければ論理的に物事を進められないからだ。
少なくとも自分はルイーズ嬢については知らないし関わった記憶もない、それが間違いない以上あちらの話を聞けば何かしら矛盾点が出るはず、メルルはその考えを頼りにじっと口を噤む。
「ホーキンス、君はルイーズが大切にしていた形見のドレスを破いたね? 隠れて見ていたルイーズが涙ながらに語ってくれたよ」
「やってませんが?」
「それにルイーズを階段から突き落とそうともしたようだね。危うく彼女は大怪我をするところだ、家柄を盾に口止めをしたようだが僕がしつこく聞いたら話してくれたよ」
「あの、少しはこちらの話を」
「確かに僕は君の婚約者だ、君以外の女性と懇意にしていた僕にも非はあるかもしれない。だがルイーズ嬢に当たることはないだろうっ! なぜ直接僕に抗議せずにこんな陰湿な真似をしたんだっ!」
「えぇー……」
これだからメルルはアルフレッドのことが苦手だった。
もちろんメルルは彼の言う陰湿な真似は一切やっていない、そんなことをする暇があるなら本でも読んでいる性格である。
メルルとしてはほくそ笑みながら自分を観察してくるルイーズがアルフレッド相手に玉の輿を狙っているようにしか見えないのだが……生憎と内心の証明などできるはずもなく論理的でもないため指摘することができない。
メルルがやっていない証拠というのも彼女が度々一人きりでいる時間があったためそこを突かれれば証明しようがない、やったという証拠も勿論ないのだが残念ながらこの場において疑わしきは罰せずの原則は通用しそうにない。
「私はやってません。そこのルイーズ様のことも顔すら知りません」
「ハッ、それを僕に信じろと?」
「……信じてください、本当に私は何もやっていません」
真っすぐな眼差しでメルルはアルフレッドを見やった。
アルフレッドは鋭い目つきでメルルを睨んだ後、傍にいるルイーズの縋るような目を見てメルルに向き直る。
「無理だな、僕はルイーズの味方だ。君を信じることは出来ない」
「……」
憤懣遣る方無い面持ちのメルル、少しは頭を使って考えて欲しいものだがここでそれを言っても火に油を注ぐだけだと彼女はわかっていた。
メルルは考える。
自分がやったという証拠はない、公に罰せられることはないだろう……だがこれでメルル・ホーキンスという個人の人物評はどん底まで落ちる可能性は否定できない。
そしてそんなことになればそこから波及して様々な面で弊害が出る可能性がある。
人物的に相応しくないとして婚約の破棄、人間関係の孤立や爪弾きによる将来の影響、自分だけでなく家族にも迷惑がかかりかねない。
メルルはあまりにも理不尽な出来事に固い表情を浮かべ、やるせなさに拳を握りしめる。
「僕が伝えるべきことは以上だ、君との関係もじっくりと考え直させてもらう。しっかりと反――「なんだこのバカ騒ぎは。まったくもって下らない」」
アルフレッドがルイーズを伴って去ろうとしたその時、メルルにとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ドレイク……?」
「よう、さっきぶりだなメルル。調子はどうだ?」
「……さいあくです」
「だろうな」
声の主はさっきまでメルルが談笑していたドレイクだった。
彼はメルルの隣に立つと心底呆れた顔でアルフレッドを見つめていた。
対するアルフレッドは驚きに目を見開きこう言い放った。
「あっ、兄上っ!」
「へ?」
彼の言葉に反応してメルルの口から気の抜けたような声が漏れた。
隣のドレイクには聞かれていたのか彼はちらりとメルルに目線を寄こす。それが少し恥ずかしかったのかメルルは赤面しながら咳ばらいをして誤魔化した。
ドレイクがアルフレッドの兄などメルルには初耳である。
彼は自分の家柄については話さなかったし話したくなさそうだったからメルルは触れないようにしていたのだ。
道理で見覚えがあるはずだとメルルは内心で合点がいっていた、王族ともなればさすがに絵姿なりを見ているに決まっているからだ。
もっとも、忘れていては何の意味もないのだが。
「なぜ兄上が出てくるんです!? これは僕とホーキンス嬢との問題だっ!」
「お前がバカなことやってるからわざわざ出てきてやったんだろうが」
ドレイクはアルフレッドにツカツカ歩み寄るとその脳天に拳骨をお見舞いした。
「ごが!?」
「この愚弟が、お前は昔からどうしてそう考えが足りないんだ。少しは頭を使え」
これ見よがしにドレイクは額に指をトントンと当てる。
彼にとってアルフレッドは完全にダメな弟扱いのようだ。
「し、しかし……」
「お前は可愛い弟だ。だがそれとこれとは話が別、お前が王位継承権を与えられる上で一つ条件があったな? 言ってみろ」
「それは……学院を無事に卒業することですが」
「その通り、つまりこれでお前に継承権が与えられることはなくなった」
「えっ!? なぜですか!?」
「無事ってのは何事もなくって意味だ、こんなことをしでかす奴に継承権を与えるなんて危なっかしいだろうが。ったくこの点は親父殿に感謝だな、お前みたいなそそっかしくて考えが浅く思い込みの激しい奴に王は務まらんよ」
「そ、そんな……」
アルフレッドは愕然としながら膝をついた。
近くにいたメルルにも話は聞こえているが自分の与り知らぬ場所で物事がどんどん進んでいて彼女も困惑しっぱなしだ。
ドレイクはルイーズの耳元にも顔を寄せ、今度はメルルにも聞こえないような小声で彼女に告げる。
「俺の弟をたぶらかすとはいけないお嬢ちゃんだ。こいつの迂闊さを考えれば中々いい目の付け所だと褒めてやるがやり方がマズかったな。あんな取って付けたような理由じゃ馬鹿しか騙せんよ、次からは気を付けるんだな……次があればの話だが」
ルイーズは顔をサッと青くしてその場から逃げ出してしまった。
メルルは一連の流れを何とも言えぬ表情で見届ける、ドレイクが何を吹き込んだのかはわからないが穏便に済めばいいなと彼女は思っていた。
「よし、ひとまずこの場はこれで収まったな。さあメルル――おい、なぜ逃げる」
一仕事終えた様子のドレイクがメルルに一歩近づく、するとメルルは一歩下がって離れた。
訝し気な表情を浮かべたドレイクがもう一度と歩み寄るとやはりメルルは距離を取って彼を近寄らせないようにする。
「なんだ? どうした? なぜ距離を取るんだ? まるで意味が分からんぞ」
「王太子だなんて初耳なんですけど」
「そりゃあ言ってないし……じゃなくてだな、気づいてなかったのか? あんなに顔を合わせておいて? いや俺自身も何となくコイツ俺が誰なのかわかってないからあんなに邪険に扱ってるのかとも思っていたが……」
「うっ。しょっ、しょうがないじゃないですか、記憶になかったんですから。せめて私が読んだことのある歴史書にでも載っていれば気づけていたのに」
「俺がそういうのに載るのはもっと先の話だな。全く……本が恋人と揶揄されるだけはある」
「とにかく貴方と一緒にいたらめんど……畏れ多いので私はこれで失礼させていただきます! 助けてくださってありがとうございましたっ!」
メルルは食い気味にそう言って何食わぬ顔でスタスタと去っていった。
その背を唖然と見つめるドレイク、彼は追うべきかどうか迷ったがメルルに少し落ち着く時間を与えるべきだと考えやれやれとその場に留まった。
――――――――――――
数日後、メルルはいつもの隠れ場所で黄昏ていた。
あの日以来これといった騒ぎは起こらなかったもののメルルは他人からの視線が増えたように感じていた。
ただの自意識過剰なのかもしれないがどうであれ気が散るという点では変わらないためメルルは逃げるようにここに来る頻度が上がっていた。
「なんだか最近落ち着いて本を読めてない気がします」
趣味にも等しかった勉強が捗らないという悩みにメルルは重い表情だ。
そんな彼女の元に原因の一端となった人物が現れる。
「ようメルル」
「……」
「そう邪険にするな。王太子殿下の命令だぞ、返事をしてくれ」
「……もう、何なんですか」
性懲りもなく会いに来るドレイクにメルルは呆れかえっていた。
完全に根負けである、隣に座ってきたドレイクに彼女は目線を向ける。
「何というわけではないんだが。まずは改めて、すまなかったな。弟のこともそうだが俺も迂闊な真似をした、メルル嬢に迷惑をかけるつもりはなかったんだが」
目を伏せて言うドレイクにメルルは少し慌てる。
「あっ、いえっ。別に迷惑など、あの状況的に殿下には一切の非はありませんでした。そもそも誰も見てないからといって殿下は私になど謝ってはいけません」
「殿下とはなんだ殿下とは。前みたいに名前で呼べ」
せっかくメルルがフォローしたというのにこの言い草。
何だコイツ、と思わず口に出そうとするのをメルルは必死に抑えた。
「はぁ~……ドレイク様。はい、これでご満足ですか?」
「それでいい、やはりそう呼ばれるのがしっくりくる」
どっしりと腰を落ち着けたドレイク。
彼は上機嫌そうに笑みを浮かべると何気ない動作でメルルの髪を撫でようと手を伸ばすが
「ぁいてッ」
メルルがドレイクの手を叩いて落とした。
「いくらドレイク様でもやっていいことと悪いことがあります。私にはまだ一応婚約者がいるのですからこの様なことはやめてください」
「おいおい、あんなことをされたのにまだ義理を通すのか」
メルルとアルフレッドの婚約は未だに続いていた。
所詮は下らない諍い、あの場でドレイクが行ったことは白黒決着をつけるのではなくメルルとアルフレッド両者がこの件で追及されないように有耶無耶にすることだった。
そういう事情もあり、わざわざ事を荒立てては互いに損だろうという政治的判断によって今回の件はなかったことにされたのだ。
「これは義理ではなく礼儀というものです。本質がどうであれ婚約という形が続いているならば私はそれに応じた振舞いをする、それが道理だと考えています」
「立派な考えだ。まったくもってアイツにはもったいないな」
ケラケラと笑うドレイクを見てメルルはふとある懸念に思い当たる。
「……何と言うべきか、私が気にするべきことではないのでしょうが……王太子であるドレイク様にも婚約者がいるはずですよね? こんなところで私と会っていて大丈夫なのですか?」
「ん? あぁそんなことか。いないぞ」
「え、いないのですか」
あっけからんとした様子でドレイクが言ったことをメルルは意外そうな表情で受け止めた。
「俺は見ての通り素直で聞き分けの良い子なのでな。自分の伴侶は自分で決めると父君と母君に頼み込んで認めてもらったのさ、普段我が儘を言わない長男坊の数少ない頼みを断れなかったのだろうな」
「素直で聞き分けがいい……? いえ、そこは気にしないとして。ご自分で決めるということですが誰か気になるお方はいらっしゃるのですか?」
色々と言いたいことはあるものの不敬罪を避けることを優先させたメルルは話の流れを変えようとする。
彼女とて年頃の乙女、正直なところ他人の恋バナに関してはそこそこ興味があったりする。
メルルに尋ねられたドレイクは顎に少し手を当ててみたりちらりとメルルに視線を送るなどもったいぶった様子を見せた後、決心したように口を開く。
「実はいる」
「まあ!」
さっきまでドレイクに迫られ辟易していた様子が一変、今度はメルルがドレイクに迫る。
「そ、それで。どうなんですか? 上手くいっているのですか?」
「うぅむ……ちょくちょく会って話したりして現在進行形で頑張ってはいるのだがあまり手応えはないな」
「そう、ですか。それは残念ですね。ちなみにどのような方なのですか?」
ドレイクが上手くいっていないことを知りメルルは少し落胆した。
ただ彼女はこの話をやめるつもりはないようである。
「一言で言えば芯の通った人だな。賢いし俺が間違ったことをすると叩いて諫めたりもしてくる」
「叩くとは何というか……少し気の強い方のようですね」
「ハッハッハ、それぐらいがいいのさ。こちらとしては大歓迎だ」
「はぁ~、そこまで絶賛するなら尚更私なんかと会うべきではないと思うのですが……大丈夫なのですか? どうなっても知りませんよ?」
「フハハハハ! 安心しろ、幸か不幸かバレてはいないようだからな! ハハハ!」
やけにテンションが上がっているドレイクを見てこれがノロケか、と思うメルル。
兎にも角にもそれだけ心に決めた女性がいるなら友人として是非とも頑張って欲しいとメルルはドレイクを激励する。
「私はその恋が実ることを心の底から祈っておりますよ。だからその、偶に進捗を聞かせたりしてくださいね? 気になりますので」
「それは追々な。案ずるなメルル、着々と俺の計画は進んでいる。なにせ父も母も俺がどうしてもと頼めば大抵のことは聞いてくれるのでな」
「はぁ……? まあ頑張ってくださいね」
数年後、突然アルフレッドとの婚約が破棄され流れるままにドレイクとの婚約が結ばれたあげくそのまま電撃結婚を果たすことになったメルルは式中ずっとどうしてこうなったのかと首を傾げていたという。
読んで楽しんでいただければ幸いです
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